ラットレースからの解放 ー サクセション・プランと既得権の現実
1. はじめに
会社の中で「ラットレース」に苦しむのは、実は限られた少数の社員だけだと前回お話しました。今回は、そのラットレースの根底にある「サクセション・プラン」について掘り下げ、この仕組みが企業にとってどのような意義を持ち、またどのような課題を抱えているのか考えていきます。サクセション・プランを理解することは、ラットレースの実態をより深く理解するための手助けとなり、あなた自身のキャリアにとっても重要な視点となるでしょう。
2. サクセション・プランとは何か?
「サクセション・プラン」とは、後継者育成のための計画的なプログラムであり、主に次世代の経営幹部を育てることを目的としています。多くの外資系企業では、経営層と人事部が協力し、後継者候補を定めて育成し、組織の持続的な発展を目指します。このプロセスには幹部が直接関与し、社内で選ばれた才能ある社員がリーダーシップ研修やMBAプログラムなどを通じて戦略的に育成されます。
サクセション・プランの大きな特徴は、候補者が複数人存在し、重要なポジションが空いた際に即座にそのポジションに適した人材を配置できることです。つまり、会社として必要なタイミングで後継者を用意し、組織にダメージを与えずにスムーズな経営を維持できる仕組みです。
3. 日本企業におけるサクセション・プランの課題
近年、日本企業もこのサクセション・プランを取り入れ始めています。しかし、日本の多くの企業では「少数精鋭のリーダー育成」を名目に掲げながら、実際には既存の派閥や学閥が強く影響し、「似た者同士」の人材が選ばれる傾向があります。これにより、外部から新しい風を取り入れることが難しくなり、組織の多様性が損なわれるという問題が発生しています。
特に大手企業では、特定の学歴や社内派閥が選考に大きく影響し、ポストが限られているため、他の社員がその競争に参加する余地がなくなりがちです。サクセション・プランが本来持つべき「組織全体の成長」を阻害するような選抜が行われていると、優秀な人材が他の組織に流出するというリスクも増加します。こうした背景から、サクセション・プランが正しく機能せず、ラットレースがもたらす無意味な競争がさらに悪化しているのです。
4. ラットレースの根本的な見直しがもたらす未来
企業が持続的に発展するためには、既得権に依存せず、優れた人材を平等に育てる体制を整えることが不可欠です。特定の派閥や学歴に頼った人事が続く限り、組織には多様な視点が不足し、イノベーションが生まれにくい環境が固定化されてしまいます。これは、日本の企業が国際競争力を持続させる上で深刻な課題です。
サクセション・プランが理想通りに機能するためには、単に候補者をリストアップするだけでなく、個々の才能を引き出し、それぞれが得意な分野で活躍できる柔軟な体制が必要です。また、評価基準やトレーニング内容を見直し、性別や出身、バックグラウンドにとらわれない公平な評価を徹底することも重要です。こうした見直しがなされれば、優れた人材が多様な意見を持ち寄り、組織全体が活性化し、最終的には国全体の経済にも良い影響をもたらすことが期待できます。
5. 結びに — ラットレースを超えて、自由なキャリアへ
「ラットレースに巻き込まれる」と感じる多くの人が抱える悩みの本質には、こうした既得権や組織の偏った人事構造が深く関係しています。しかし、私たちはその枠に縛られることなく、柔軟にキャリアを築くことも可能です。もし、ラットレースに振り回されるばかりでやりがいを見失いそうな時は、一歩引いて自分がどこにいるのか、何が本当に重要なのかを見極めましょう。
キャリアの成功は、必ずしもラットレースに勝つことではありません。あなた自身の価値や強みを理解し、より自由で多様な選択肢を見つけることが、満足度の高い働き方につながります。組織のしがらみにとらわれない、自分らしいキャリアを築くために、まずはラットレースに対する視点を変え、心の余裕を持って働きましょう。
ラットレースを超えた未来には、あなただけのキャリアが広がっています。
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