薬になる小説▶Yuning
コンニチハ、最近英会話にはまっているYuningです。
今さら英語を勉強したいというよりも、語学の勉強が好きな人というのは明るく前向きなタイプが多いので、憑きものがやっと落ちたものの、まだまだ禁断症状中の自分にとってはちょうどよいエネルギーの転換先となっているようです。ふっふっふ…。
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さて、当方アラフォーにして、いよいよ30代もあと3ヶ月を残すところとなりました。今日ご紹介する本は、そんな人生の曲がり角に沁みる(かもしれない)中島たい子さんの『漢方小説』。第28回すばる文学賞受賞作。
冒頭に、こんな一節があります。
「一年に四季があるように、人生にも季節がある。
季節の変わり目に体調を崩しやすいことも同じだ。
新しい季節に適応するのは、体に負担のかかることなのである。」
……あ、これちょうど今読みたかった本だ、と思いました。
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主人公の川波みのりは、31歳女性、独身、職業は脚本家。
元カレの結婚報告にショックを受けてから体調が思わしくなく、胃のあたりが激しく脈打って、食べることも眠ることもできない。ついには全身の痙攣におそわれて救急搬送されるが、どんなに検査しても異常は見つからない。病院を4軒ハシゴしたが結果は同じで、こりゃ次に行ったら精神科を勧められるな…と途方に暮れていた時、小さな漢方(中医学)のクリニックの門を叩くことになった。
仙人のような白髯の老人を予想していたみのりは、意外にも若い医師に拍子抜けするが、舌を見せて脈を取ったあと、腹診しながら「ドキドキするのはここでしょ?」と動悸の震源地を一発で言い当てられて驚く。それが、彼女の東洋医学との出会いであった。
処方された漢方薬もすぐに効き目を現すが、はっきりとした説明がないことに不安を覚えたみのりは、「だから、私は何という病名なんですか?」と若先生に詰め寄る。しかし、彼は平然と「ない」と答え、「…というか、いらない」と付け加えた。「強いてつけるとしたら、『色々なところが弱い』というあなただけの病気です」。
――そうか、これは「わたしだけの病気」なのか。
すべてのことに、白黒はっきりつける必要はないんだ――。
その言葉が妙に腹落ちしたみのりは、これからの人生のことを思い、自分はどうしたいのだろうとじっくり考え、自分は「変化することを恐れない自分になりたい」のだという答えに辿り着く。
その頃には、あれだけ悩まされていた動悸と痙攣の症状もすっかり治まり、ギクシャクしていた周囲の人間関係も落ち着き、ボツにされた仕事にももう一度取り組んでみようという気力が湧いてくる。
そして最後の診察日、若先生は「いいですね。とてもいい脈です」と今までで一番の笑顔を見せてくれたのだった。
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どうですか、なかなか「薬になる小説」でしょう?(笑)
こういう本にふらりと出会えるとうれしいですね。
ところで、読んでいてドキリとする箇所がありました。「中医学では五臓に七情を振り分け、各臓器と各感情は互いに密接に影響し合う」「よって、過度の情緒反応は五臓を傷め、病因の一つとなる」そうなのですが、「肝」は「怒」を担当するらしいのです。言うことを聞かないキッズらに対して日々怒鳴りまくり、そのストレス解消にとついお酒を飲んでしまう身としては、背筋がひやりとする記述でした。
みなさまも、どうかご自愛なされますよう。
気分転換にはぜひ読書と読書会を♪
【投稿者】Yuning
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