父の気持ちを聞けた、忘れられない1日
病気になってからの父と過ごした時間の中で、絶対に忘れたくない大切な記憶がある。母の付き添いなしで病院へ行き、わたしが代わりにレスパイト入院の手続きをした日のこと。
受付では障害者手帳や介護手帳を出しながら、現実を突きつけられる思いがした。母も毎回1人でこんな気持ちになっていたのだろうか。
父を病院に託し、さまざまな手続きを終えて家に帰る頃には、もう日が暮れはじめていた。父がいる病棟の明かりを、帰りのタクシーの中からぼうっと眺める。
これからどうなるんだろう…。
窓の外を見ると、浴衣姿の人たちがたくさん、駅に向かって楽しそうに歩いていた。
その日は祇園祭だった。
とてもとても気が重かった任務が終わった。
想像とは全く違う1日になっていた。
今日はその日の話を書きます。
レスパイト入院という制度
父は1週間のショートステイを終えて、その日のうちに総合病院に入院することになっていた。
入院といっても治療目的ではなく、レスパイト入院という制度を利用する。
こんな制度があることを初めて知った。
もっと早く、母が限界を迎える前にわたしがケアマネさんに相談できていたら、もっと早く提案してもらえてたであろう制度だ。
知識があれば、使える制度はいろいろあるのだと思う。
事前に勉強しておけたらいいけど、それができなくても、困ったときは家族だけで抱え込まずにちゃんとSOSを出していく必要があるのだ。
わが家は気づくのが遅かったけど、困っている人はぜひ助けを求めてほしい。共倒れしてしまう前に。
ショートステイ先に父を迎えにいく
レスパイト入院の当日、わたしと妹は朝9時に駅で待ち合わせをし、父のいるショートステイ先に向かった。
気が重い1日が始まる。
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