【椅子】曲げ木と世界流通の礎、ダウムチェア!
文字数:約1100字
新学期の始まった横山です。
2週間経ち、夏休みボケも薄まってきました。
このシリーズはなんとなく年代順に調べていたのですが、情報の少ない椅子があり記事が書けませんでした。ということで、時系列は気にしないことにします。
今回調査したのは、ダウムチェア!
19世紀半ばに誕生したアンティークチェアです。
トーネットとビーダーマイヤー様式
ビーダーマイヤー様式とは、19世紀前半にドイツやオーストリアで流行した様式です。当時フランスを中心に支持されていたアンピール様式(新古典主義+ナポレオンの権威を示す豪華で重厚な装飾)とは対照的に、日常的で簡素な造りとなっています。
これは、市民社会を願いながらも閉鎖的な生活を強いられた市民が、理想を捨てて日常を探求したことに起因します。
世界で最も売れた椅子、トーネットチェアを生み出したミヒャエル・トーネットは、10代からビーダーマイヤー様式の家具製作に取り組んでいました。
彼はその過程で効率的に木を曲げる曲げ木の製法を考案しました。
ダウムチェアについて
1849年、オーストリアの首都ウィーン市内にあるカフェ・ダウムの依頼によりトーネットが製作したのがNo.4、通称ダウムチェアです。
ビーダーマイヤー様式にみられる木肌の美しさや温かみのある色合いが見られます。薄い板を貼り合わせて曲げる成型合板の時代に、厚い無垢材の曲げ木が前脚に用いられました。
この椅子が画期的だったのは、6つのパーツに分解できるノックダウン式の椅子だったことです。ノックダウン式とは部品のまま輸送し、現地で組み立てる物流の形式です。
曲げ木による製作コストの削減と大量出荷が可能なノックダウン式が合わさり、彼の椅子の基本形が確立されました。
この形式をとり、トーネットチェアと呼ばれるNo.14は世界で大ヒットしました。
振り返り
クイーン・アンの時代から流れに沿っていた調査ですが、ここで1回目のトーネットチェアに追いつきました。
本当は冒頭で触れたアンピール様式を深掘りしたかったのですが、固有名のある椅子が見つかりませんでした。
時代の流れを見ると、ロココ→新古典主義→アンピール様式→ビーダーマイヤー様式のように装飾と簡素を行ったり来たりしているように思います。貴族の文化、市民の文化という違いはありそうですね。