彼女も猫語を話せる理由▶︎チャーリー
横浜読書会KURIBOOKSの映画祭の司会を担当しています チャーリー です。
「エッセイ」ってお好きですか?
小説のように長くはありませんが、短いが故に要素を絞り込み、読者に「あ、なるほど」とか、「そうなんだ」と強い印象や共感を呼び起こさないといけないので、エッセイというのは文章がうまくないと書けないと感じます。
一方で、エッセイはそもそも文筆業が本職じゃない人が書くことも多いと思います。きっと取り上げるテーマがその人の専門領域で、部外者である作家には無い視点を持てるからかと想像します。
さて、ピアニストの書いたエッセイはどうでしょう?
「ピアニストという蛮族がいる」中村紘子 中公文庫
昭和生まれの人であれば、クラシック音楽に興味がなくても中村紘子さんというピアニストはご存知じゃないでしょうか?
コーヒーやカレーのCMにも出演されていて、頻繁にテレビで姿を見ていました。
「ピアニストという蛮族がいる」は中村紘子さんと同じくピアノに取り憑かれた「蛮族」=ピアニストとして世界の歴史に残る一流ピアニストや、不遇に終わった日本初の女性ピアニストについて、雑誌連載したエッセイです。
毎回ちゃんと話の盛り上がりがあり、結末に向けてのまとめ方も素晴らしい。
ピアノ演奏も曲の起承転結をいかに表現するかという作業だと思いますが、それが文章の構成力にも反映されている感じがします。
ちなみに、中村紘子さんの夫は小説家の庄司薫さんです。
庄司薫さんは
「僕が猫語を話せるわけ」 庄司薫 中公文庫
というエッセイ本を出しています。
これは断然「犬派」だった庄司薫さんが、中村紘子さんの飼い猫を預かることになって始まった猫との暮らしを綴ったものです。
そして、その文庫本の解説を書いているのは中村紘子さんだったりします。
解説と言いつつも、中村紘子さんが猫の世話を庄司薫さんに頼んで演奏旅行に出て、帰国したら庄司薫さんと猫が暮らしている家にお嫁さんとして住むことになったという、おのろけのような話になっていますが、それはご愛嬌。
彼女と二人(一人と一匹)だった時は気の強かった猫が庄司薫さんと暮らすようになったら、彼の手練手管にかかって?懐柔されて、牙も爪も抜かれたように彼に甘えるようになり、彼女と彼のどちらが本来の飼い主なのかわからなくなってしまったという顛末を「作品解説」として少し笑えてくるような文章で書いています。
夫が作家なんだから、その奥さんが鍵盤だけでなく、筆捌きも上手いのは納得がいく感じでしょうか?
それとも、文才がある者同士だから魅きつけあった?この世の中には「エッセイスト」という蛮族もいるということでしょうか。
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【投稿者】チャーリー