見出し画像

エゴン・シーレ展に行ってきました〜我が家の小さな俳優達による絵画世界の再現〜

東京・上野公園の東京都美術館では、「レオポルド美術館 エゴンシーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」(2023.1.26~4.9)が開催され、会期が終盤を迎えていました。

花見のシーズンを避けて、会期最後の週末に東京行きを決行しました。4月8日の朝5:34分発の電車でJR倉敷駅を発ちます。

早朝のJR倉敷駅

9:30にJR上野駅に到着し、かつて大学に所属していた頃、東京出張のときに行きつけだった喫茶室ルノアールのアメ横店に向かいます。

喫茶室ルノアールのアメ横店(店は地階にある)

さっそく、豪華なモーニングセットをいただきました。

喫茶室ルノアールのモーニングセット

店内には、ルノアール作「ルーラン・ド・ギャレットの舞踏会」の原寸大の複製画が飾られています。

店内に飾られているルノアール作「ルーラン・ド・ギャレットの舞踏会」の原寸大の複製画

季節の気分を先取りして、我が家の芸能事務所のメンバーで再現しました。

ルノアール作「ルーラン・ド・ギャレットの舞踏会」の再現
(陶人形制作:ヤマイチアツコ・ささきようこ・安原明美)

この、空気感はいかがでしょうか?

上野公園に入ると、右手に世界遺産の国立西洋美術館が見えて来ます。

国立西洋美術館

さらに奥へと進むと、エゴン・シーレ展の看板がありました。

上野公園

もうすぐ、会場です。気持ちが高まります。

そうして、ついに会場の東京都美術館に到着しました。

会場の東京都美術館

展示会場を三巡して、名残惜しく上野公園を後にしました。

向かったのは、かつて出張の際によく立ち寄った、神田神保町の古書店街です。JRお茶の水駅から、なだらかな坂道を下って到着します。

新刊書は、すずらん通りの東京堂書店を覗くのが定番でした。

すずらん通りの東京堂書店

食事は、近くのキッチン南海によく通ったのですが、最近閉店してしまいました。テレビ番組で、元従業員の方が近くに移転してお店を再開したと聞いていたので、懐かしい味を求めてお店に向かいました。

移転オープンしたキッチン南海

お昼を大分過ぎていましたが、かつてのようにお店には列が出来ていました。
注文したのは、キャベツが盛られたいつものカツカレーです。懐かしい褐色のルーです。

カツカレー

昼食を堪能して、皇居・千鳥が淵方面に向かいます。ランドマークのパレス・ビルを過ぎ、橋を渡ると東京国立近代美術館です。

東京国立近代美術館

エゴン・シーレ展でお腹がいっぱいでしたが、開催中の特別展「東京国立近代美術館70周年記念展 重要文化財の秘密」と常設展をはしごし、帰途に着きました。

受け取った情報を理解できたかどうかを確かめる方法には、他の表現に置き換えて他者に伝える仕方があります。
そこでエゴン・シーレ展で受けた感銘を、我が家のテディベア事務所の俳優達に再現してもらいました。

まずは、代表作「ほおずきの実のある自我像」です。

エゴン・シーレ作「ほおずきの実のある自画像」1) 1912年レオポルド美術館・蔵

小道具のほおずきは、寂鉄青ゐ、さんによる軟鉄製のペン立てで表現してみました。

テディベア制作:石原路子 ペン立て制作:寂鉄青ゐ

この空気感はいかがでしょうか?

なお、今回は作品が来日していませんが、ほおずきの実のある自画像と対になっていて、エゴン・シーレの恋人ウォーリーを描いた「ウォーリーの肖像」も再現してみました。

エゴン・シーレ作「ウォーリーの肖像」2) 1912年レオポルド美術館・蔵

主演は、海野千尋さんによる陶布人形に友情出演してもらいました。

陶布人形制作:海野千尋  緑の酒杯制作:岡島光則

この空気感はいかがでしょうか?

第3弾は、「ストライプシャツの自我像」です。この作品も来日を果たしていませんが、エゴン・シーレの人柄を表した重要な自画像なので再現しました。

エゴン・シーレ作「ストライプシャツの自我像」3) 1910年レオポルド美術館・蔵

再現はこちらです。

テディベア制作:石原路子

この空気感はいかがでしょうか?

第4弾は、「叙情詩人(自我像)」です。

エゴン・シーレ作「叙情詩人(自我像)」4) 1911年レオポルド美術館・像

再現には、友情出演として、神崎勝典さんによるフルートを吹くコルク人形に登場してもらいました。

コルク人形制作:神崎勝典

この空気感はいかがでしょうか?

第5弾は、「黒い花瓶と拡げた指の自画像」です。

エゴン・シーレ作「「黒い花瓶と拡げた指の自画像」5) 1911年レオポルド美術館・蔵

背景の黒い花瓶には、小島陽介さんによる伊賀焼の花器を用いました。

テディベア制作:石原路子  花器制作:小島陽介

この空気感はいかがでしょうか?

ここで少し箸休めです。

第6弾は、未・来日の「しかめっ面の自我像」です。

エゴン・シーレ作「しかめっ面の自我像」6) 1910年 レオポルド美術館・蔵

倉敷美観地区・ギャラリーメリーノに訪れた際に、マダムの清水繁子さんからいただいた無農薬栽培の人参に作品との相同性のインスピレーションを得ました。

採れたての人参

くすっと笑ってもらえたら嬉しいです(^o^)。

再現は、まだまだ続きます。

エゴン・シーレ再現シリーズ第7弾として「闘士」を再現してみました。

エゴン・シーレ作「闘士」7)  1913年 個人蔵

再現には、俳優が熱演してくれました。

テディベア制作:石原路子

テディベアは、動かせる関節に制限があるので、かえって人物の力みをよく表現できました。

この空気感はいかがでしょうか?

エゴンシーレ再現シリーズ第8弾として「背を向けて立つ裸体の男」を再現してみました。

エゴン・シーレ作「背を向けて立つ裸体の男」8) 1910年 個人蔵

俳優が背中で演技力を魅せてくれます。

テディベア制作:石原路子

この空気感はいかがでしょうか?

エゴンシーレ再現シリーズ第9弾として「母と子」を再現してみました。

エゴン・シーレ作「母と子」9)  1912年レオポルド美術館・蔵

2体の俳優が渾身の演技をします。

テディベア制作:石原路子

この空気感はいかがでしょうか?

第10弾として「縞模様のドレスを着て座るエーディト・シーレ」を再現してみました。

エゴン・シーレ作「縞模様のドレスを着て座るエーディト・シーレ」10) 1915年 レオポルド美術館・蔵

エーディト・シーレは、エゴン・シーレの妻となった人です。俳優がエーディトをしとやかに演じます。

テディベア制作:石原路子

俳優の表現力は、いかがでしょうか?

エゴンシーレ再現シリーズ第11弾として「カール・グリュンヴァルトの肖像」を再現してみました。

エゴン・シーレ作:「カール・グリュンヴァルトの肖像」11)  1917年 豊田市美術館・蔵

カール・グリュンヴァルトは、エゴン・シーレの叔父で、支持者となってくれた人物です。

テディベア制作:石原路子

俳優が、人物の人柄がにじみ出るように演じてくれました。

この空気感はいかがでしょうか?

エゴン・シーレ再現シリーズ第12弾として「悲しみの女」を再現してみました。

エゴン・シーレ作「悲しみの女」12)   1912年 レオポルド美術館・蔵

モデルは、分かれた恋人ウォーリーで、背景の人物は、エゴンシーレであるとされています。ウォーリーは赤毛で、エゴンシーレは黒髪だったので、二人の頭髪の色が入れ替わっています。二人の情念の絡み合いを2体の俳優が熱演します。

テディベア制作:石原路子  画中画制作:田沢千草  赤い花のブローチ制作:三浦奈巳

画中画は、田沢千草さんによるもので、シルクの赤い花のブローチは、三浦奈巳さんによります。

この、二体の俳優と、小道具とが重なり合って醸し出す、空気感はいかがでしょうか?

エゴン・シーレ再現シリーズ第13弾として「自分を見つめる人Ⅱ(死と男)」を再現してみました。

エゴン・シーレ作「自分を見つめる人Ⅱ(死と男)」13) 1911年 レオポルド美術館・蔵

2体の俳優達が迫真の演芸をしてくれます。

テディベア制作:石原路子

この空気感はいかがでしょうか?

続いて、静物画へのチャレンジです。

エゴンシーレ再現シリーズ第14弾として「装飾された背景の前に置かれた様式化された花」を再現してみました。

エゴン・シーレ作「装飾された背景の前に置かれた様式化された花」14) 1908年 レオポルド美術館・蔵

平面的に、紫色に塗られた葉は、岡島光則さんによる陶製の小物入れで表現しました。小物入れの蓋には、ちょうど金箔がはってあったので、絵の背景の金箔に当てはめました。花は、天野智之さんによる備前焼のマグカップの模様で表してみました。

小物入れ制作:岡島光則  マグカップ制作:天野智之

この空気感はいかがでしょうか?

いよいよ最後に、第15弾として大作「母と二人の子どもⅡ」を再現しました。

エゴン・シーレ作「母と二人の子どもⅡ」15) 1915年 レオポルド美術館・蔵

絵の再現に用いたのは、倉敷でアート的な作陶する3人の作家 、三宅玄祐さん、岡島光則さん、濱田伸一さんによる作品です。

陶器制作:三宅玄祐・岡島光則・濱田伸一

中央の三宅玄祐さんによる緑色の織部の釉薬を掛けた花器が、母親に相当し、中心で安定感を与えています。左の岡島光則さんの酒器は松葉のような緑色で、左の子どもの着衣と一致しています。右側の濱田さんのピッチャーは、3人のうち唯一生気のある子どもの頭部を象徴します。

この要素的な空気感の重なりはいかがでしょうか?


番外編
芸術文化都市倉敷の街を散歩すると、そこかしこにエゴ・ンシーレ作品が潜んでいるのに気付きます。

まず、出会った風景は、「死と乙女」です。

エゴン・シーレ作「死と乙女」16)  1915年 レオポルド美術館・蔵
倉敷市稲荷町界隈

赤い建物と黒い建物との関係が、画中の二人の人物の絡みに見えて来ました。

この空気感はいかがでしょうか?

続いては、出会った風景は、「スカートを上げた黒髪の少女」(上部分)です。

エゴン・シーレ作「スカートを上げた黒髪の少女」(上部分)17) 1911年 レオポルド美術館・蔵
倉敷市阿知界隈の路地

くすんだ壁の建物とその連なりが、少女の面影に見えて来ました。

この空気感はいかがでしょうか?

さらに裏路地を散歩していると、「オレンジ色のドレスでひざまずく女」と出会いました。

エゴン・シーレ作「オレンジ色のドレスでひざまずく女」18) 1910年 レオポルド美術館・蔵
倉敷市中央界隈の路地

若干、廃屋感がありますが、実は、地元で割と流行っている町の老舗クリーニング店です。

色だけでなく、全体的な雰囲気の相同感はいかがでしょうか?

散歩の帰路に着くと、見落としていた風景を再発見をしました。想起されたのは、「むきだしの肩をあげた自画像」です。

エゴン・シーレ作「むきだしの肩をあげた自画像」19)  1912年 レオポルド美術館・蔵
倉敷市稲荷町界隈の路地

往くときに観た土蔵が、エゴン・シーレの顔に見えてきました。

この妄想世界の空気感は、いかがでしょうか?

最後に、別の日の散歩で、作品「家族」の世界観に気が付きました。

エゴン・シーレ作「家族」20)  1918年 レオポルド美術館・蔵
天井の梁構造(倉敷美観地区のカフェ・ギャラリ-青い鳥・店内)

画像は、倉敷美観地区のカフェ・ギャラリ-青い鳥の天井です。太い松材の梁が重なって支え合う構造美が、エゴン・シーレによる「家族」の世界観と相同です。

建物は、築300年の老舗旅館だった奈良萬の廃業に伴い、再生プロジェクトにより飲食店が入居する商業施設「奈良萬の小径」になりました。

奈良萬の小径(倉敷美観地区)
カフェ・ギャラリー青い鳥(奈良萬の小径2階)

エゴン・シーレ再現の長い旅もいよいよ終着です。カフェ・ギャラリー青い鳥の店内で、スペシャルコーヒーを味わいました。

文献
1)Leopold D: EGON SCHILE. HIRMER, Germany 2017, P26
2)1)P27
3)1)P17
4)1)P16
5)1)P10
6)1)P18
7)東京都美術館・朝日新聞社編 ハンス=ペーター・ウィプリンガー・他著 レオポルド美術館エゴンシーレ展 ウィーンが生んだ若き天才. 朝日新聞社, 2023, P136-137
8)7)P140-141
9)7)P160-161
10)7)P248-249
11) 7)P224-225
12)7)P158-159
13)7)P130-131
14)7)P70-71
15)7)P164-165
16) 1) P49
17) 1) P21
18) 1) P8
19) 1) P29
20) 1) P53


いいなと思ったら応援しよう!