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読書記録:雨穴『変な家』
ホラー映画は苦手なのにホラー小説は読める。文字だけならそんなに怖くないのは、私の想像力が乏しいからか?
夏だし、さらりと読めるホラーをば。雨穴『変な家』(飛鳥新社)。不思議な間取りの家、確かに変なところがあるなぁと思っているとゾワゾワする展開に。ノンフィクションのような書き方だからよけいに怖い。著者のネット動画がモトらしいが、そちら方面に疎いので何も知らずに楽しんだ。
以前にも少し書いたが、私は引っ越しが多くていろんな家に住んできた。幼い頃は貧しく、親類の家に間借りしていた頃はドラえもんのように押入れで寝ていた。その押入れにはなぜか壁側に窓がついていて、しかし窓の向こうは隣の家の外壁しか見えない。夜でもぼんやりと明るく、風の音もうるさくて寝床には向いていなかったのだけれど、押入れに寝るというのが特別感があって気に入っていた。
なぜあの押入れには窓があったんだろう。後から押入れを作ったのだろうか。どうせ隣家の外壁しか見えない窓だから必要なくなったのか。ということは隣家が後から建てられたのだろうか。当時で築40年程の店舗兼住居の建物だった。長く住んでいる家には少なからず変なところがあるのかもしれない。
その次に間借りすることになった家は6畳一間が私たち家族のスペースだったのだが、私の学習机を置く場所を別に考えてくれることになった。古い平屋の家で、妙に広い洗面所(風呂の脱衣所も兼ねている場所)ならあいているとなって、学習机、洗面台、洗濯機が並ぶ不思議な配置が出来上がった。
しかし北側で暗くてジメジメしており、なおかつ机に向かったときに背後の風呂場が何となく気になって、そこで勉強することはほとんど無かったように思う。机はランドセルと勉強道具を置くための棚と化していた。洗面所は勉強に向かない。全く役に立たない知識を手に入れただけだった。
小説ほど変な家には住んだことがないものの、平凡ではない経験をさせてもらってきたなぁと思う。いま住んでいるマンションが最も居心地良くて好きだけど(持ち家だから当然か)、どの家でも毎日楽しく過ごしてきたし、狭くても不便でも何とかなるというタフさに大人になってから助けられてきたような気がする。
ホラー小説を読んだのに、むかし住んだ家の間取りをぽつぽつと思い出して懐かしくなった。あれれ。
オバケが出てこないホラーなので、普段ホラーを敬遠しているひとにもオススメ。いちばん怖いのは人間ですぞ。
ゾクゾクして猛暑をやり過ごしましょう。