別れ
大人になると別れが顕著になってくる。なんとなく疎遠になってしまうこともあれば、きっぱり付き合いをやめようと思うこともある。
今までは、何の理由もないまま顔を合わせたり、与えられた機会の中で、過ごしてきていたわけだから当然だ。社会に守られながら、好奇心のままに気分が赴くままに友人と遊ぶことができた。
ところが社会人になると、想像以上に自由な時間は少ないし、新しい友人なんてできやしない。それに、会社という組織では、慎ましく正しく在るべきとされている。
窮屈な日常の合間、友人との会合では、毎日の仕事の愚痴や思い出話ばかりだ。多くの友人は、まるでこの先の未来に何も希望が持てないかのように、学生時代を懐かしみ、感傷に浸る。僕もとても共感できるし、これからなんだってできるという学生の頃の漠然とした自信も失っていた。
自分のために一生懸命になれた学生時代の僕は、恐れを知らない無鉄砲な人間だったとさえ思えてくる。社会人になった僕は、将来、安心して暮らしていけるほどのお金も、安心もないし、不安や悩みは尽きないどころか、比重は重たくなるばかりで、ほとんど身動きがとれない。
そうしてうっすらと勢いを失い、辛抱と停滞を受け入れ始めると、繋ぎ止めていた虹色の思い出が儚く感じる。もう無茶な遊びはできないし、生活のためには社会人としての責任を捨てることはできない。ずっと縛りつけられたまま、社会や世間から、永遠に逃れることはできない。
僕は、僕を保つことで精一杯だ。寂しいと感じる余裕さえない。大人になったら、もっと自由だと思っていたし、自由だと話す友人も多い。だけど僕は、孤独に自分を見つめ直し、社会と闘うことになるなんて知らなかった。
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