備前焼ギャラリー倉敷一陽窯の2階喫茶で遭遇した奇蹟〜最高のマッチングのシンクロニシティ〜
画像は、備前焼ギャラリー倉敷一陽窯2階喫茶コーナーの抹茶・生菓子セットです。
生菓子は菖蒲色で初夏の風情になっています。抹茶は、微細な泡が均一に覆った、いつもの洗練された仕上がりです。抹茶をいただくと、とてもまろやかで柔らかく、慈愛に満ちた味わいです。渋みは、最後の一口に、ほのかに香る程度でした。
・・いつもと何かが違う・・。
茶碗をよく観ると、自然釉が内側にもたぷっりとかかって、表面が滑らかに焼き上がったものでした。
滑らかな茶碗は、茶筅(ちゃせん)が触れたときの振動が細かくなり、まろやかで優しい味わいになるのかもしれません。
1階の売り場に降りて、店主の木村道大さんに茶碗の特徴を伝えると、該当の茶碗は、一陽窯の開祖である祖父の木村一陽の作品だと言うことでした。
ちょうど、抹茶をいれてくれたマダムの恵子さんが1階の売り場に降りてきたので、いつもと何か違っていたのか? と尋ねると、抹茶はいつもと同じ、京都辻利のパッケージ製品だったそうです。
・・そうすると、味わいの変化は、茶碗の力か、筆者の体調によるものだったのか・・?。
念のために、茶筅(ちゃせん)はどうだったのかと尋ねると、きょうは特別に伝統工芸師が制作した茶筅を使ったとのことでした。茶筅は、消耗品ですが、国内で作ってくれる人が少なくなったので、伝統工芸師による繊細な作りのものは、お店では、まれにしか使わないとのことでした(美術館が、所蔵する国宝を展示できる期間に制限があるのと同じです)。
お店で使う茶碗は、順にローテーションして使っているそうです。
・・きょうの抹茶の最上の風合いと味わいは、木村一陽による茶碗と伝統工芸師の茶筅とが意図せずに、たまたまマッチングして、生まれたものだったのです!
今、流行のガチャじゃないですけれども、ギャラリー併設の喫茶室というものは、こういう奇蹟に出会える可能性があるのですね。
そして何よりも、自分の感受性を信じることができて、とても幸福な機会でした。
(2023年5月14日)