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東京・上野で開催中の「永遠の都 ローマ展」に行ってきました!

秋が深まってきた10月初め、上野・東京都美術館で開催中の「永遠の都ローマ展」に行ってきました!

1873年、 欧米に派遣された岩倉使節団はイタリア・ローマにあるカピトリーノ美術館を訪れました。この訪問はのちに、日本の博物館設立や美術教育に大きな影響をもたらします。

それから150年。今度はローマの美術品が姉妹都市である東京にやってきました。

神話の時代からルネサンス時代を経て、17世紀頃まで。カピトリーノ美術館の所蔵品を中心に古代遺物、彫刻、絵画など幅広い作品が公開されています。

これから、この特別展でとくに心に残った作品を感想とともにご紹介します。

もうご覧になった方はもちろん、これから見に行くという方にも読んでいただけたらうれしいです。

カピトリーノ美術館とは

カピトリーノ美術館は、ローマの市庁舎のある丘の上に建っています。世界で最も歴史の古い美術館のひとつ。

1471年、教皇シクストゥス4世が古代のローマのブロンズ彫刻4点を ローマ市民に返還するという名目で寄贈したのが始まりです。

1734年、教皇クレメンス12世の頃に美術館は一般に公開されます。美術館を構成する建物は、ミケランジェロが整備したカンピドリオ広場に面して建てられました。

古代ローマ時代には神々をまつる神殿のあった場所に建つカピトリーノ美術館。「永遠の都」と呼ばれるローマで育まれた数々の美術品に出会える場所です。


心に残った作品5点を紹介します!

1.《カピトリーノの牝狼(複製)》 ローマ市庁舎蔵

建国神話をもとにつくられた古代のローマのブロンズ彫刻 。教皇シクストゥス4世によってローマ市民に返還された、美術品4点のうちのひとつで、カピトリーノ美術館の礎になった作品です。

わたしはこの像をはじめて見たのですが、あとで調べると東京の日比谷公園にもイタリアから送られた複製があるのだとか。今にも動き出しそうな表情が印象的です。

牝狼の乳を飲んでいるのは双子の兄弟、ロムルスとレムス。ローマ神話で軍神とされるマルスの子です。ロムレスは後に王政ローマの初代の王になる人物。

牝狼の像のオリジナルは紀元前5世紀の作品ですが、双子の兄弟の像は15世紀に付け足されたことがわかっています。

言われてみれば素朴な牝狼に対して、必死に乳を飲む兄弟の作風は洗練されているように思います。

よく見れば、作られた時代が違うのも納得がいきます。「なるほど」と、思わずうなずいてしまった作品です。


2.《ボルセナの鏡》 カピトリーノ美術館蔵

紀元前4世紀の作品。建国神話のモチーフを繊細な線で描いた美しい鏡です。牝狼と双子の兄弟の物語はローマに住む人々にも浸透していたことがわかります。

日本や中国などの銅製の鏡よりも軽そうで、持ち手のようなものがついています。これを使用して身じたくをしている人の様子が目に見えるよう。

2000年以上前のものとは思えないほどの細かな仕事が印象的な作品です。


3.《コンスタンティヌス帝の巨像の頭部(複製)》 ローマ文明博物館蔵

こちらも、教皇シクストゥス4世によってローマ市民に返還された美術品4点のうちのひとつ。コンスタンティヌス帝はキリスト教を初めて公認した皇帝として知られています。

オリジナルはブロンズ製。頭部だけで約1.8メートルと大迫力の大きさです。近づいて横からみると、頭部がへこんでいます。

解説文によると、当時はここに冠がつけられていたと推測されるのだとか。

美術館が公開している写真だけではわからなかった事実。現地に行って気づくこともあるのだなあと再認識しました。

ローマ皇帝として多大な影響をもたらしたコンスタンティヌス帝の偉大さを感じる作品に圧倒されました。


4.《カピトリーノのヴィーナス》 カピトリーノ美術館蔵

「恥じらいのヴィーナス」と呼ばれる典型的なヴィーナス像のポーズでたたずむ女性。

カピトリーノ美術館の顔であり、今回初来日を果たした注目の作品です。

初めて等身大の女性のヌード像を作ったギリシャの彫刻家、プラクシテレス。ローマ時代にはその複製が多く作られ、ローマン・コピーと呼ばれました。

「カピトリーノのヴィーナス」のモデルは、おそらくプラクシテレスの息子の作品ではないかと言われています。

テラスの一角を模したセット(こう表現していいのかしら?)に配置されたヴィーナス像は、360度、どの角度からも見ることができます。

明るい照明に照らされているせいか、彼女はいっそう恥ずかしそうに見えてしまいます。

大理石でできた体は艶やかに輝いて、ほんとうの裸体のよう。今にも表情を変えて逃げて行ってしまうのではないか?そう思えるほど、いきいきとしています。

わたしはなんだか急に申し訳ない気持ちになって、ゆっくりとその場から離れました。

美術品をみてこんな気持ちになったのは初めて。自分でも驚いてしまいました。


5.《教皇ウルバヌス8世の肖像》 カピトリーノ美術館 絵画館蔵

この絵画を描いたピエトロ・ダ・コルトーナは17世紀のローマバロックを代表する画家。当時ローマの実力者であったフランチェスコ・バルベリーニ枢機卿にみいだされます。

教皇ウルバヌス8世はフランチェスコのおじにあたる人物です。柔らかな表情でほほ笑む様子は、なんとも上品で、気品にあふれています。

衣服の素材、とくにレースの緻密さや、柔らかな質感がよく表現されているところが好きです。

ピエトロ・ダ・コルトーナは教皇ウルバヌス8世によって活躍の場を与えられた芸術家のひとり。当時、教皇庁がイタリアの芸術を保護していたことがわかる作品です。


番外編.《モエシアの艦隊・デケバルスの自殺(トラヤヌス帝記念柱からの石こう複製)》 ローマ文明博物館蔵

トラヤヌス帝記念柱は紀元113年、ローマ皇帝トラヤヌスのダキア戦争での勝利を記念してつくられました。高さは台座あわせて約38メートルです。

ここに展示された複製はふたつ。

戦場に向かう人々を描いた「モエシアの艦隊」

捕虜となるのを拒み自害したダキア王の様子をあらわした「デケバルスの自殺」

17世紀以降ローマの古代遺跡は当時の人々の憧れであり、芸術的感性をかき立てる対象になっていました。

この記念柱もそのひとつ。フランス皇帝ナポレオン3世もこのモニュメントに自らを重ねたのだとか。

ここでは写真撮影が可能なので、たくさんの方が記念撮影をしていました。わたしも何枚か撮影しました。

なお、こちらに紹介した展示物の写真は、公式サイトのみどころおしらせのページから確認ができるものもあります。あわせてご覧ください。


遠いのに身近に感じる!?ローマの美術品

「永遠の都 ローマ展」の展示物は、遠くイタリアからやってきた2000年ほど前のものや、ヴァティカンに由来する由緒あるものばかりです。

わたしたちとは文化や習慣が違う異国のもの。しかし見ているうちに、なぜか親しみがわいてくるのです。

とくに、パクスロマーナという約 200年間続いた平和な時代。人々が豊かに自由に暮らした様子が垣間見られたのが印象的でした。

金貨・銀貨は絵柄がとても美しく、今でもそのまま使えそうなクオリティーで驚きました。

大理石で作られたたくさんの皇帝の胸像は、どれも当時の彼らをそのまま写しているようで、とても身近な人のように思えるのも不思議です。

その他の時代の美術品も、人々の営みや息づかいを感じるものが多く、わたしはとても親近感を覚えました。


音声ガイドにも注目!

今回の展覧会の音声ガイドをつとめているのは、声優の諏訪部順一さんと早見沙織さんです。どちらもイタリアが舞台の作品に出演されています。

諏訪部さんは重厚感のあるナレーション。その声は古代からヨーロッパの中心地であり続けたローマの威厳と品格をとてもよく表わしています。

そこに早見さんの柔らかく、華やかな声が色を添えます。まるでローマの街を彩る鮮やかな花のよう。

おふたりとも、ゆっくりとお話しているので聴きやすい。展示物の解説文にない情報も含まれていたのでとても楽しめました。

トラヤヌス帝のあとを継いだハドリアヌス帝が、お風呂が好きだったなど、日本人が共感できるようなエピソードが聴けて、思わずニンマリしてしまいました。

展示物やローマの文化について、もっとたくさんのことが知りたい!という方におすすめです!

声優として活躍中のおふたりのナレーションは必聴!音声ガイドには会場で貸し出している機器で聴くものと、スマホで聴くアプリ版があります。アプリ版はダウンロードすると、2023年12月10日まで試聴が可能です。

おふたりのプロフィールと音声ガイドのご案内はこちらからどうぞ


オリジナルグッズもたくさん!

「永遠の都 ローマ展」の展示会場を出たところでは、展覧会公式図録をはじめ、さまざまなオリジナルグッズが販売されています。わたしはポストカードとハンカチを購入しました。その他にも魅力的な商品がいっぱいです!

グッズについてはこちらからどうぞ


まとめ

ここまで、この特別展でとくに心に残った作品を感想とともにご紹介しました。

ローマの歴史は世界史の教科書で習って以来、あまり触れていませんでした。しかし建国神話から近代までの時代の流れに沿った展示だったので、自然に振り返ることができました。30年ほど前、ローマやヴァティカンにいったときの出来事も、改めて思い返しました。

上野・東京都美術館で開催中の「永遠の都ローマ展」は2023年12月10日まで。そのあと福岡市美術館で、2024年1月5日から3月10日までの日程でおこなわれます。

何より「カピトリーノのヴィーナス」が見られるのは東京展だけ!ローマにいかなくても今なら日本で見られますので、この機会にぜひ訪れてみてはいかがでしょうか?
展覧会の情報は、こちらからどうぞ


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