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伊勢金比羅参宮日記(19) 延暦寺・三井寺・石山寺
3月24日(56日目) 八瀬より叡山延暦寺経て大津三井寺へ
天気吉、少々曇る。今日は出発、比叡山越を心掛ける。
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下加茂から八瀬の里へ向かう。そこから比叡山の麓、八瀬の里に3軒ほど茶屋がある。ここでは兎も角も食事をして、案内を頼むこと。山中では道を聞ける人もなく、また飲食もない。また、わらじを用意しておくこと。
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叡山(延暦寺)は甚だ大廃しており衰いている。しかしながら大伽藍である。金の双林塔(相輪橖)がある。
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伝教大師の中門を過ぎて、山王権現(日吉大社)に至る。34~35丁の急な上り坂である。山王に老猿あり。そこから坂本に出て唐崎に至る。古松が湖水に臨み妙なり。良い茶屋あり。
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そこから三井寺に至り、大津に宿泊する。三井寺の鐘(三井の晩鐘)は奇妙なり。この辺りの湖魚は妙なり。値段をよく聞いて食べること。
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3月26日(57日目) 大津石山寺・瀬田の唐橋
5つ時(午前8時)出発し、大津宿はつねより湖上舟を取り、膳所城脇を舟行する。
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そこから石山寺に到着した。ちょうど御開帳であり参詣が多かった。紫式部の源氏の間が今なお残っている。源氏物語、大般若経は宝蔵に入置き見ることは出来なかった。境内は絶景である。茶店にて源五郎鮒さしみにつくり食べる。
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そこから陸行、勢田の橋(瀬田の唐橋)を渡り草津に至る。(ここで義仲寺に寄れなくて残念であった)
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草津守山(守山市)、武佐(近江八幡市武佐町)を過ぎた。この間に鏡山がある。武佐茶屋文平に宿泊する。よろし。
3月26日(58日目) 多賀
晴天、早晨(そうしん:明け方)に起き食事をして出発する。
老蘇(おいそ)の森、愛知川、この辺りから高宮までの間、麻の織物を商う。即ち高宮と称するものなり。至って掛け値(値切られることを予想して、実際の販売価格よりも値段を高くつけること。)あり。心得ておくべし。半値だったら売ってくれる。また、藤細工もの多し。これも掛け値多し。
ゑち川(愛知川)宿はずれから多賀大明神(多賀大社)の鳥居がある。参詣すべし。そこから鳥居本へ駆抜け野道である。鳥居本、神教丸(赤玉)商う家が多い。
そこから番場へ。その間に摺針峠あり。茶屋にて餅を商う。湖水の見晴しよろしく、そこから醒井、柏原と行き、柏原で伊吹山を弓手(左手)に見る。この宿では艾(もぐさ)を商う家が多い。銭屋という家に泊まる。
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