ペペロンチーノの話
自分は、ペペロンチーノ……つまりにんにくと唐辛子だけのパスタ……が、あまり好きではない。
これは、自分が濃い味好きの味音痴であることとともに、オリーブオイルが、慣れたとはいえあまり好きな食材ではない、ということにも関係する。
レシピ通りにペペロンチーノを作ると、圧倒的に味が足りない。
味覚とは、五味に香りを足したものだが、香りはともかく味に関しては塩味しかなく、旨味が決定的に足りない、と思う。
そりゃ、コンソメだとか醤油だとか味の素だとか、旨味の出る調味料を足せばいいだけなのだけど、それはもうペペロンチーノじゃなくていいものになっていると思う。
それこそベーコンなり野菜なりきのこなりを追加して、麺つゆを放り込んで和風パスタとして食べればいいのだ。
ちなみに和風パスタは大好物である。旨味最高。
なので、これを最後にするつもりで、ペペロンチーノという素パスタのポテンシャルを探るため、あるアレンジを思いつき、実行してみた。
ペペロンチーノに欠かせないのはにんにくと唐辛子。それにイタリアンパセリだ。
しかし本州のはずれにある田舎のこと。フレッシュなイタリアンパセリなど売っていない。
また、以前パセリで試してみたが、そんなにおいしいものではなかった(そもそもパセリがあまり好きではない)。
そこで。
香りある野菜でいちばん自分が好きなもの。
「青じそ」
をイタパセ代わりにしてみようと思ったのだ。
ニンニク薄切りと唐辛子の輪切りをオリーブオイルでゆっくり炒め、カラッとしたらにんにくだけ取り出しておく。
ここに水を300ccほど入れ、沸騰したら塩を2つまみくらい足し、一人前のスパゲティーニを入れて、規定時間プラス一分くらい茹でる。
水分が大さじ2くらいになったら、みじん切りのしそを入れてよくあおる。
できあがり。
食べてみる。
うん。
今までつくった中では上位にくるおいしさだった。
イタリア人にはもうしわけないが、これからはイタパセは全部青じそでいいかもしれない。
ただ、パスタ料理全般から比べると、そりゃきのこなんかを入れた和風パスタやトマトパスタの方が断然おいしい。
それでも、このペペロンチーノは、材料はほぼ最低限。最低限の材料のパスタがこれだけうまい、というのは、自信につながった。
本国をリスペクトしてその味を追求するのもいいが、料理はまず、おいしくないと心もわきたたない。
イタパセがないなら青じそを入れればいいじゃない!
と。
心のアントワネットに従い、これからもイタリア人を怒らせていきたい、と思った一食でした。