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旅先で出会ったお兄さん

1人で新潟に旅行へ行った。

何をするか特に決めずに2日目の朝を迎えた私は朝8時から適当に新潟駅出発のバスに乗り、適当なところへ降りてみた。何かあるかもと思って。

当然、朝早すぎて何もなかったし、周辺を適当にぐるぐる回りつつも何もなく、寒過ぎるから、また新潟駅に戻るバスを探そうと思った。









目の前をバスが通り過ぎた。とともに、バス停がチラッと見えた。
よし。今通り過ぎたバスには新潟駅と書いてあったから次のバスをあそこで待てば行けるかもしれない。

少しの不安と、期待で嬉しくなった。

とはいえ、バスが苦手、かつ、旅先のバス停の多い怖さは拭えなかった。









恐る恐るバス停の時刻表を見ようとすると、先にお兄さんが見ていた。少し待つと、手を差し出してどうぞ〜としてくれている。どうも〜と会釈をして時間を確認する。

お兄さん「あと3分から遅くても10分で来ますよ!」









親切な人だった。
ただ、女性はわかるかもしれないが、ナンパ目的の下心丸出しの男性である可能性も、初対面だとどうしても拭えないのだ。自分を守るために。

慣れない土地、初対面の人、信頼しきれていない男性像、相まって距離のある返事をしてしまった。

「あ…そんな早く来るんですね…!」

…と同時に、顔がめちゃくちゃタイプだった。










お兄さん「どこから来られたんですか?」
私「千葉です!」
お兄さん「?!千葉?!」
私「お兄さんはここの方なんですか?」
お兄さん「そうですすぐそこで!だから任してください!!自分今アルコール入ってるんですけど大丈夫ですか?」
私「(何が?)あ、そうなんですね〜有難うございます!」








酔っ払いと知って警戒心が増した。













お兄さん「千葉から旅行に?」
私「ライブで〜(ナンパ目的ならだるいと思って顔を逸らした)」
お兄さん「(帽子をツンと触る)これ流行ってるんですか?」
私「(やっぱりそっち系か)触らないでください〜」
お兄さん「ごめんなさい…ライブはどこの会場ですか?」

…バスが来るまでの何分間か、たわいもない会話をたくさんしてくれた。酔いながらも親切丁寧で、愛嬌もあって、新潟の方言なのか少し訛っていて、なによりイケメンだった。









バスが来て、このバスですよ〜とか、ここから乗りますよ〜、あ、乗車券とってくださいね〜とか、細かく指示してくれた。優しいなあ。

バスに入るなり、お兄さんは終わりの合図を出した。
「お気をつけてどうぞ〜お気をつけて〜」
優しい言い方だ。丁寧だ。










ナンパとかじゃ、なかった。
その後目的の新潟駅に着いたが、お兄さんは二度と私に声をかけるでもなくそのまま消えてしまった。

どうせ、と思っていた気持ち。
私が勝手に黒い気持ちを抱いていただけだった。

お兄さんはただいい人で、親切で、場を盛り上げてくれて、なんならカッコよくて()、帽子触れたのは初対面として警戒はするけどそれも愛嬌の1つで。

チョロ女こと私は、もう二度と会うことのないその人に、何かの感情を抱いた。












恋なのか、なんなのか。
もう一度会ってちゃんとお話ししてみたい。
彼はどんな人間なんだろう。
バスを降りた時に改めてお礼を伝えるべきだったかな。とか、おすすめの観光地を聞いてみたらよかったな。とか。

もう二度と会えないだろう。

なんだか、縁を大切にしたいと思えた。

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