じわじわ効く広報って?インナーマッスルを鍛えた3年目の取り組み
こんにちは。クラシコム広報の馬居(うまい)です。
上場を機に立ち上げたクラシコムの広報チームも、3年目を迎えました。
広報とはなんぞや?を学び、取材対応・プレスリリースなど、いわゆるメディアリレーションの基礎を作った1年目。
メンバーが増え広報がチーム化するとともに、初めてのテレビドキュメンタリーの取材や、foufouのグループジョインなど、降ってくる機会に必死で対応した2年目。
そして、3年目となる今年は、やっと上場やテレビ放映の余波も落ち着き、自分たちらしい広報の形を模索できたような気がします。
それは、すぐに効果は出なくとも(出るにこしたことはないですが...)、小さな積み重ねが大きな基盤になる、長い時間をかけてじわじわと信頼を積み重ねる広報です。
言い換えるなら、インナーマッスルを鍛えるようなものかなと思います。目に見えてムキムキではないけれど、ぎゅっとおへそに力が入って、少しつっつかれたくらいでは傾かないような、そういう力をサポートできる存在になりたい。広報チームとして、そんな想いを胸に取り組んだ一年でした。
自己紹介のアップデートがインナーマッスルに
では、信頼を積み重ねるためには具体的にどうすれば良いのでしょうか。それは、自分たちが何者なのか、どういう想いで何をしているのかを丁寧に伝え続ける、いわば「自己紹介」の連続だと考えています。この考え方については1年目の振り返りでも触れました。
さらに3年目となった今年は、「自己紹介」をさらに多様な角度から行い、成長や変化をリアルタイムで察知しながら広く深く伝えることにチャレンジしました。つまり、自己紹介の「アップデート」のルーティーンを整え、ブラッシュアップした一年だったなと思います。
ヒアリングする体制をつくり解像度をあげる
自己紹介をアップデートしていくためには、社内で何が起こっているかを常に知る必要があります。
広報を始めたばかりの頃は、発信については代表の青木と二人で考えることが多かったのですが、広報の存在が定着してくると、少しずつ社員たちから新たな取り組みを出す前に共有してもらうことが増えていきました。
さらに、特に広報が協力できることが多い部署に関しては、何かの取り組みが起こる前の日常から、チームが何を考えているのか、どこを目指しているのかがわかるように、情報共有が定例化されていきました。
隔週なのか、隔月なのか、3ヶ月に1回なのか、間隔はそれぞれですが、人事チーム、商品開発チーム、BtoB事業チームなど、それぞれ定期的にヒアリングしていくことで、社内の解像度がさらに上がっていきました。
自己紹介をアップデートするタイミング
そんなふうに情報収集の体制はできてきたものの、それを社外に伝える言葉に変換して、自己紹介をアップデートするのはどんなタイミングなのか。それらも段々とパターン化し、大きく3つのタイミングで発信をするようになってきました。
(1)告知するべきイベントがある場合
まずは当たり前に、ステークホルダーに周知したいイベントがある場合です。ただこれも、普段から情報を集めて解像度をあげておくことで、自己紹介のアップデートにつながっていきます。
特に、2023年にクラシコムにグループジョインしたfoufouの場合、クラシコムのステークホルダーの方々にとって未だ知らないことがたくさんなので、プレスリリースには本題のニュース以外に、既出のリリースのまとめ情報や、新たに興味を持っていただけるような最新情報を盛り込むようにしました。
(2)数値を達成した場合
もうひとつ言葉にする機会となるのが、数字の達成です。今年は、スマホアプリ400万DLとYouTube60万人達成でリリースを出しました。
これも定番の広報タイミングではあるのですが、400と60という数字は、一見キリが良いのだろうか?と悩んでしまったりもします。
ただ、YouTubeやスマホアプリなど、外部の方にとても興味をもっていただいているトピックは、自己紹介がアップデートされないと、広報も社員も古い情報で発信し続けることになり、いつ来るかわからないアピールのチャンスに最新の情報でアウトプットをすることができません。
すべてのことを、細かにまとめることは不可能ですが、外部的にも興味を持っていただけているものに関しては、区切りの数字できちんと現状をまとめていくことがとても大事になります。
今年もYouTubeにおいては、改めてその歴史をまとめながら、私たちの特徴をリピート視聴約65%、45歳以上の視聴者56%超という数字や、近年の取り組みなど、新たな情報を重ねて自己紹介をアップデートしました。
スマホアプリにおいても、単純にダウンロード数が増えているのではなく、新規ダウンロード後の購入金額も上がっているという情報を新たに重ね、好調の背景にある効率的なマーケティング体制の強化をお伝えしました。
(3)採用
もうひとつ、私たちが自己紹介のアップデートをする大きなモチベーションにしているのは採用のタイミングです。
採用は、単純に注目していただくこともとても大事ですが、入社後のミスマッチを防ぐために、取り組む仕事を正確に共有することが大事です。
たとえば、「北欧、暮らしの道具店」のMDチームの仕事は、商品の買い付けをイメージされることが多かったのですが、実際は定価消化率95%を達成するほど正確なマーチャンダイジングを担うというとても大事な側面も持っています。この点を発信したいという人事チームからの提案でできたのがこちらの記事です。
応募者の皆様にこの記事を読んでいただいたことで、入社後の仕事の解像度が上がるとともに、新たな層の方々からの応募にもつながった実感を持っています。
この経験は、採用広報がうまくいったケースとも言えるのですが、それ以上に私たちにとって大きかったのは、実態に沿った言葉で自己紹介をアップデートできたことでした。
ただこれも、何の目的もなくできたわけではなく、採用募集という切実な目的があったから実現できたことでした。そんなふうに、採用タイミングは広報にとって言葉にするチャンスだという認識を持ち始めていた今年、最も力を入れたのは人事チームの採用広報でした。
組織開発を経営と共に一気通貫で担当する人事企画室。そのチームメンバーを募集するにあたって、そもそもクラシコムとはどういう組織なのかをプレスリリースとしてまとめ、あわせて100名組織になるまでの足跡を振り返るオンライントークイベントの告知を行いました。
実は、クラシコムにとって働き方や組織のあり方は非常に大切で、きちんと言葉にしたいと想いながらも、いざ取り組んでみると、未だ模索中のことが多くまとめることが難しいと感じていました。
それでも、言葉にしたいという想いと採用というモチベーションに重なることで、えいやぁとまとめることができました。
結果として、リリース内で告知しているトークイベントには、組織開発という特定のテーマにも関わらず、300名を超える申込みが集まり、なんと170名以上の方が採用応募してくださり、無事採用が決まりました。
さらに、言語化したことで、いくつかのメディアさんにも人事企画チームの仕事をお話することができ、自分たちではできなかった宝のような自己紹介をどどどっと増やすことができました。
このほかにも、採用広報については、また別の機会で色々とやってきたことをまとめられたら良いなと思っています。
発信をブラッシュアップ、バリエーションを増やす
そんなふうに、自己紹介のアップデートがサイクル化してくると、今度は果たしてそれはプレスリリースやテキスト記事を作ればいいのだろうか?という想いが出てきました。
私たちは、日常的にテキストの情報だけを得ているわけではなく、写真、動画、音声、イベント等々、さまざまな機会で触れます。北欧、暮らしの道具店も同じです。テキストだけではなく、動画、音声、リアルイベント等さまざまな形でつながりを作り続けていきます。広報だけが発信方法がテキストだけ、というわけにもいかないだろうな、と思うようになっていきました。
そこで、広報としても新たな媒体を試していくことにしました。
(1)ポッドキャストをつくってみる
最初にチャンレンジしたのは、ポッドキャストです。
何かもう一歩新卒採用をブラッシュアップしたいという想いや、これまで幾度となく採用希望者から望まれていた「社員の生の声が聞きたい」という要望に答えたいという人事チームの想いから生まれた企画でした。
「自分はクラシコムに合っているかも?」と思ってもらえるような、逆に違うかな?と思っても、こんなふうに働いている人たちがいるということが何かの希望になるように、就職活動において、自分にフィットした選択肢に出会えるための、きっかけになるような番組にしたいという思いで作ってみました。
結果としては、現在までに8000回以上が再生されています。この数字が大きいのか小さいのかはわからないのですが、来年の内定者の方に話を聞くと、なんとこのポッドキャストが決め手になったとのこと。生の声の強さを実感しました。
そして、実はこの再生回数は2024年12月現在のもので、今年の新卒採用活動の際には、実はこの半分もありませんでした。つまり、じわじわ着実に再生回数が増えており、来年以降の学生さんとの接点になっているということがわかります。これもきちんと、新たな自己紹介になってくれたなと思っています。
(2)動画をつくってみる
今年、もう一つチャレンジしたのは、動画制作です。
私自身も動画を見ない日はないですし、「北欧、暮らしの道具店」にとってYouTubeチャンネルは非常に重要な存在で、もはやお客様の中では「北欧、暮らしの道具店」はユーチューバーだと思ってた!とおっしゃる方もいるほどです。
そんな中で、私たちも広報の発信のひとつとして動画もあれば…、と思うようになってきました。ただ、何から始めたら良いのか、さっぱりわかりません。そこで、わたしたちはこんなふうに模索をしていきました。
STEP 1 プロの方にお願いしてみる
まずは、ちょうど控えていたオフィス移転を良い契機と考え、プロの方にオフィス動画を依頼し、広報チームはディレクションとして入り、一緒に企画を詰めながら、動画制作の過程を学んでみました。
まずは「作れた!」「特に嫌なことは起こらなかった!」という第1ステップ達成です。
STEP 2 自分たちで撮影/編集してみる
そして次は、いよいよ広報チームが主体で撮影をしてみました。テーマに選んだのは、foufouのグループジョイン1年を記念した代表同士の対談動画でした。
「北欧、暮らしの道具店」で動画制作を担当しているスタッフに機材を借り、出演者のマールさんには、普段から自ら動画撮影・編集をしているノウハウからアドバイスをもらいながら、色んなものを見よう見まねで作り上げました。
出来上がった動画がこちら
どうにかこうにかではありますが、自分たちだけで作るステップもクリアしました。
STEP 3 作業を簡易化してみる
さらに、もっと気軽に撮影ができないかと考え、次は取締役CTO就任のニュースに合わせた動画をスマホ撮影で作ってみることにしました。
スマホでも、大きな問題なく作ることができました。
STEP4 簡易版の動画を作ってみる
スマホで撮影できるとわかると、途端に気持ちが楽になり、毎年続けている社史取材においても、本編はテキストで出るけれど、一応動画も撮っておこうと気軽に撮影してみることにしました。
そして、試しに、予告編のようなショート動画にしてみると、社内ではとても好評。また、作業的にも、ロング動画に比べて圧倒的に負担が少ないことがわかりました。
こうなってくると、ショート動画、もっと作ってみたいね!と数珠つなぎに次のTODOが見えてきています。未だ動画は大きな成果にはつながっていませんが、鍛えるべきマッスルを見つけたような気分です。
自分たちがもつ信頼感をつなげて広げて
こうやって振り返ってみると、今年も着実に歩みを進められた気がしていますが、広報活動というのは、本当にほとんどのことは、大きな返りがあるわけではありません。じわじわと効いていくことを信じて、効いてきたシグナルを見逃さずにキャッチするしかありません。
それでも、私たちがあれこれ挑戦できるのは、私たちにはまだまだ言葉にできていないことがあるし、それは今も生み出され続けていて、だから自己紹介をし終えることはないと思えているからだなと思います。
また、それらのすべてがお客さまに真摯に向かっていて、それがミッションである「フィットする暮らし、つくろう。」に繋がっているという信頼が、広報チームにあるからだと思います。
こういった、広報チームが感じている信頼感を、ステークホルダーの方々に共有し、新たな層の方々にも「この人たち面白いかも?」「同じような事を考えてるな」「自分とは違うけど、こういうのもありだよね」とポジティブな興味を安心して持っていただけるような信頼感に変えていけたらと思っています。
広報はちょっとわかりにくくて気の長い仕事ですが、引き続きコツコツ頑張ろうかなと思っています。
クラシコムの2024年を振り返る社史もぜひご覧ください。
■クラシコム広報のアウトプット一覧
▼プレスリリース一覧:メディアのみなさんへの自己紹介をアップデート
▼note:社内の小さな気付きをアウトプット
▼YouTube:動画で情報収集をされる方に向けたチャレンジ
▼ポッドキャスト:学生さんに向けたチャレンジ
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