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雨の日のネズミ

 雨の音は、部屋に静寂をもたらす。太陽の光を浴びないと、眠気が留まったままで、気持ちが沈む。仕方がないので、重い体を起こして、洗濯機を回しながら、お昼ご飯について考える。

 せっかくの休日なので、普段できないことをしよう。ずっと、何か日々のご褒美を、癒される存在を欲していた。それで僕はネズミを作ろうと思い立つ。
 方眼用紙を用意して、思い描いたネズミの型紙を考える。布とワタで何かを作ることは初めてのことなので、簡単な形にしよう。三面図を描いて、耳やしっぽなど体のパーツを分解して描く。紙で組み立てたり、試行錯誤をして、やっと型紙ができた。ネズミ作りに夢中になっていた僕を、洗濯物がじっとりと待っていた。

 雨の日は何処へも行きたくないと思っていたのに、僕は、気付けばネズミに相応しい布を探しに出掛けようとしている。

 お昼ご飯の唐揚げのことを考えながら、放置されてしまった洗濯物を干し、シャワーを浴びた。唐揚げとチャーハンを作ると、もちっとした恋人が大喜びで頬張る。僕も嬉しくなってたくさん食べた。心地が良くなって、昼寝をした後、ネズミに相応しい布を買いに出かけた。

 そして、夕飯までにネズミを作った。不恰好だけど、想定していたネズミよりも丸くてかわいい。耳の長さは左右非対称で、目はぼんやりつぶらで、少しムッとした顔をしている。僕はネズミを気に入った。 
 薄く焼いた卵焼きときゅうりを切って、夜は冷やし中華を作った。じめっとした重たい空気が、暑い夏の記憶を呼び覚ます。冷やし中華を見ると、いよいよ夏がやってくるなという気がしてくる。
 ネズミを眺めながら、冷やし中華を食べた。ネズミは僕に似ている。泥臭い懸命さがよく似ている。似たもの同士、仲良く暮らしたいと思う。
 今日はずっと眠くて仕方がない。ぼんやりとする度、眠気に吸い込まれそうになる。ネズミを側に置いて、軽く指でつまんだ。おやすみ。


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