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第9回セカンドライフ横浜読書会KURIBOOKS『献灯使』
■2023年12月2日(土)10:10-12:00 晴れ
■参加者6名でした。
今回の読書会は、
日本人で最もノーベル文学賞に近い人物!と言われている
多和田葉子さんの作品を取り上げました。
2018年の米文学賞作品『献灯使』を読み深めていきます。
![](https://assets.st-note.com/img/1701927285297-0sE7S18L02.jpg?width=1200)
本書は震災文学と言われています。
著者は、東日本大震災後の日本人の言動を考察し、
他国に逃げない国民性に対しての違和感や、
被爆した福島県をバッシングをする世論に危機感を抱いたそうです。
震災後の鎖国化されたかのごとく振る舞う日本人の行動や環境問題に対して、
多和田葉子さんはどのように表現して、本書に想いを込めたのでしょうか。
読書会を通して考えてみたいと思います。
そして、『献灯使』の多和田葉子ワールドは
人間が自然に抗って欲望を叶えた先の世界を、ユーモアと皮肉を織り込み、構成されています。
そんな、風刺作品としても読める本書は、
海を渡り国境を越えて、たくさんの国々で翻訳され読み継がれるべき一冊なのだと思いました。
また、『献灯使』のもう一つの特徴として、
本文全般にわたって言葉遊びがふんだんに盛り込まれていることが挙げられます。
日本語(単語)とイマジネーションの掛け合わせの表現であるため、翻訳者泣かせと言われています。
ドイツ文学に深い造詣のある多和田葉子さんですが、
他国でどのように翻訳されたのでしょうか。興味があります。
先ずは皆さんの読後の感想から、、、
・抽象画を鑑賞しているような感覚になった。輪郭がはっきりしない作品だと感じる。
・現実に近い未来のディストピアを描いている。
・曖昧模糊とした未来への警告を感じる。
・状況説明がなく、ぼんやりとした世界観が印象的だ。
・死ねないことへの恐怖を感じる。
・言葉のテロリストだと思う。
・本の感想ではないが、ロバート・キャンベルとの対談が素晴らしかった。
次に印象に残った本文中の言葉遊びをピックアップします。
・ジョギング=駆け落
・冷蔵庫=南極の星
・健康診断=月の見立て
・ドイツの地名
(亜阿片=アーヘン、刃の叔母=ハノーバー、ぶれ麺=ブレーメン、露天風呂区=ローセンブルク)
・栗人具=クリーニング
・民なる=ターミナル
・オフラインの日=御婦裸淫の日
などなど
この物語は4世代にわたる家族の物語です。少し変わった名前で、破天荒な人生を歩む登場人物の紹介と皆さんの感想です。
【登場人物】
義郎(よしろう)
妻(鞠華・まりか)
娘(天南・あまな)
孫(飛藻・とも)
曾孫(無名・むめい)
【登場人物に関する感想】
・はつらつと生きる義郎に対して、病弱な無名が対照的に書かれている。
・飛藻の家出のエピソードが面白い。
・無名は献灯使に選ばれるくらいの真面目で良い子だと思う。
・表紙の絵は無名?それとも無名の母親?
・無名の歯のもろさが印象的だった。
ストーリーの感想にはいります。疑問に思ったことなどの答え合わせや印象に残ったシーンをシェアします。
・役所の未来像が面白い。
・「子供より年寄の方が健康」という設定は、現代にも通じる。
・犬貸し屋など、動物化するポストモダンが興味深い。
・洗濯機の行く末のシーンがシュールだ。
・暗闇の中の蝋燭のシーンなどは神話(ケルト神話)をモチーフにしているのでは?
・蛸のシーンが随所にちりばめられて興味深い。
・義郎視点から学校に話へと変わると、一気に空気感が変わってステージが切り替わる。
・夜那谷先生が物語に良い味をだしている。
・無名は飛藻の子供ではないかも知れないが、真実を知らなくても、それでよいのではないだろうか。
最後のまとめです。読書会前の感想とは違い、物語に深みが出ました。感想をシェアすることは再発見にもつながります。
・理性ではなく感性で読む本だと思った。
・ラップのように軽やかに、オブラートに包んで思想を語っている。
・ラストシーンが禁じ手を使っている。
・この物語の通奏低音として悲壮感を感じる。
以上、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
他の作品も読んでみたいと思った多和田葉子さんの作品でした。
■今月の皆さんへの質問です。
自己紹介の時に、すべての読書会の参加者の方へ聞こうと思っています。
【第一印象は当たる?】
・当たる(50%)、当たらない(30%)、当たるか当たらないか決めないと思っている(20%)
興味深かった回答として、
・頭で考えるとだめで直観力を働かせるのが大切
・極端に違う(全く当たらないか、的中するかどちらか)
・当たる、悪い印象の人は悪いところしか見えないし、良い印象の人は良いところしか見えなくなってしまうので気をつけている
・第一印象から良くなることはあるが、悪くなることはない
・第一印象は良い意味で裏切られる
人生は重ねるごとに深まります。
知的好奇心を解き放つ出会いの場として
ぜひ横浜読書会KURIBOOKSへ遊びに来てください。
【投稿者】KURI