分断されている
なにかが足りない。
なにかができていない。
近藤史恵さんの『それでも旅に出るカフェ』を読みました。
『「分断されているんです。結婚した人も、結婚していない人も、専業主婦と、外で働く人も、子供がいる人も、いない人も、それぞれの苦労があるのに、なぜかそこに社会という大きな壁が立ちはだかって、お互いが理解できなくなっているんだと思います」
谷川さんははっとした顔になった。
瑛子は、結婚していないし、家族とも疎遠になっているから、孤独に老いていく不安はある。病気になっても、誰にも支えてもらえない。それを自分で選んだことだから納得させているだけだ。
でも、気兼ねせず、好きなだけ仕事に集中したり、自由時間を完全に自分のためにだけ使えたりする自由はある。それがない人からすると、いい身分であるように思えるはずだ。
「働いていても、働いていなくても、結婚していても、結婚していなくても、わたしたちはなにかが足りないと思わされてきている」
円は視線を落としながらそう言った。そして、結婚して働いて子育てをしていても、なにかが足りないというプレッシャーはのしかかる。他の人はちゃんとやっているのに、わたしはできてないとばかり思わされてきている。』
それぞれの苦労があるのにお互いを理解できない。
わかりあえない。
そこには壁があります。
そして、なにかが足りないとも思うんです。
なにかができていないとも。