暮瀬堂日記〜噴水と蝶
久しぶりに横須賀で仕事を終えた。
防衛大学校に通う制服姿の男女が凛々しく闊歩するが、新型コロナウィルスの影響か、海軍関係者の姿はめっきり少なくなった。
市役所前公園に足を運ぶと、今年初めての噴水を目にする。周囲のヒマワリは、あたかもスポットライトのようだった。
潮香をのせて風が吹き寄せると、海の気配に驚いたのか、水の柱がずれたようだった。だが、同じ場所に落水したので、それも気のせいだったに違いない。恐らく、ずれたのは私の方だったのだろう。
帰るべき川を決めかねいまだ噴水
軍人が英語で蝶にさゝやきぬ
蜜にしがみついていた蝶は振り向くと、『グッドバイ』と言い残し、噴水の隙間をくぐって消えてしまった。
(二〇二〇年 六月九日 火曜 陰暦 閏四月十八日 芒種の節気 蟷螂生 【かまきりしょうず】候)
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