ここまでこれた
それだけで素晴らしい。
生きてきたんだから。
秋川滝美さんの『深夜カフェ・ポラリス』を読みました。
『「お子様ランチを食べてただ楽しんでただけの自分も、今ではこんなに立派な大人になった。長い道のりだったけど、頑張ってきたんだって……」
「……思うでしょうか?」
少なくとも美和は、この店主に言われるまでそんなふうに考えたことはなかった。ただ懐かしい、ちょっとずついろいろ食べられて嬉しい、と思っただけだ。お子様ランチから、今まで自分が歩んできた道のりを振り返る人がいるとは思えなかった。
おそらく店主もわかっていたのだろう、苦笑しながら言う。
「たぶん、思わないね。でも、できればそう思ってほしい。問題も不安も山積みかもしれないけど、あなたは生きている。お子様ランチを食べなくなった日から今までの長い時間を生き抜いてきただけでも素晴らしいことなんだって、気づいてほしい」
「生き抜いてきただけで素晴らしい」
「そう。生き抜いてきただけで素晴らしい。ここにいると、ついそんなことを思っちゃう」』
道のりは長いかもしれないし、短いかもしれない。
ここまでこれた。
生き抜いてきただけでも素晴らしい。