育児は「明らめ=諦め」を練習し、自分が大切にしたい価値を見直し、ライフバランスを探求する良い機会
7歳と4歳の子供がいます。この7年間で3回ほど慢性疲労・鬱になりましたが、乗り越えることができました。子供達は私が何に価値を感じているのか、とことん厳しく問いだしてくれた、と感じています。キャリアを積まなきゃ、大学院早く卒業しなきゃ、お金を稼がなきゃ、という焦燥感に嫌というほど向き合わされ、「なんで今それをしなくちゃいけないの?」「その仕事は意味があることなの?」と毎日容赦なく問われる修行のような感じでした。
これまでの育児で、大きく分けて2つのライフスタイルを経験しました。一つ目は、育児と仕事・学業の両立。2つ目は、専業主婦的な暮らしです。両極端なライフスタイルを行ったり来たりしながら、幸せやご機嫌を感じる為のバランスを必死に模索してきました。
価値観の軸がブレブレで、いつも「何かが足りない感」がある。仕事も育児もあれもこれもしようとしていつも疲労困憊。挙句の果てに、子どもに対して「忌々しい」「うるさい」「あっちに行ってほしい」「もう嫌だ」「投げ出したい」「泣くな」「寄ってくるな」「お願いだから、一人にして欲しい、私の方が泣きたい」など思ったことが何度もありました。そして、そう思ってしまう自分が恐ろしく、子どもに申し訳なくなり、母親として情けなくなり、それでも疲れる現状から逃げ出したい、という思考のループに嵌っていたこともありました。
この罪悪感、居心地の悪さは、「何かが足りない」という私の恐怖心に向き合い、優先順位を付け、「いま」「ここ」で起きている景色や現象を感じて楽しむ、という心の練習をさせてくれました。
当時の辛かった気持ちを書いたノートを見つけたので、当時の心の葛藤と、どう乗り越えたか、私の個人的な体験・感想ですが、シェアしたいと思います。孤立しがちな育児をされている皆様、お疲れ様です。自分自身に優しく接することが出来ますように。
3年前に書いた「子供可愛くない」というタイトルのノートから分かる当時の心境:休養と育児に集中できなかった
567の時期に書いていたノートを見つけました。ソーシャルディスタンスに孤立しがちな育児、加えてフィンランドの寒くて暗い長い冬と、自分のことは自分でやれ的な超個人主義的な文化が、当時の私を疲弊させ、相当苦しめていたと記憶しています。
今思えば、単純に睡眠不足、休息不足でした。
助けてくれる大人手が不足しているのなら、子どもと一緒に昼寝したり、家事も手を抜いて、たくさん寝れば良かった、と今では思います。しかし、当時の私は「仕事をしていなのだから、家事くらいちゃんとしよう(理想が高い丁寧な暮らし)」、「子供が寝てる間に仕事をしよう、将来のキャリアに繋げるために勉強しよう」と思って、ヘロヘロの疲れた身体に鞭打っていました。丁寧な暮らしと勉強を心から楽しめるなら良いですが、ほとんどの動機は「生産的な人間にならなければ」という恐怖心であることが多かった気がします。
心境①:家族の太陽になれない、逆に曇り・雨になってしまうのが辛い
「母親は家族の太陽」とよく言いますが、当時の私は気分が落ちていて、家庭の太陽どころか大雨大嵐になっていた日が多かったです。子供の前では負の感情を見せないように心がけても、子供達は親の感情に敏感。必ず感じ取っています。我慢していた感情を夫に爆発してしまうことが度々ありました。彼は仕事を終えて家に帰ってきても、精神的に休めなかったでしょう。
子供達の心身の健康の為にも、家族皆が精神的に休める家庭環境にする為にも、自分の機嫌を優先しようと心がけました。しかし、実際にはご機嫌でいることが難しく、不満が多いことに苛立ちと罪悪感を感じ、とても苦しかったです。
心境②:子育ての孤立感が半端なく辛い
自分が不機嫌になる度に、私は何に不満なのか、自分の心に問い直していました。一つ明白に嫌だったのが、独りで子育てしている感。「子供は社会の宝、社会への投資」として認識され、地域で地域の子供達の面倒を見てきた時代を、私自身が子供の時に体験していたので、親だけに育児の負担がかかる現状に苛立っていました。567のソーシャルディスタンスも精神的に悪影響しかなく、物質的に生存することに何の意味もない、誰かと地域と精神的に繋がっていたい、と強く思いました。
赤ちゃんのお世話中は、どうしても職場や大学といった組織的な場所と距離ができやすくなります。特に567では多くの活動がオンラインに移行しました。私はオンラインでの交流には正直満足できませんでした。逆に、オフラインで、お互いの顔いろを見て、「赤ちゃん可愛いね!」「お疲れ様」「このお茶美味しいね」といった交流を渇望していました。
また、567前の他人との交流の場が、いかに仕事や大学に限られていたかを思い知らされました。損得勘定関係なく、人と繋がる場について考え始めるきっかけになりました。そこから、精神衛生のために、コミュニティ作りに投資することを決意しました。(後に、修士論文の研究課題になる)
心境③:「こうあるべき」が苦しい。でも、「こうありたい」に集中できない。
コミュニティ作り、ご近所付き合いに力を入れるぞ!と決意したものの、「働いていないと怠け者」「お金を稼いでいないと社会の役立たず」「怠け者認定されたら相手にされない」といった考えがこびりついていて、恐怖心と焦燥感がいつも隣にありました。
この恐怖心、焦燥感は、長女の妊娠・出産・育児中にスタートアップで起業家になるチャンスにしがみつき、バリバリ働くエネルギーをくれました。しかしその結果、夫に向かい合う時間がなくなり、逆に彼にストレスをぶつけ、サンドバッグのように扱ってしまいました。一番の理解者で、今まで支えてくれてきた夫を大切に出来ていないことに気付き、子ども、夫婦関係、仕事の全てを両立できないと諦めて、立ち上げた会社を辞めました。
家族のWellbeingを優先した決断をした過去の自分を褒めてあげたい。あの時仕事にしがみついていたら、家族はめちゃくちゃになっていたかもしれません。しかしその後も、「キャリアを積んでいる」といった、社会的ステータス、社会的記号への執着がなかなか消えず、苦しみました。それと同時に、育児や、幼児教育、看護、掃除等の仕事が、給料の低さから見ても社会から感謝されてない感があるのに、憤りを感じました。
この心の葛藤は、私が心から自分の時間とエネルギーを投資したい価値は何なのか、見つめなおす機会になりました。
心境④:「見て!見て!」がウザい、「いまここ」に集中できない
色んな価値の狭間で宙ぶらりんになる居心地の悪さ、罪悪感、社会的記号への執着心、焦燥感から、子どもの絶え間ない「見て見て攻撃」に機嫌よく対応できませんでした。
苦しさの打開策
ある時、子どもといると頭痛がして、身体が拒絶してしまうまでストレスが増えてしまいました。これでは本当にヤバい、と思い、「Happy mother, Happy family」、家庭の太陽のような存在になることを目指し、自分自身をどれだけご機嫌の状態で保つか、という課題を最優先することに決めました。
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対策①:趣味の時間を意図的に、ごり押しで作る
一番効果があったのが、合気道に通い始めたことです。合気道のお陰で、3年前の3度目の鬱から回復することができました。最初は月に1回、徐々に週に1回の頻度で通い、今では週に2,3回稽古に行っています。仕事や学業、家族のことをこれっぽっちも考えず、頭をからっぽにする時間、自分の心と身体のみを気遣う時間を意図的に作ってから、少しずつ気持ちが楽になっていきました。
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対策②:助けてもらう。相手の気持ちを無駄に分析しない。お礼をきちんとする。
合気道に通う時間を作るのに、夫や義母の助けを借りる必要がありました。最初は彼らは面倒くさそうで、その態度を見て何度も頼む気が失せてしまいましたが、頼む罪悪感よりも自分の機嫌を最優先し、趣味時間を作るのに協力てもらいました。
合気道からご機嫌になって帰ってくる私に気が付いた夫は、積極的に合気道に行く時間を作ってくれるようになりました。彼曰く、「不機嫌な妻が家にいるより、2,3時間家を空けてもご機嫌で帰ってきてくれる方が皆にとって良い」とのこと。彼が、趣味の時間を持つことの重要性を子供達や義母に話してくれることで、今では皆から気持ちよくサポートを受けています。
心身ともにスッキリすることで心の余裕も出来て、周囲の人達にお返しをできるようになりました。夫とは、お互いの自由時間・趣味の時間(彼はオンラインゲームやジョギング)を交互に設けることが習慣化しました。
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対策③:趣味の幅を増やす
かといって、合気道は自身と家族が健康な時にしか行けません。風邪が流行る秋・冬は、合気道に行けないことが多くイライラしました。そこで、体調や気分に合わせて趣味リストを用意すると良いかもしれません。
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対策④:助けを待たず、他人を招く
助けあえるコミュニティがないなら、作ればいい。
567のソーシャルディスタンスに精神的に参った私は、近所で目に見える人に声をかけまくって、コーヒーや夕食に誘いまくりました。4年経った今、徒歩1分圏内に友達が増えました。アパートの上下、左右のおうちを行き来してご飯を一緒に食べる関係性を作ることができました。育児の大変さは変わらなくても、おもてなしにさらにエネルギーを使っても(テキトーさを覚えた)、孤独感が減り、幸福感が増える。仲良くなった70代80代のおばあさんたちからは苦労話や人生の知恵をシェアしてもらえるようになり、癒されています。
総括:過去の疲れていた私へのアドバイス
★自分の欲、「こうありたい」「こうしたい」を明らかにして、持っている条件を冷静に判断し、優先順位を付けよう。今出来ないこと、今しなくても良いことを潔く諦めよう。
★「明らめる=諦める」、言うは易く行うは難し。だけど、捨てても良い執着を手放すと、本当に心が楽になる。育児中は、それを見分ける良い機会。
★苦しさの背景に社会の構造的な問題もある。個人主義社会、核家族化、コミュニティの希薄化、生産性・効率重視の社会。これは、育児を孤立させ、キャリア・学歴等の社会的記号への執着心を作り、専業主婦的な生活、子育てに集中することへの罪悪感の原因になっているのではないか。
★ライフスタイルの異なる他の女性達と自分自身を比較して傷つかないで!皆それぞれ多様な背景があって、それぞれ異なる選択をしているだけ。そのまま尊重しよう。
★心の平安、機嫌を第一優先しよう。
妊娠中、育児中に、「今日も何も生産的なことをしなかった(;_;)」と思わないで。細胞分裂めちゃくちゃしてる。未来の大人を育てている。自分と子供の心身が健康でいるだけで、十分社会へ貢献しているよ!
★子供が小さいうちはたくさん休もう!たくさん寝よう!子供と一緒に昼寝しよう!睡眠不足は後に響くよ!寝るだけで、気分が大分楽になるよ!
★子供の目線で世界を見直すことが出来る機会に感謝し、楽しもう!子供と一緒に美味しいご飯を食べ、自然を愛でよう。
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過去の私自身に対して、精神的に参っていて家族に迷惑をかけた時もあったけど、心から「頑張ったね」と労わっている今の私がいます。過去に行ってやり直したいか、と問われたらそうでもない。これで良かったと思う。未来の自分も、今の自分に対して「未来は大丈夫だよ、頑張ってるね」と思ってくれている、と考えてみるきっかけにもなりました。(進撃の巨人のエレン的な)
生活を楽しむ工夫や技術を、これからも学び続けていきたいです。
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