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鍼灸師になろうと決めたNYでの出来事

「さちこ、今度のお休み一緒に鍼灸院行こうよ!」
スペイン人のイリナはにこっと微笑むと口角の上にエクボが出る素敵な女性。私より10上でなんでも知っているお姉さん、自宅に遊びに行くと私の大好物になったスペインオムレツをよく作ってくれた。日本映画レンタルしたから一緒に観よう!色々気を遣ってくれていたやさしく美しいお姉さん。
会話中に何度もシー。と頷く。

「え?鍼灸治療?私痛いところもないし怪我とかもないし、、、」
「だるさとか、頭痛とかなんでもいいよ、ないの?」
「そんなことも治療できるの?」
「もちろん!私は偏頭痛持ちだから、ちょっとケア受けたいの。」
そういえばこめかみあたりをよく触っていた仕草を思い出す。

興味は完全にそそられ、何もなければ待合室で待っていればいい。と言われ、流れに身を任せついていくことにした。

NYのチャイナタウンの一角にある施術室。ガラスの入口を入ると漢方ルームがあり、その奥に通され、受付に導かれた。
あなたはトリートメント受ける?と受付のお姉さんに尋ねられ、
「はい!」
応えてしまった。
チャイナタウンの鍼灸院なので、中国の方に施術されると疑ってもみなかったが鍼灸師の見た目は完全にアメリカの方であった。
早速イリナは慣れている様子であっという間に隣の個室に消えてしまった。

問診シートに書き込み、
「何か不調や、気になるところはありますか?」と尋ねられ、
そんなにというか思い当たる項目がないんだけど、鍼灸治療を体験したいという旨と、当時生理周期なんて気にしたことはなかったんだけど、イリナと鍼灸院に向かう会話中にメンションされた”不順とやら”を伝えてみた。厳密に言ったら不順ではなかったと思うのだけど、20代前半なんて、生理痛がひどくなかったらあまり気にせず周期を迎えている印象だった。

施術ルームに移動し、患者着に着替えベッドに横たわる。
仰向けの施術は、当時の私にとってとても衝撃的で、この経験が、私を鍼灸師にさせてくれたんだと確信している。
足に鍼を受けたときに、経絡というものは知らなかったのだが、下腹部に温かさを感じ、施術者に尋ねた。
「あの〜、すいません。お腹の辺りに何かしましたか?あたたかくというか、何か感じるんですが。」
「いえ、足に鍼をしたんですよ、あなた、経絡がわかる体なのね。」
「(なんだそれー???)」
心地よいし、なんだこれは〜緊張感は持ち合わせておらず無心になり身を委ねた。

帰り道友人にばったり遭遇、
「なんだか、さちこ雰囲気違うな、どうかしたの?」
「体が軽いんだよね、鍼灸院に行ってきたんだけど、今まで受けたことがない感覚。」
そう、その夜から1週間以内だったと思う。
日本にいる家族に国際電話をかけて、鍼灸師になろうと思う、と伝えたんだった。


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