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断熱性能から見る、ハウスメーカー VS 工務店という落とし穴 いちおうの結論 Vol.04-2

はぁぁ……いつになったら終わるんだろうこの家の話……。
というわけで、見聞きした情報を備忘録的においておくだけの稿です。
前回の続き、断熱住宅についての、いちおうのまとめです。


断熱等級

断熱住宅というのが究極、「住み心地の良い家だ」という定義が、まぁ、是としまして。
この断熱をどれくらい家にもとめるのか、という評価基準がやはり、施主としても施工主としてもほしいわけです。折衝する際に話が通じやすいので。
それで。

断熱をはかる基準として「断熱等級」というものがありまして。
けっこうこれで話をする企業さんは多いのですが、これは省エネルギーとからめて出す等級で、話がどんどんややこしくなるのと、そもそもこの断熱等級も、あるいはHEAT20とかZEH基準などという基準も、この前の稿で述べました「UA値」をもとに使っているので、家を建てるいわば「施主」さんレベルならば、このUA値を知ってればいいのかな、と私は思っています。
ただ、断熱等級を使った方がわかりやすい理由として、この断熱等級は「地域格差」を加味している、というのがあります。
寒すぎる、または暑すぎる地域、あるいは日光が当たりまくる地域とあまり当たらない山間の地域が、同じUA値が必要、というわけではないのは想像すればおわかりかと。
以後、UA値の「だいたいこれくらいあれば」というお話をしまして、その値が○~△、のように、幅を持ってお話させていただきますが、これは断熱等級で表される地域格差を加味している、ということにご留意ください。

地域区分図表

まずは、YKKさんが出しておられる、こちらの図をご覧ください。


断熱等級を語る上での地域区分図

これは、国土交通省が定めようとしている、「建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令における. 算出方法等を定める省令」……長いな。
つまりは、建物の省エネ性能確保のために備えられた構造・設備に関する基準をもとに作られた、「それ」を担保する「地域区分」がどのようになるか、の図です。

断熱を求めるなら、(この図で言うならば)寒い地域ほど厳しい基準でないとね。でも暖かい地域なら緩い基準でもいいかね。という。
この「省エネ地域区分1~8」は、そういう感じで捉えていただくといいと思います。
ただ、「暑い」というのもまた、昨今では断熱住宅を求める根拠と、もちろんなり得ますので、この地域区分はあくまでも参考程度、ということで、施主さん自身が求める断熱基準に則した住宅を建てる、というのが最終的な着地点となろうかとは思いますが。

断熱等級表(資料元:LIXIL)

断熱等級の概要

断熱を比較する、となると、「人間の体感」を基準にするならば当然ブレがでますので、厳とした一つの基準、というのはなかなか難しいのです。
そこで、たとえばHEAT20とかZEHとか言った基準は、先ほどの国土交通省が出そうとしてる長い省令……に即し、「省エネ基準との照らし合わせで、各家のエネルギー使用量との比較で出してみました」という基準となっております。
このHEAT20とかZEHとかを使い、「断熱等級」としてざっくり1~7にまとめたのが、上表となります。……あああ言っててまどろっこしい。
(HEAT20とかZEHとか、ほんとは言いたくない、ってのがまるだしですね)
ここでは、上記断熱等級をもとに、これとさらに上項の地域区分表を組み合わせ、語っていきたいと思います。
この断熱等級。等級4は今後標準となり、5以上を狙うと、長期優良住宅関連、あるいはZEH住宅関連、あるいは住宅ローンの控除など、税金の優遇措置を受けられたりするので、詳しくは施工主である工務店、あるいはハウスメーカーさんにご相談されると良いと思います。

断熱等級×地域区分

せやま工務店さんという、Youtube動画を出している企業さんが、この断熱等級と地域区分について、一目でわかるいい一覧を作ってらっしゃったので、それをここでは引いていきます。


断熱等級と地域区分

およそ、施主さんが家を建てようとしている地域区分において、どの程度断熱性能(UA値)が担保されてれば、どのくらいの断熱等級になるのか、が分かる表となっております。

断熱を求めれば、値段もあがる

あとは。
施主さんが快適を目指す基準はどの等級になるか、だけです。
ちなみに、上記せやま工務店さんは、およそ断熱等級5、それよりやや厳しめ。HEAT20のG1基準いくかいかないか、あたりが、おおよそ快適さとして一番効率的なのではないか、という提案をされています。

これ以上の断熱性を求めると、やはり住宅費用が高価となってしまい、それだといわゆる省エネ……夏場冬場の電気代、灯油代等……で節約できる以上の金額がかかってしまい、費用対効果を考えるなら損なのではないか、ということでした。

ただ。
そこも施主さんのお気持ち次第でしょう。
断熱を求める以上妥協はしたくない、というのもまた一つの気持ちとして大事にしてもよいかと思います。
最終的には、決定権は施主さん自身にあるのは当然のことであります。

断熱材の話になだれ込む

それで。
ではどうやってその断熱を出していくか、という話になるわけです。
これは、次回以降に語る予定ではありますが、「気密」をしっかりと出す。また、寒暖のある外気の温度をダイレクトに入れない、温度を一定に保つ換気システムを取り入れる。
というのが重要になるでしょう。
また、前回の稿04-1で語りました内容として、窓(熱を交換してしまう戦犯圧倒的第一位)のサッシとガラスにこだわり、かつ、熱の逃げやすい部屋(玄関、勝手口、風呂場、廊下、洗面所等)にこだわりながら、できるだけ熱の逃げにくい形へと持って行く。こういうことも重要でしょう。

さらに、この項の以下で語ります内容としては、屋根、壁、床各所に断熱材を仕込む。
そして最終的に、家全体で低いUA値を叩き出す、と。
そのような方向で考えていくべきでしょう。

では、ここでは断熱材の材質に絞って少しだけ、語っていきたいと思います。
もうね。いいかげん結論も出さずに長くひっぱりまくってますからね。ざっとでないと、こんなの誰も読まない。
屋根の話は、またこんど。

断熱材の種類

ここからのお話は、「職人社長の家づくり工務店」さんが出しておられる動画を参考にしてお届け致します。以下に話す内容は、ほぼこの動画の内容そのままですので、正確なところは動画を観ていただいた方がよいかも知れません。

選ぶべきではない断熱材、というセンセーショナルなタイトルですが、選ぶべきじゃない「駄目な」断熱材を語る、という動画ではありません。

具体的には……

グラスウール:ガラス繊維素材。λ値は、0.036~0.040W/m・K。(※)
(※材料の厚さ1mとし、両側の温度差を1℃としたとき、材料面積1㎡の部分を通過する熱量W。数字が低いほど断熱性能は高い)
(メリット)安い。丈夫。
(デメリット)湿気を透過しやすい。結露を比較的引き起こしやすい(※2)。
(※2)ただ、ガラス繊維そのものは吸湿性はなく、即内部結露の原因となる、というわけではないことは注意が必要。

ロックウール:岩石を原料とした繊維素材。λ値は、0.038W/m・K。
(メリット)グラスウールに比べて、断熱性は高く、加えて防音、撥水性能がある。
(デメリット)グラスウールより高価。湿気を透過しやすく、結露を比較的起こしやすい(※2)。

セルロースファイバー:新聞紙等+ホウ酸等を原料とした繊維素材。熱伝導率は0.040W/m・K。
(メリット)防虫、シロアリ対策になる。上記素材よりは結露リスクは若干少ない。
(デメリット)上記より高価。施工日数がかかる。

ポリスチレンフォーム:ポリスチレンのブロック。いわば発泡スチロール。熱伝導率は0.024~0.030W/m・K
(メリット)湿気が抜けやすく、経年劣化がしにくい。
(デメリット)ガスバリア性がそもそもない(全て透過する)。初期性能は高くはない。ただ経年で劣化しないので、いわば性能は高止まりしてくれる。
熱に弱い。火事に注意。

フェノールフォーム:フェノール樹脂+発泡・硬化材で作った板材。熱伝導率は0.020W/m・K
(メリット)熱に強い(フェノール樹脂はフライパンにも使用されている)つまり熱伝導しにくく燃えにくい。結露しない。劣化しにくい。
(デメリット)高い。施工精度の高さを要求される。

ウレタンフォーム:ウレタン樹脂。熱伝導率は0.024~0.026W/m・K
(メリット)断熱性能が高い。
(デメリット)ガスバリア性が経年で劣化するかも。燃えると有毒ガスが出る。

ウッドファイバー:木材を繊維状にした断熱材。熱伝導率は0.038W/m・K
(メリット)蓄熱性能、蓄湿性能が高い(湿気を吸収する)。使用後は土に還り、環境負荷が小さい。
(デメリット)燃えやすい。

などの特徴が、あるわけです。が。

この断熱材について、材質を羅列しただけで、じゃぁどれを使うべきかどれを使うべきじゃないか、ということをだだらにごちゃまぜにして述べても、まったく実は益のないことなのです。

これら特徴を羅列したものを見て、我々が思わなければならないことは。
どの材質にも、得手不得手があり。
その材質が利点を発揮する環境と、それが逆の弱点にもなりうる環境がある、ということであります。

湿気の多い地域、雨の多い地域でグラスウールはちょっと心配だなぁとか。
近くは山だからセルロースファイバーはシロアリ対策になるなぁ、とか。
自然に優しいといえど、地震の多い地域だからウッドファイバーは火事が心配だなぁ、とか。
そのように多角的に考えていく。
そして、床のここにはこの断熱材を。壁にはこれを。廊下のこの部分にはこの断熱材を。
そういう、部分部分での使い分け、なんていうのも考えられることでしょう。

そして、結論

さてさて。
ここでそろそろ。根本的なことを言う時間がようやく、やってきたように思います。
これまでのVol.01~04まではひたすら
ハウスメーカー VS 工務店
ということの結論を得るための稿でありました。

でですね。
たとえば上記のような断熱材。そしてその使い分け。
これがすごくわかりやすい例だと思うのですが。

これ、施主さんが独自で勉強して、設計の段階で設計士さんに、あるいは工務店に、あるいはハウスメーカーの営業さんに。

ここはこうしてくれ。これを使ってくれ。
こういう風に指示するのが正しい姿だとは……多分、誰も思いませんよね。
そりゃそうです。どこまでいっても、どこまで調べたとしても、向こうはいみじくも設計のプロ。我々はアマチュアです。
アマチュアと、プロの違い。
これはいろいろな観点がありましょう。せんじつめればそれで飯を食ってるか否か。サラリーをもらってるか否かの差ではあります。
でも、そういうことじゃない。
建築における、プロとアマの明確な違い。
それは。

「自分で建てた家のその後という、結果の蓄積があるか否か」

なのです。

施主さんはいわばアマ。自分の家以外の結果を知ることはほぼ、ないです。
比べて、施工主はプロ。その後のアフターケア含め、建てた家がどのような施工の結果どうなったか。その蓄積がある、ということです。

考えてみれば。
そもそもVol.01で申しましたように、ここ十数年で家の設計概念が急成長したのは、そのノウハウの蓄積として、壊れにくく住み心地のいい家というものが、震災というトライアンドエラーを経て形作られるようになった結果である、と申しました。

そういう意味では、アマである施主は、永遠の「不勉強」であるわけです。
どんなに知識を蓄積しても、それは本や活字、映像の中だけの知識に過ぎず、形を成してない。
ただ、結果として結実した、例えば断熱性の高い家で、できるだけ防音を兼ねた断熱素材を使ってほしいとか。
シロアリが怖いので基礎断熱はちょっと……と言えたりとか。
そういう意味で知識は発揮出来れば、施工主さんとのコミュニケーションもスムーズでありましょう。

かたや。
ハウスメーカーにしろ、工務店にしろ。
自店の素材で家を建てた結果、こうなった。これが悪かった、これが良かった。そういうノウハウの積み重ねがあり、それこそが「メリットデメリットを掛け合わせた、トータルの設計の結実として」家を育んできた、ということがあります。
ですが。
そのトータルの結実からは外れた……いわば、「今まで使ったことのない素材」を使って、「今まで作ったことのない設備」を依頼し。
なおかつ「今まで前例がない間取り等の家づくり」を、ハウスメーカーにしろ工務店にしろ、依頼したら、どうなるでしょう。

思うに。
まさにこれこそが、ハウスメーカー VS 工務店  という話を超えて、
どちらを選ぶにせよ失敗しか見えない家づくりとなる
ことは、明らかでありましょう。
どちらを選ぶにしても、その企業さんにノウハウの蓄積がない建材・工法・システムを発注するのはリスクとなりえる。
このことは肝に銘じておくべきです。
なにより、素人考えで(私のように)動画を漁った程度の知識づけで、最良と思える工法、建材で依頼をしたとて。
それを、仮に企業さんが分かりましたと言ってくれたとて。
そして、実際に建築の段になって、棟梁さんが理解を示してくれ、きちんと指示を出してくれたとて。
それを、その工事に不慣れな現場作業員が、やり方をその場で(なにぶん初めてのことゆえ)学びながら手探りで工程を行う。
どうですか。
熟練の大工ならどんなことをやらせても一発でうまくいく、などという砂糖菓子の弾丸のような甘い神話を信じられる人は、あまりいないのではないでしょうか。
どのハウスメーカーにも工務店にも、これとあれ、あれとそれを組み合わせてこの地域で、この環境で、このやり方で結果を出してきた、という自負の持てる工法、建材を持っています。
それを無視して自己をゴリ押しするのは失敗を誘発し、思わぬ結果をもたらすリスクを高めるのです。

まあ……それ以前の話、というのも実例がありまして。
ここにはあえて載せませんが、令和5年という最近にもなって、サイディングを直貼り工法で建ててしまい、結果とても住めないような家が完成した、という失敗例が、Youtubeに動画として挙がっています。
これなどは論外です。が、上記でいう「不勉強」どころではない、その範囲から外れた本当の「不勉強」な工務店、あるいはハウスメーカーが存在することは、事実です。
そういう、ものほんの不勉強なハウスメーカー、工務店をはじく、候補から外す、という選択は、施主さんがある程度の勉強を重ねていればクリアになるはずです。そういう意味でも、これまで述べてきたような住宅建築の基礎知識は有効でありましょう。

ただ。

ハウスメーカーで建てるか。工務店で建てるか。
そのどちらがいいか、というのは、実は問いとして、要領を得てはいません。
そもそも論の話をすれば、日本の家は全て、全て「工務店」が建てています。
ハウスメーカーの家は、ハウスメーカーが直属の工務店に発注をかける、というだけですので。

ハウスメーカーの良さは、その圧倒的なノウハウ力と、工場一括生産システムによる安定性の高さ。

工務店の良さは、こちらの要望に応じてできうる限りの努力をしてくれる柔軟性と、すぐれたところは並のハウスメーカー直属の工務店では歯が立たないようなレベルで施工してくれる技術力の高さを持ってるところが、少なくはあるが探せばあること。

なので。
施主としてどちらをどう選ぶか。
重要なのは、以下のようなことではないでしょうか。

まず、自分の家の要望を具体的に描くこと。
そして、それが実現可能なハウスメーカー、工務店を根気よく探すこと。

そのための建築知識、予備知識です。
いたずらに訳知り顔で工務店にマウントをとるためでも、駄目な建材を探してはそれを使うハウスメーカーをくさすことでも、窯業系サイディングを批判するYoutuberをけなすことでも、ありません。そんなのは些末であり、家づくりに正面から向かおうとする人に失礼な生き方であります。

ということで。
ハウスメーカー VS 工務店。
一応の結論をみました。

ここからは、さまざまな他の建材について、縷々語る稿となりましょう。
とりあえず、言いたいことがようやく言えた、という感じです。

……ああ、そうそう。
この後、気密と換気についても語らねばならないのだった。

というわけで、住宅建築の話は、これからもまだまだ……おそらくですが、不定期で続けることでしょう。

なお、見やすくするために、「住宅関連 まとめ」としまして、マガジンを作っておこうと思います。見返す場合はどうぞ、そちらをご参照のほど。よろしくお願い申し上げます。

とりあえずここまで、ありがとうございました。

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