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季節ひとつ分の恋愛



今思えば、あの人によく似たあなたと付き合うという動機が不純だったことに気がつくけど、あの頃は無理だった。


『好きって思ってくれるまで待つよ』



と言ってくれたあなたに 
『待たないで欲しい。』と言った。



『それならなにも始めないで欲しかった。』


と返すあなたに私は『ごめんなさい』と言ったけど、本当の意味では謝れていなかったと思う。


彼は女性の友人が多い人だった。 


何も気にならないということを気にすればよかったと終わってからなら気がついた。


大人になったことを言い訳に、
恋愛には淡白になったんだろうとでも錯覚していた。


彼は歩く私に腕を絡める人だった。


営業生活で、男役をこなすのにはなれたつもりでいたし、苦ではなかった。


過去の恋愛は決まって私が腕を絡める側だったことも、柔軟性という言葉で応用しようとした。


綺麗な人だったし、綺麗なものが似合う人だった。


パフェを食べたいという相手に、
こんなのどう?と送った喫茶店の奇妙なみどり色のシロップと、チェリーが1番うえに乗った画像


私はそんなものが好きだった。


彼は360度作り込まれたアートみないなのをパフェと言っていたのに気がつくのはその5秒後ぐらいだったと思う。



私は相手をずっとさん付けで呼んでいた。


相手があだ名で私を呼ぶのに安堵していた。



私を待つ姿だけはずっと見ていたいと思った。


言葉を選ぶように話す優しい人だってことも知っていた。


好き?と聞かれて黙った私に、
好きって言って、と嘆く人を嫌いにはならなかった。




別れ話をするときに、


『最低だねほんと。』



と言ってくれて安心した。最後もきちんと最悪になりたかった。





そんな恋愛は10代で終わらせておくべきだったけど、26歳でそんなことをした。



きちんと好きだと思ってた。
付き合おうと言ってくれて嬉しかった。
でも付き合ったことは誰にも言わなかった。



そしてこれからも言わない。



私だけが知っていて、

私だけが納得して私だけが自分勝手に歩んだ。




好きになるのを待つって言ってくれたけど、

私は最初、きちんと好きだと思ってた。


恋愛に『きちんと』という言葉が似合わないことは知っていて気づかないふりをした。



桜を待ち、そして咲き去った。


紫陽花を見に行こうという約束だけはした。


君のコートを羽織った長袖姿だけは知ってる。


今年の春はいつにもなく短かくて長かった。





























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ちさき
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