大人は革の良い財布を持てって言うけれど...見栄を手放したほうが快適だった【エッセイ】

中学生３年生の時、おばあちゃんからセリーヌの財布をプレゼントされた。素敵な黒い革の財布だった。中学生の小遣いでは最大でも3000円ぐらいまでしか入れたことはなかった。けど、すごく大人になった気分だった。この財布が初めての大人の財布との出会いだった。

きっと、おばあちゃんは高校に上がる前に大人として恥ずかしくない財布を持たせてあげたかったのだろうと思う。その財布はすごく大切に使っていたけど、2年ぐらいしたときにどこかで落としてなくしてしまった。

でも、その頃からだろうか。いつの間にか自分で買う財布は黒の革の財布だけになっていた。

大人は時計と財布を見る

私は大人の持ち物を揃えたいと意識するまでもなく、家族にプレゼントされる形で大人の持ち物を増やしていった。中学生の時は革の財布。大学生に入ると、入学祝で革の靴とブルガリの時計をもらった。これは、おじいちゃんから貰ったものだ。

その時計は入学式の時に着けていって、また大人の気分になった。いい大人がするアイテム3点セットが揃ったのだった。きっと、社会に出ても恥ずかしくないように教えてくれたのだと思う。

実際に、社会に出て気づいた。時計やスーツ、靴、財布とかを戦闘力を測るモノサシとして使っている人が多いということに。とりあえず無難にいい革の財布だったり時計をしていると及第点はとれる。そこでマイナスには思われなかった。

でも、ふと最近になって財布が壊れたのをきっかけに小学生ぶりに革の財布を辞めてみた。買ったのは登山ブランド「ミレー」のライトウォレットだ。アマゾンで2090円だった。今までの財布と比べると10分の1、20分の1の価格だ。でも全然問題なかった。

革の財布は、なんか人に対して私はこういうモノも持てるきちんとした大人ですと表明しているような感じがしていた。対してミレーの財布はすごくフレンドリーだ。ミレーの財布はシャカシャカしたナイロン生地で出来ているから圧倒的に軽い。ちょっとどこか行くときも持っていきやすい気軽さがあるし、見栄もなにもない。

見栄と小綺麗は違う

でも、大人が普段からこんな財布を使っていたら変な人と思われるかもしれない。財布ちょっとダサいねって言われるかも。私はそれでもいいと思っている。そう聞くとファッションには無頓着な人ねと思われるかもしれない。

実際は逆で、私はむしろ服装とかはすごくこだわるタイプだ。本当に自分に似合うブランドとか服の素材とかすごく色々考えて買い物する。世間一般的に見たら小綺麗な格好をしてると思う。でも、見栄は張らない。

見栄と小綺麗、この二つはもとを辿れば同じ感情から出ていると思う。他人の目に対しての配慮だ。でもこの二つはベクトルが少し違う。見栄は自分を大きく見せて競争で優位に立つための手段だ。ママ友内での地位とか、仕事での競争、生きていると無理やりにでも競争に巻き込まれる。そこで使うのがこの見栄のテクニックで、ある意味攻撃的な側面がある。

一方で、小綺麗。これは他人を不愉快にさせないためにする手段だ。しわくちゃな服や、サンダルでビジネスの場に来たら不愉快に思われる。ボサボサの髪とスエットでおしゃれなレストランに行くとみんな嫌な目で見てくるだろう。そうならないために、小綺麗にするというのは大切だ。これは守りのテクニックともいえるのかもしれない。

守りと攻め。これは必要に応じて使い分ければいい。実際に商談では儲かって見えない人は仕事がこなかったりする。攻めのテクニックが足りないせいでチャンスを逃すこともあるかもしれない。でも、攻めのテクニックを普段の生活をしていると相手を疲れさせる。見栄も張り時ってのがある。

財布がダサくても小綺麗

歳をとっていくと、それなりに自分のアピールの仕方もわかってくる。大学生のように無理して大人になろうとしなくても、世間は勝手に自分のことを大人だと認識してくれる。そうなった今だからこそ、見栄を少しづつ手放していけるのではないかと思う。

変に威勢を張らなくてもいい。自分の経験から来る自信をもって、相手に寄り添ってあげる。それが1番大切な気がする。だから、小綺麗にするのは大切。それは他人を思いやる行動だから。

手入れのちゃんとした服を着て、髪を整える。ホワイトニングの歯磨きもして歯が茶色くならないように気を付けて、肌も最低限気にする。全部自分のためだけど、人のためでもある。

身だしなみは完璧に。でも、若い後輩とご飯いったりしてお会計の時に「先輩の財布ちょっとダサいっすね」って言われるような大人でありたい。