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自分の中の言葉を積み重ねていく。その先に、未来の自分が待っている。

「韓国には、【水面が太陽や月の光を受けてキラキラと光る様子をあらわす単語】がある」という話を聞きました。

そう言われてみると、日本にはそれに見合うぴったりの単語がないことにあらためて気づき、調べてみると「윤슬(ユンスル)」という単語がそれにあたる、とのこと。

数日後、仕事で松江市美保関町の半島の端っこのほうまで向かったその帰り道、穏やかな海を見ていたら不意にそのことを思い出して、同乗していたスタッフに「あの水面のキラキラって、日本には見合う単語がないけど、韓国にはあれそのものを表すことばがあるらしいよ」という話をして、途中少し車を停めて海を眺め、写真を撮りました。

「ユンスル」ということばを知らないときももちろん、水面のキラキラってきれいだなあと思って見てはいたのですが、「そのもの」を表すことばを知識として得たら、俄然「ユンスル」という言葉がより美しく、特別なものとして目に映るようになりました。

その言葉を知っただけで、その状況が特別になる。
まるで魔法みたいです。

そしてそのことを、活動を同じくするスタッフに共有したことで、海を見る時間、撮影する写真…そのどれもが、今までよりもくっきりした輪郭を持って感じられるようになったんじゃないかなあ、と思います。

新しいことばを得たとき、周りの景色が今までとは違って見えて、わくわくする気持ちが自分の中で膨らみます。

その「ふわっと心が膨らむ感じ」がとても好きで、そういう瞬間をたくさん味わいたい、と思いますし、歳を重ねても、そういうわくわくを楽しめる自分でいたい!と思います。
そして、得たものを「くらしアトリエ」の文章担当者として活動に還元していきたい、というのも、ずーっと考えていることです。

くらしアトリエは「地域と暮らしをつなげる」「島根っていいな、と思う気持ちを発信する」「日々の生活を心豊かに過ごせるようなマインドを育てる」など、いろいろなメッセージを持って活動をしていますが、そのどれもが、いわば「ごく普通」で「あたりまえ」のことばかりです。

住んでいる土地を楽しみましょう、とか、四季を感じる暮らしっていいですよね、とかいう発信は、本当にあたりまえのことで、奇をてらって注目を浴びたりするようなものではありません。

なので、日々の発信…例えばnoteだったりInstagramだったりの「ことば」も、ともすれば平坦になってしまいがちです。

その、「文章の平坦さ」みたいなものが自分にとってはコンプレックスで、どうやったらふくよかで面白味もある、素敵な文章が書けるようになるのか、20年近くずーっと考えています。

例えばこのnoteは私が書いてはいるのですが、必ず別のスタッフがその内容をチェックし、「ちょっと偏りすぎかなあ」「もう少しみんなに分かる形で」などのリクエストが入ります。

それによって、言葉をつけ加えたり逆に削除したりするわけですが、そうやって常に読む人のことを考えて文章を組み立てると、結果的に「ごくごく普通の」「誰にも刺さらない」ものになってしまうことが、多々あるのです。

「こんなんじゃダメだあ~」と、読み返してしょんぼりすることも、たびたびです。

目指したいのは、あたりまえのことを言っていても、どこかに光る言葉があったり、フックになるような表現があるような文章。

バズるとかではなく、読んだ方に真意を伝えられたうえで、「お?」と思ってもらえるような…。

できるだけ多くの方に自分たちが伝えたいことを届けたいので、「あたりまえの中にも光るもの」をなるべく探して、文章を書くようにしています。

例えば…「嬉しかった」という気持ちひとつにしても、0から100まで感情はその時々により千差万別で、いろんな表現があるはず。その表現のグラデーションに沿って的確に言葉にできたらいいなあと思います。

なるべく具体的にイメージしてもらいたいから、表現をいろいろ探ったり、「嬉しい」という気持ちを自分自身に問いかけて、ぴったり見合う言葉を見つけたりする作業をしています。なかなか、うまくいかないのですが…。

どうやったらそのように、感情のグラデーションをうまく「ことば」にできるのか、と言えば、たぶん「読む」と「書く」を日々繰り返すしかないんじゃないかと思っています。

たくさんの本を読み、ことばを知り、それを自分なりに咀嚼していくこと。
同時に、自分の中に起きている感情の起伏や細やかな心の揺れを、言語化できるようにすること。

「読む」と「書く」を積み重ねていくことで、その人なりの色を持った「ことば」を繰り出すことができるようになるのではないでしょうか。

いまは島根県立大学の准教授を務めるローカルジャーナリストの田中輝美さんが、新聞記者をされていた時代にお話をうかがった際、「自分が書く文章は、自分の中にある言葉でしか作れない」とおっしゃっていたのが、強烈に心に刻まれています。

どこかから拾ってきた言葉を連ねて組み立てても、それは上っ面の表現でしかなくて、自分の文章にはならない…というようなことかな、と自分なりに肝に銘じ、文章を書くときにはいつも思い出しています。

自分の中にある言葉を増やすために、本を読んだり、とにかく書いたり…小さなことですが、積み重ねてもう、15年以上が経ちました。

なかなか思うようにことばを操るという境地には至れませんが、ここからまた何年も経ったときに自分の書いたものを読み返し、「成長したかも」と思えるように、ことばの引き出しを増やしていければ…と思います。

そして、自分の中のことばを増やすことは、「書く」ことを仕事にしている人でなくても、豊かに生きるためにすごく有意義なこと。

自分の中に「ことば」をたくさん持っていると人生が豊かになる。

新しい「ことば」に出会ってわくわくする自分でありたいし、そういう人生を送れたらきっと…何年も歳を重ねたその先の未来に、成長した自分と出会えるんじゃないか、と思います。


◆くらしアトリエの「見るコラム」、YouTubeで公開中です。ぜひご覧ください。


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