お好み焼きと,恋心
大阪出身の柴犬好きです。大阪といえば,お好み焼き。
お好み焼きは,冬の食べ物である。
底冷えのする夜,のれんをくぐり鉄板のあるテーブルに着く。
豚たま,イカたま,牡蠣たま。じゅうじゅう焼いて湯気の立つ熱々をてこで口に運ぶ。焼いてくれるのが,慕わしい女性だったら。。
美味しい大阪の食べ物が次々に現れ,妙齢のおっちゃんは,おいしいもんを味わいながら,久しく忘れていた恋心を覚える。
1. 田辺聖子著『春情蛸の足』
本著は,お好み焼き,関東だき(おでん),てっちり。きつねうどん,すき焼き,白みそのお雑煮が湯気の向こうであなたを待っている。甘いロマンスばかりでなく,ホンネを告げようとする前に行き違ったり,人は届かない想いを抱えて生きていくんやなぁ。。という寂寥感も少し。
2. 文学とおちょくり
田辺氏は,「文学の役割はおちょくること。現実を生きていく抜け道。この辛い人生,おちょくらいでいられようか。起きてしまった日々の失敗をネタにして,笑いのお福分けを。」と述べています。
3. こんな風に読みました
武骨で「恋心なんか知りまへん。」というおっちゃん達が実はそっと慕い,大事に想う人がいてる。何かの隙にそれが仕草にこぼれ出る。そのギャップは,よく見てる女性にとって可愛げになって映る。武骨なのに可憐,という似合わなさに,読み手は思わず頬がゆるむ。
田辺氏のおちょくりは,こういうシーンにあるようです。美味しいもんと一緒に味わいつつ,だましだまし,辛口の人生をもたしていきまひょ。と述べているのかもしれません。
【投稿者】柴犬好き