円高と円安
某SNSでの話題を元に、一度だけちょっと深く考察するだけの文章です。
今回は、
「円高の方が商品の価格が安くなって生活しやすい」
「円安は、イコール国力の低下なので、日本が弱くなっている証左だ」
という二点の発言が、いまだに某界隈をにぎわしているので、このことについて考察していきたいな、と思っております。
と、いいましても。
上記コメントに対する専門的な反論は、実は十分に某SNS内にて発されており、その内容は十分な品質があると私は判断するのです、が。
こう、「ある程度の人にも、一発で分かるような、短く端的な例を出せないものか」と考えておりまして。
こんな言い方はどうだろうか、という考えに行き当たりました。
本日はこれを、披露したいと思います。
なお、わかりやすさを重視したため、やや雑な議論になってしまっています。この雑な論を目にしたことを期に、他のきちんとした経済の知識に触れ、為替への理解を深めていっていただければ、うれしく思います。
例えば、こんな
クルーグマンさんの言葉、とか。です。
円高 1
円高になると、海外の人にとっては、日本で生産するもの全部高くなります。
品質が良ければ高くても売れる、という意見は、国産牛の売り上げが輸入自由化後どうなったか、を見てもらえば寝言だとわかります。
ここで、生産工場の経営者は生き残り策を考えることになります。
作る場所を海外にしてしまえば、円高の影響は受けなくなる、ということに気づきます。ので、生産工場は外国へ出て行ってしまいます。
これが「産業空洞化」というやつです。
これで、円高効果の一つが浮き彫りになりました。
「円高になると、仕事場が減る」
「円高になると、労働者が次々とクビになる」
円高 2
円高になると、輸入品が安くなるのは本当です。
なので、できるだけ通貨安の国から輸入すれば、国産より格安に値段を設定できます。消費者は安いので、喜んで買います。
これで、円高効果の一つがまた、浮き彫りになりました。
「円高になると、輸入品が安くなる」
「円高になると、国産品が売れなくなる」
1と2を繰り返した結果、日本の生産工場は日本を市場として相手にしなくなり、労働者は失業し、労働市場は空前の買い手市場となります。
需要と供給の経済原則により、労働者の賃金は下がっていきます。
つまり。
ものが安くなるスピードよりも早く、労働者の賃金は下がっていき、あるいはゼロになったり(クビになって)します。
円安 3
円安になると、生産工場は日本に回帰します。
なぜなら、今、アメリカはインフレと利上げを繰り返しており、「ドルの独歩高」となっているからです。
そして、国力を持たない国は、自国通貨の流出を食い止めるため、アメリカに足並みをそろえて「利上げ」をするしかありません。
円高の状況の逆が起こるわけです。
よって、日本に産業が興ることになります。
これで、円安効果の一つが浮き彫りになりました。
「円安になると、仕事が増える」
円安 4
円安になると、輸入品が高くなります。
ここで注意しないといけないのは、じゃあ相対的に安い国産品が売れるようになるのか、というと、ちょっと難しい問題が発生します。
農産物においては、肥料・飼料も輸入に頼っているため、これらの価格高騰がおこり、主に農産物については、国産品も足並みをそろえるがごとく価格高騰を起こす、ということです。
ということは、輸入品も国産品も高くなるので、広範な商品において、インフレーションが発生します。
そして、このインフレは
「とても高くなった輸入品」
か、
「まあまあ高くなった国産品」
かを選択できる市場を作り出します。
国産品の選択肢は、他国のインフレ率が日本と比較して高いからこそ、インフレ下でも増えるのです。
「円安は、インフレの前兆」
円安とは一定、関係のない事象 5
ここで、少子化、という条件が入ってきます。
失われた30年によって、少子化は既定路線となっております。
そのため、労働人口の減少が危惧されております。
さて、3の状態で4が発生し、5の事象が規定となっている条件下では、労働者はより賃金の高い職場を「選べる」ため、労働市場は売り手市場となります。労働市場もまた、インフレとなるのです。
「こんなに高いなら、外国から輸入を…」(←移民制度の導入のこと)
は通用しません。
発展途上国は、長年成長しなかった日本を置き去りに経済成長しているため、日本企業の賃金が安すぎると感じるからです。それならアメリカ行ったろ、てなもんです。
なので、泣く泣く日本人を雇用するしかありません。
インフレマインドが日本市場に醸成されることで、価格もですが、労働市場における賃金もまた、上昇していきます。
(今はまだとば口なので、実感はないでしょうが、いずれ国の政策をともなわずとも、勝手に上がっていくようになります)
つまりですね。
経済においては、究極、二択しかないわけです。
・商品の価格も、あなたの給料も安くなるか……(A)
・商品の価格も、あなたの給料も高くなるか……(B)
※スタグフレーション、という恐ろしい言葉もあります。石油ショックのさい起こった現象です。これは、商品の価格は高くなるが、給料は上がらない、というものです。こうはなりたくありませんね。
(A)の場合は、最初はいいのですが、やがて発展途上国に経済成長で抜かされ、向こうの方の価格が高くなった場合は、焼け野原の日本市場で高い外国産を泣く泣く買い続ける、という恐ろしい状況が待ってます。
と、いうことは。
(B)を選択するしかありません。そりゃ生活は苦しいことに変わりはありませんが、他国と競って成長することで、国産品と輸入品を選択できる、という余裕が生まれます。
ベルトコンベアから滑り落ちた国に、かける情けも施しも、ありません。
イヤなら走れ。
それが、世界の経済原則、というやつなのです。