『渋谷音楽図鑑』刊行イベントレポート 【出演:牧村憲一×柳瀬博一×高野寛×柴那典×藤井丈司】 (文:こたにな々)
『渋谷音楽図鑑』刊行記念
牧村憲一×柳瀬博一×高野寛×柴那典×藤井丈司
「戦後日本の都市型ポップスとファッション、その向こう側にあったアメリカ」
-------------------2017.09.29 下北沢 本屋B&B
http://bookandbeer.com/event/20170929_event/
<出演> 牧村憲一(音楽プロデューサー)
柳瀬博一(日経BPプロデューサー)
高野寛(音楽家)
柴那典(音楽ジャーナリスト)
藤井丈司(音楽プロデューサー)
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-音楽とファッションの共有
●1960年代は銀座・みゆき通りをたむろしていた ”みゆき族” と、彼らがしていたアイビールック・ファッション。そのアイビーファッションの代表として流行したブランド『VAN』はフォーク・ソングに協力的で、そうして『VAN』に就職した者もいた。
●1970年代は『ポパイ』を創刊するきっかけとなった平凡出版(現マガジンハウス)が出した『メイド・イン・USA』というファッション誌がアメリカ西海岸のライフスタイルやファッションを紹介。”西海岸ブーム”が起こり、しだいに『シティー・ミュージック』と呼ばれるジャンルが出来る。
牧村憲一:髪の毛の長さで時代を感じる事ができる。ビートルズは耳まで、ヒッピーは肩まで、ディスコはアフロのように(笑)
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-青学生が作ったモノを見つけたに過ぎない。
●90年代の音楽やムーブメントは、ある日突然生まれたわけではない。そこに大きく関わっていたのが ”青山学院” 出身の音楽家達であり、戦後の日本のポップス史に深い関わりをもたらした。
【青山学院大学出身の音楽家として】『バラが咲いた』など60年代に数々のヒット曲を生み出した作曲家の浜口庫之助、日本で最も多くのヒット曲を生み出した作曲家の筒美京平(卒業後、後のポリドールに就職)、その一つ上の先輩だった『ブルー・シャトウ』『亜麻色の髪の乙女』などのヒット曲を生んだ作詞家の橋本淳は青学出身であり、彼らは大学時代にジャズに打ち込み、流行している洋楽を吸収し、後の音楽業界に多大なる影響と功績を残した。
筒美京平という作曲家に憧れて入学した小西康陽は青学内のサークルで、ピチカート・ファイヴを結成する高浪慶太郎に出会う。同じくそのサークルで桑田圭祐が原由子と共にサザンオールスターズを結成。桑田圭祐の三つ後輩には、サザンのバックやピチカートのサポートをつとめ、後にオリジナル・ラブのメンバーとなる宮田繁男も在籍していた。
大学だけではなく高等部にはムッシュかまやつや、在学中に鈴木茂とバンドを結成した林立夫 (ex ティン・パン・アレー)と小原礼 (exサディスティック・ミカ・バンド)も卒業しており、細野晴臣や他のミュージシャン達との繋がりも在学中に生まれていた。
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牧村:物事には助走期間がある。”作った人” は別に居る。80年代・70年代・60年代もそうだったんじゃないか。渋谷を流れる地下水脈のように地下ではもう始まっていたんです。
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-現在の音楽業界が70年代に似ている
牧村:70年代、アーティストはまだアンダーグラウンドな存在で夜に出入りする事でラジオには出れるがTVには出れなかった。CM界にはレコード会社専属作曲家が居るような状態で、それが解けてきたのが吉田拓郎が『富士フィルム』や大瀧詠一が『三ツ矢サイダー』のCMをやった事だった。
それが現在、大手じゃないと音楽番組に出れない、メジャーなものに除けられている感じが70年代の追体験をしているようであの頃の音楽業界に似ている
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-カセットテープの再評価
ストリーミングやデジタル配信が進む中、フィジカルとしてカセットテープの再評価が今されている。
参照画像:Amazon より
● ”のん” がカセットテープでのリリースとして「WORLD HAPPINESS 2017」の会場でカセットテープを販売、限定500部を完売させた。
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参照画像:waltz HPより http://waltz-store.co.jp/
●現在、中目黒に『waltz』というカセットテープ専門店もある。店主の角田さんは『六本木WAVE』での勤務を経て『Amazon』に入社した後に独立して、このカセットテープ専門店を立ち上げたという興味深い経歴の持ち主でもある
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今カセットデッキを持っている、またはテープを聴きたくてデッキを買った本当に限られた人しか聴けないという特別感と、”頭出し” が出来ず曲順通りにトータルで聴くというのが、ゆいつカセットーテープにしか出来ないこと。
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-モノラル録音と現在
牧村:今はデモテープじゃなくて完成形を聴かせないと理解されないけれど、当時のプロデューサー達の頭の中にはアンプがあって、聴きながら頭の中で変換しては「どうしようか」考える事が出来た。
皆は(ステレオ録音の)左右しか分析出来ないけれど、モノラル録音は前後
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●2017年コーネリアスの新譜『Mellow Waves』は、トレモロを利かせて空間を意識させる音作りとして、左右と前後で作られている。
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●同じく2017年真心ブラザーズの新譜『FLOW ON THE CLOUD』はロックンロールを利かせた全編モノラルミックスで、プリプロなしでレッドブルスタジオで一発録りされている。
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-高野寛とフリッパーズ・ギター
参照画像:公式HPより
ゲストとしていらっしゃった高野寛さんが話すフリッパーズとの関係の話
●1988年 8月 渋谷La.mamaでのロリポップ・ソニックとオリジナル・ラブの対バンで高野さんは出逢った。その時小沢健二は丸眼鏡に半ズボンという出で立ちだった。
●1988年 冬 インクスティック六本木で同じくロリポップ・ソニックとオリジナル・ラブの対バンがあり、レコード会社には内緒でオリラブのステージに高野さんが飛び入りで2曲参加した事があった。
●フリッパーズとしてのデビュー後、初ラジオとして高野さんのラジオに呼ぶタイミングで小山田圭吾が交通事故で入院。結果、小沢健二を含む残りのメンバー4人での出演となった。最初で最後の4人出演である。(後、3人は脱退)
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1993・94年が渋谷系のピーク
●1993・94年頃にJ-POPの上位を占めていた。
●当初は『ROCKIN'ON JAPAN』編集長・山崎洋一郎氏が「渋谷モノ」と差別用語として使っていた為、フリッパーズがその仕返しに山崎氏の引き出しの中身を全部見た、という逸話がある。
●当時『ROCKIN'ON JAPAN』に配属されていた『MUSICA』初代編集長の鹿野淳氏の初インタビューはフリッパーズ・ギターだった。
●1995年にクラブサウンドに移行
TOKYO No.1 SOUL SET・スチャダラパー・『DA・YO・NE』や『今夜はブギーバック』など、”ラップ” がランキングに入ってくるようになった。
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-フリッパーズの二人はやり切った。
牧村:解散について諸説あるけれど、フリッパーズの二人はやり切った。3枚のオリジナルアルバムでやれる事は全部吐き出した。はっぴぃえんども3枚だった。
実は・・・
4枚目はチェリーレッド(レコード)と同時発売しようとしていて、その電話を切ったら「フリッパーズ解散しましたよ」という通知が来た。
※チェリーレッド・レコード:イギリスのインディーズ・レコードレーベル。1980年代初頭にネオアコを中心とした作品の発表を行っていた。そこからの同時発売を狙っていた※
牧村:もしも出ていたら、大失敗しただろう...
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(という裏話が最後にありました)
(4枚目がこの世に残されていたのなら、私達はどんな気持ちになっていたのでしょうか)
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●あとがき●
とても素晴らしい夜でした。
とてもとても貴重なお話を沢山聞く事が出来ました。
私の勉強不足で時代背景が分からず説明が足りないレポートになっている部分もあるかと思いますが、そこは『渋谷音楽図鑑』をお読み頂いた上でこぼれ話や補足としてこのレポートを読んで頂けると、あるいはこのレポートから『渋谷音楽図鑑』を読みたくなってご購入頂けたら!私としては幸せです。
著者の御三方のサインが頂けて嬉しかった事や、フリッパーズギターに魂を奪われた者として、プロデューサーの牧村さんにお会い出来た事、最後に少しお話出来た事は光栄以外の何物でもありませんでした!
いつかまた何かの形でお会い出来るように頑張りたいと思いました。
今回は時間がなくてお話されなかった ”美大と音楽” (ゲストの高野寛さんは大阪芸大出身です)の関係についてもまたいつか聞きたいと思いました。
あらためて、とても素晴らしい夜でした。
お読みくださってありがとうございました。
文:こたにな々(ライター) 兵庫県出身・東京都在住https://twitter.com/HiPlease7
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