パターンランゲージ学会に参加しました
2024/2/28から慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパスにて、パターンランゲージの学会 Asian PLoPが開催されました!私もkintone SIGNPOSTの内容とその実践についての論文を提出して、ライターズワークショップに参加してきましたので、その内容とまとめです!
パターンランゲージ学会 Asian PLoPとは
パターン・ランゲージ学会 はHillside Groupが開催する学会であり、今回はアジア地区でAsian PLoP(アジアンプロップ)として開催されました。
元々パターン・ランゲージ学会=PLoPとは「Pattern Language of Programs」という名前であり、ソフトウェアの分野がメインだったのですが、今回のAsian PLoPでは「Asian Conference on Pattern Languages of Programs, People, and Practices」となり、いわゆるソフトウェアプログラミングだけではなく、人や実践が名実ともにスコープに入ったそうです。(略はPLoPのまま😊)
私は今回が初PLoP参加でしたが、恐れ多くも「ノーコードツールを活用した業務改善におけるパターン・ランゲージの活用」という論文を提出し、参加しました。Asian PLoPの論文は他の学会の論文とは若干異なり、論文の形式としてまとめるものの、フォーマットはそこまで厳しくありません。どちらかというとその論文やその中で取り上げられているパターン・ランゲージをみんなでブラッシュアップしていくと言う場になります。
kintone界隈で喩えて言うなら「kintone hiveの登壇資料をみんなでフィードバックしながらブラッシュアップしていこうぜ〜!と言う会」という感じでしょうか😅
このブラッシュアップの仕方が非常に特徴的で、パターン・ランゲージ界隈ではよく知られた「ライターズワークショップ(Writer's Workshop)」という手法をとっています。この「ライターズワークショップ」とは以下のような流れで進みます。
面白いのは「論文をブラッシュアップするためのワークショップであり、ディスカッションの場ではない」ということです。そのため著者は、コメントや質問に対して一切返答することができません。そこにいてコメントを聞いているけど一切喋れません。(これはFly on the Wall=壁に止まったハエ、と言われる所以です😅)
どんなコメントが来ようと、内容を勘違いされてしまっても、それは「読者が論文を読んだ結果」なので、その場で反論・防御することはできません。その代わり、その場で出てきたコメントや要望を踏まえて論文やパターンを修正するかどうかはすべて著者に委ねられます。
kintone SIGNPOSTを作成したときも、Webの情報を頼りに見よう見まねでやってみましたが、改めて(しかもリアルで)体験してみて、ライターズワークショップの解像度が上がりましたw
では、ここからは私が参加した3日間を簡単に紹介したいと思います。
Day1:2/28(水)
Day1は、カンファレンスの導入の意味も含めて、開催場所である慶応 SFCのキャンパスツアーがありました。論文をブラッシュアップするライターズワークショップはDay2からなので、Day1の参加人数はやや少なめです。それでも40人近くいたのではないでしょうか。
午後はパターン・ランゲージ Bootcampということで、PLoPやパターン・ランゲージのことについてのレクチャーがありました。この内容は英語で進み、適宜日本語で説明してくれる内容でしたが、やはり英語で直接理解したほうが早いのと、これを他の方に伝えるときに自分で英語で説明できたほうが良いなと思いました。英語勉強再開しようっと。
夜は交流会ということで、SFC内のレストランで軽い立食パーティー。交流会は18:30 〜 20:30頃まででしたが、そこからバスに乗って湘南台駅に向かい、家につく頃には23時。。。遠いw🚃
Day2:2/29(木)
Day2も朝早く出発してSFCへ。Day2から本格的なカンファレンスとなります。まずはアイスブレイクのゲームをして、その後ライターズワークショップへ。
今回、日本語論文だけでも20近く提出されているので、論文を3つの分野に分けてライターズワークショップを実施しました。私は「組織/ソフトウェア/原理」の分野に入りました。
論文はどれも興味深く、開発プロセス改善、パターン検索、機械学習のモデリングなど、それぞれの論文の細かな領域は異なるものの、一貫して「パターン・ランゲージ」をどのように作ったか、どのように適用するか?と言う内容が入っています。そのため、領域が異なってもパターン・ランゲージと言う軸で理解しやすいと言う特徴があります。
この日は私が提出したkintone SIGNPOSTの論文も読んでいただき、たくさんの感想やコメントを頂きました。本格的なライターズワークショップは初体験でしたが、心理的安全性を担保しながら自由にフィードバックすることができるこのやり方はすごく興味深かったです。少しアレンジすればチーム内のフィードバックMTGなどにも活用できそうです。
頂いたフィードバックを一部紹介します。
実際に活用している人にインタビューをして作成しているので、内容が具体的で良い。
イラストがあって読みやすい。
パターン名は一部分かりづらいものがある。
kintoneに特化しているけど、他のツールでも適用できそう。
このパターンを使う対象者が広すぎるかも?
他にも論文自体のテクニカルな指摘も頂いたり、新しいアイデアを頂いたり。賞味30分でしたが本当に実りの多い時間でした。
夕方にはフォーカスグループ(Forcus Group)ということで、いくつかのグループに分かれてワークショップに参加しました。このワークショップは様々なテーマで実施され、自分の興味のあるところに参加するという形式です。日本語で実施するWSと英語で実施するWSがあったので私は必然的に日本語WSを選択してしまいましたが、次回までには日本語・英語の制約なしに自分が興味のあるワークショップに参加しようと思います😅
このとき参加したのが、Future Play Workshopです!このワークショップでは、未来の自分になりきってインタビューを受けることで、ワクワクする未来の解像度を上げ、次の一歩を踏み出すキッカケを得ることができます👣 ここでもパターンランゲージが活躍してます😊
そのインタビューを記事にしていただいたのがこちら💁(原稿と写真から、翌日には(👀!)こんな素敵な記事にしてくださいました!ワークショップ運営の皆さまに感謝!✨)
Day3:3/1(金)
Day3は引き続きライターズワークショップです。この日の論文はいずれも深いテーマで、パターン・ランゲージを取り扱っていました。論文を読み込むのは非常に大変だったのですが、ライターズワークショップで他の参加者とやり取りする中で新たな視点を獲得でき、メモが止まりませんでした。
参加してみて
今回初めてAsian PLoPに参加してみましたが、非常にいい経験になりました。一般的な学会とは雰囲気が異なり、「パターン・ランゲージコミュニティ」と言う感じではありますが、ベースとなっているパターン・ランゲージをみんなでディスカッションし、みんなで解釈し、みんなで良くしていくという方向性がとても心地よかったです。
(SFCが遠くて流石に疲れました。。。近くに宿を取れば良かったと思うぐらいw)
初めての参加でなかなか勝手が分からずご迷惑をおかけしたかもしれませんが、非常に学びの多い3日間でした!井庭先生を始め、学生の皆様、運営の皆様、本当にありがとうございました!!
今後
パターン・ランゲージはkintone SIGNPOSTでも採用していますし、その続編としてのファシリテーションツールでもその要素を活かしていますので、これからも深めていきたいと思います。(もう少しクリストファー・アレグザンダーの本を読み込みたい。)
そして、自分の研究テーマである地域通貨や自分の仕事のテーマである学習・就労という領域で活用できそうかを継続して模索していきたいと思います。