家 の歴史(ハウスメーカー VS 工務店という落とし穴 Vol.02)
見聞きした情報を備忘録的においておくだけの稿です。
住宅建築について語ろうとすると、なにを主に据えて語るべきか迷います。
サニタリー、浴室、リビング、寝室、外構、廊下、玄関、屋根……それぞれにこだわりのポイントがあり、それぞれ別の会社がシステムを作っており、それぞれに必要な素材の知識があります。
なので、これらを箇条書きにしたところでてんで頭には入らない。
困りました。
どうにか、家、という機構を完結に、まとめて、ずばん! と表現できる。
そんな方法がないものか……。
と。
遠回りしてもしょうがない。
ここはひとつ、家づくりの「歴史」から語ってみよう。
そう思い立ちました。
なぜ歴史? それは、これを語ることによって、現代の人がマイホームになにを求めているかが、簡潔に可視化できるんじゃないか、と思ったからです。
といっても。
そんなに昔のことから語ろう、とは思っていません。
ここ、十年ちょっとくらいの変遷です。
まずは、昭和あたりの家づくりから。
昭和までのマイホームというのは、基本のコンセプトは決まっていました。
「夏、暑くない家」
といいますのが、このころはクーラー(死語ですかね。今はエアコンですし)をつける家は実は少数派で、つけたとしても当時の機構ではとにかく電気代を食いまくるものしかできませんでした。
ゆえに、つけたとしてもほんとうに涼みたいときだけ、○時間だけ! という使い方をしてました。寝苦しいからと一晩中クーラーがつけられるなんてのは大富豪の家だけです。
反対に、寒さをしのぐ方法は、こたつとストーブという最強の組み合わせがありましたので、とにかく夏を暑くなく過ごすことに注力した、ということになります。
なので、丈夫さと安さを兼ね備えたアルミサッシの窓、木材サイディング、でなければ漆喰、瓦屋根……という、判で押したような典型的な家が山をけずった団地に建ち並ぶ……なんてことになったのです。
ですが。
ある大きな歴史的事件によって、家の概念(というより、需要?)が、がらりと変わることになったのです。まさに、家づくりのターニングポイントと呼ぶにふさわしいある出来事。
東日本大震災です。
家づくりを望む人たちが、この東日本大震災から学んだことは、次の二つです。
倒壊の怖さ
省エネの大切さ
地震で壊れる建物。基礎がしっかりしていた家は、他の家が流されるなかぽつんと孤高に残っていた、なんて映像を覚えてらっしゃる方もいると思います。あれは強烈な印象を人々の脳に植え付けました。
また、原発事故による電源喪失、輪番停電などの経験を経て、電気の大切さが骨身に染みたころ、原発を停止したことによる火力発電の増加から、エネルギーを外国に頼る日本においては電気代の高騰が実に悩ましいことになりました。
壊れない。
電気をあまり使わなくてよい。
そして、住み心地がいい家。
これが、あの地震以後、住宅需要として定番化していったのです。
ゆえに。
この十数年で、住宅の建築技術は驚くほど進歩しています。
ですがその進歩は、実はそのへんの昔の賃貸や築五十年を超えた親の家に住んでいる人間(わしのことじゃ)には、実感のしづらいものではあります。
この、ほんの十数年の進歩で、住宅における需要がどう固着化していったか。
それを具体的に申し上げましょう。
それは、以下の三つが柱となっております。
断熱
気密
換気
実は今の家づくりは、この三つが複雑怪奇に絡み合って需要が形成されているのです。(今回は家の内部の話です。外構の話はいつかします)
次回からは、上記1~3について、ひとつひとつ材質や建て方等にきちんとスポットを当てて語っていこうと思っております。
今回は、その前段階。概略的な話にとどめさせていただきます。
さきほど私は壊れない家を求める……と語りましたが、この話は上記1の断熱の項に深い関わりがありますので、そちらで申し述べます。
その次の、省エネ。これが上記1~3の全てに関わる話となります。
省エネ、ということを考えた時。
昨今、夏は暑く、冬は寒い。エアコンの出番は年を追うごとに頻回になれど、電気代はとどまることを知らない時の中で、いくつもの移りゆく街並みを眺めていた、なんてことになっています。Tomorrow never knowsなわけです。
なので、昔に建てたおうちに住んでらっしゃる方などは、まさに各部屋にエアコンを設置して室外機をぶんぶん言わせている状況です。
ですが。
これは実に美しくない。いや、美しさなんてどうでもいい。なにより、なにより電気代がアレだ。
なので、エアコンに頼りきらない家をめざそう。そういう機運が出てきました。
となると。
昭和の作りとして当たり前であった「暑くない家」……これはつまり、「通気性」に力を入れた、「風通しのいい家」……といえば聞こえはいいが、要は隙間風が入ってくるような家、は、ふさわしくない、ということになります。
するとまず、断熱、ということを思いつきます。
屋根と壁はもちろんですが、冬の場合、冷気は床から忍び寄るものです。
なので、床の断熱にも気を配るようになりました。
断熱がきちんとされると、こんどは蓄積した冷気や熱を逃がさない、ということを思いつきます。
これは、家に隙間がないほどよい、ということになります。
これが気密です。
気密性能を測定し、家から冷気、熱を逃がさない設計にも気を配りはじめます。
この数値ですが、断熱についてはUA値(熱の逃げやすさ)、あるいはこれを基準としたHEAT、あるいはZEHなんて指針ができております。
また気密については一般的にはC値(隙間の大きさ)というもので表します。UA値、C値とも、数値が小さいほどまぁ……いい、優れている、ということになります。
さて。
断熱して、気密性を高くすると、家はどうなるか。
当たり前ですが、空気が入れ替わらない、ということになります。
気密性を高くして、空気が全然入れ替わらないから窓あけっぱにして住んでます、でははっきりいって意味がありません。
そこで、換気システムを家に取り入れることになります。
この換気システムは、実は2003年の建築基準法改正で、今後建築される全ての建物に設置が義務化されております。そんなの知らんかったよ。
この換気システムについても、第一種換気システム、第二種、第三種、と、いろんな方法があります。これも後々詳述します。
つまり。
今の家は、断熱と気密を高くして、空気の入れ換えは室温を変化させない工夫をした上で換気システムを導入し、温度管理も一元管理した上で、全室に冷気や暖気が行き渡る空気の流れを作る、なんていう、おそろしく小難しい家を作ってきている、ということです。すごいですね。
まぁ、思い出しますに。
そういやぁ一時期、「スウェーデンハウス」なんて会社だかなんだか、有名になってたような。あちらの家は断熱がしっかりしてるらしいですね。
今回は、住宅建築の、昨今の需要について、歴史的観点から述べてみました。
次回は、宣言どおり、具体的な断熱、気密、換気……その方法論について、材質や具体例など交えながら、縷々語っていきたいと思います。
それではまた。