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CES 2021レポート・リレー - 1日目

2016年から2020まで、毎年年明けにラスベガスに小額のお年玉を贈るのが恒例でしたが、今年は残念ながらその必要もなくなりました。2021年は完全オンラインでの開催となったCESに6年目の参加となります。

まずは今年のCESに関する公式Factsをいくつか;
・開催期間:1/11-14の4日間
・展示社数:1800+
・カンフェレンス数:100+

非公式だけどオンラインになったことで見れてしまう実数がこちら;
・参加者数:69,055(多分、公開OKになっている人数)
・上位の国別出展数:US (567), 韓国 (341), 中国 (202), フランス (135), 台湾 (130), オランダ (84), 日本 (77), カナダ (73), イタリア (57), イスラエル (51)

国別の出展数については昨年の数字があるわけではないものの、印象的には韓国が増えて中国が減った気がします。フランスも、もっとすごい数があったような。あと日本の出展は大企業が減ってスタートアップや中小企業の割合が増えた気がします。自動車系が軒並み出展を控えたことが大きそうですが、自動車業界はやっぱりモーターショー的に「五感で感じる」ような考え方が根強いのでしょうか。

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さて内容について。CESを見て回る際には、その情報量の多さもあって事前に想定した「視点」が特に重要になるのですが、今年自分に課した視点は、各国各業界での2020年のパンデミックへの対応や、ワクチン普及後を見据えた「ニューノーマル」をグローバルリーダーがどうみているのかということです。これまでは割と実際の展示物を見て触って体感することを重視するタイプだったのですが、オンラインと言うことで。

ということで初日に見たコマのいくつかに多少のコメントをつけて、簡単にご紹介したいと思います。

Verizon Keynote

Speaker: Hans Vestberg (Chairman and CEO, Verizon)
当然の5G押しです。「高速大容量」「低遅延」「多数同時接続」の活用方法としてまず紹介されたのはエンタメ分野、その中でもスポーツです。多視点同時視聴や試合中のリアルタイムデータのAR表示など、NFLとの提携により実装中で、今年のスーパーボウル(2月7日)にもNFLアプリ経由で見られる体験もあるとのこと。次に教育。アポロ11号をその場にリアルに表示させることにより、より没入感の高い教育が可能に。その他ドローンを活用したスマートシティやデリバリー網の構築なども、時間を割いて説明されました。これまでビジョンとしてのみ描かれていた5Gの可能性が、2021年にはサービスレベルで実装されます。個人的にも、まずはスーパーボウルからひとつひとつ体験していきたいと思います。

A Biden Administration's Approach to Technology and Innovation

Speaker: Brian Deese (National Economic Council)
期待値としては今後のアメリカのテック業界後押しの戦略(特に、テック系に多いリベラル層の支援する民主党ということもあり)について聞けるのかなと思っていたのですが、その点について具体的な話があったわけではありませんでした。ただ出ていた話としては至って真っ当で、経済の回復を重視すること、そのためまず重視するのが配送ルートとサプライチェーンの確保、そして教育や医療の安定稼働。そしてそれらをより多くの人に提供するためのデジタル・ディバイドの問題解決の方針などをあげていました。またバイデン新大統領が掲げていたBuild Back Betterのスローガンの話から、経済格差の広がりを起こす経済指標としてのGDPへの疑問も投げかけられていました。トランプ前大統領により脱退することになったパリ協定への復帰も、意向を示していました。

General Motors Keynote

Speaker: Mary Barra (Chairman and CEO, General Motors)
GMは、いくつかの提携を通した試みを発表しました。LGと提携し開発したEVにより、これまでよりも電池容量が60%向上し、充電コストも40%下げることができたとしています。またUltlifyと言うユーザー向けプラットフォームを提供し、(Teslaとも同様に)アプリ経由で車の機能をアップデートする形のビジネスを展開していくそうです。車のデザインや個人用ドローンについては割愛させていただき、最後に紹介されたのがデリバリー車でした。倉庫内作業などにも対応した短距離型の車両から、それらを格納するEV600と言うヴァンまで。EV600はFedexに採用され、運送効率を25%あげたとのこと。さらに自動運転車の開発でCruiseと組み、Walmartとはフードデリバリーを目的に提携しています。さまざまな企業との連携を通して事業領域を広げる様子からは、少し前の「大企業間の領域侵食」的な流れから、「大企業のモジュール化」に流れが変わっているのかなと感じます。

The Classroom of the Future

Speaker: Dan Avida (Engageli), Sharan Chandradath Singh (Minerva Project)
こちらは対談形式のセッションでしたが、興味があったのはミネルヴァ一本でした。ミネルヴァ大学は、世界中の様々な業界のリーダー企業を旅して周り、企業と一緒に実際の社会の課題を解くことで学ぶ、世界のエリートが今最も入学を希望しているとされている大学ですが、そんなリアルな接点が非常に重視されるであろう教育がコロナ渦においてどのように運営されていたのかが興味のあったポイントでした。ミネルヴァはもともと独自のオンラインプラットフォーム上で授業を行っていますが、面白かったのは彼らから”Online Teachingの課題はOnlineでなくTeaching”、すなわち多くの高等教育の教師が、教えるプロではなく優秀なリサーチャーであったはずという中で、ミネルヴァの課題解決のアプローチがテックが主ではなく教え方そのものである(そしてその提供手段としてテックを活用する)というところの明確な意思でした。教育のコンテンツがあった上で、それを継続的に行うことの後押しのためにインストラクター(Teacherという表現は使われていませんでした)は注力するという役割分担を明確化することで、学生のエンゲージメントをはかったとのことです。環境全体で学生の学びを後押しする、「ソーシャルな体験としての教育」の本質をついた考え方だなと感じます。なお、コロナ収束後の教育におけるオンライン部分は一部しか残らないはずであるという考えでした。

Future Reimagined

Speaker: Michael Miebach (CEO, Mastercard), Julie Sweet (CEO, Accenture)
モデレーターが毎回アクセンチュアCEOのJulieから話を振ることもあって、非常にマクロな視点、企業経営の視点で話が進んでいったセッションでした。話されていた趣旨は企業の経営判断においてリーダーシップが問われた一年で、経営者の力量次第でデジタル格差が大きく開いた一年だったということ、今後はデータの活用がより加速することによって需要予測やサプライチェーンの予測などがより高度に行われていくということでした。何かでBCGも同じようなことを言っているのをみた気がするので、戦略コンサル業界の中で定型文として言われている論調のようなものなのでしょうか。さらにここから12-18ヶ月は経営者にとって勝負の年であるとのこと(まあこれはアクセンチュアとしてのセールストークでもあるでしょう)。

なおECはアメリカの購買行動全体のうち13%→20%に増え、その多くはクライシス・ニーズだったが2/3は収束後も残るであろうとのことでした。本当は、資本主義の限界論やお金の未来などのテーマも出てきている中で、こっちの方で掘り下げて欲しかった気持ちもあります。

取り急ぎ文字量的にも本日のご紹介は以上とできればと思います。次回は、GNUSにおけるOpen Innovationのプロでもある長田から、また別の視点からのCESをご紹介をさせていただけると思うので、お楽しみに!

ここで宣伝です。

1/26(火)のお昼時間帯に、CESに関するウェビナーを実施します!ここでは書ききれなかったCESの各セッションのご紹介や、全体を踏まえての掘り下げなど、ウェビナーでお話しさせていただく予定です。

スピーカーはわたくし栗林で、これまでクライアント企業に対し事前準備のお手伝い、現地での帯同、事後のレポートや事業開発の支援などを行わせていただいております。無料ですので、よければ覗いてみていただけると嬉しいです。

また、GNUSへのお問い合わせもお待ちしております。ソフトウェア起点のコンサルティング&アジャイル開発のご要望についてはお気軽にお問い合わせください。

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