「月報こんとん」2023年9月号

栫伸太郎「しくみ」

4ピースパズルのような朝の風

計算力をなでてしまった

笹かまは滑りやすくてかっこいい

立方体がまたがっている

自動で無料のバネが落ちてる

歯型になっても睦みあいたい

半チャーハンの地下鉄のとこ

皺をあつめてたばねた夜空

リバーブしちゃう」「あたためますか?

八十回に一回は土


今田健太郎「呪われお寺」

呪われる時間がながくなっていく

お寺にはそのときだれもいなかった

ビルの窓、なにか映っている。あれは

骨つぼの底になにかがかいてある

さむさからなにかを燃やすこととする

だれひとり髪を切らない犬神家

神社にはそのときだれもいなかった

水滴になりそうだった午後十時

その場所はそのときだれもいなかった

音がする遠いところで 遠いところで


暮田真名「頭領」

お子様の手のとどかない場所にいて

はじめてのチュウだったから欠けたんだ

磨いたらパフェグラスには見えないね

オルゴールの櫛歯の向きも覚えよう

発火したアドバルーンのほうを見る

隣人は液体窒素かもしれず

アンドロメダの身柄ください

人気が翳るひまもなかった

つまさきで情報操作されてるの

軽ければとりかえっこをする心

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暮田真名
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