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醸造家の呼び方

「醸造家」という言葉を耳にしたことはありますか?

お酒を造る人のことを醸造家と呼んだりします。
しかし、一口に醸造家と言っても、造っている酒の種類によって呼び方は様々。酒造りの現場に関わる人たち。色んなポジションの人がいます。

今回は、そんな"呼び方"の話をしようと思います。

醸造家

酒造する人を指して「醸造家」と言いますよね。
とくに、どの酒というわけではなく、どの醸造酒でも使う言葉かと思います。同様の意味で「醸造士」もあります。

いずれも、比較的よく耳にする言葉ではないでしょうか。もっとくだけた表現だと「造り手」ですかね。

当然のことながら、事務や営業をする人間ではなく、酒を設計・デザインしたり、現場で製造作業をする人のことを指す言葉だと思います。

ビール

ビール業界では、醸造士の事を「ブリュワー」と言います。醸造は英語だと"brew"。すなわち「醸造する人=Brewer=ブリュワー、ブルワー」という事です。

現場のトップ、製造責任者のことを「ヘッドブリュワー」と呼びます。「ヘッド」と略すことも多いです。「ヘッドは誰?」なんて聞かれることもしばしば。

清酒

清酒の場合、より細分化された呼称を使います。

まず、経営者一族、オーナーの「蔵元」と、雇われている「蔵人」に分けられます。

ただし、製造のリーダーである「杜氏」は特別で、雇われていたとしても「蔵人」には入りません。

清酒の場合、製造工程毎に担当者を置く事が多く、役回りの名前も多いです。

追い廻し(おいまわし)
入ったばかりで、雑用中心で働く人。
色んな部署に顔を出し、手伝いをさせてもらいながら仕事を覚えるポジション。飯炊を任されている場合も。
由来は「仕事を追って駆けずり回るから」や「仕事に追われるから」など、諸説あります。

蒸した米を釜から掘り出す人「釜屋(かまや)
麹を造る人「麹番(こうじばん)
酵母を培養する酒母=酛の担当「酛屋(もとや)
発酵管理を担当「醪番(もろみばん)」
出来た醪を搾る担当「船頭(せんどう)

蔵毎に呼称は微妙に変わります。
(例:酛屋=酛師=酛番 など)

まだ他のポジションもありますが、今回は割愛。
そして上記のポジションの上位職がこちらの2つ。

製造現場のサブリーダー「頭(かしら)」
製造責任者、リーダー「杜氏(とうじ)

オーケストラで例えるなら、杜氏は指揮者で、頭はコンサートマスターでしょうか。スポーツなら、監督とキャプテンですかね。

ただし、蔵の規模によって、杜氏の役回りは変わります。蔵の規模が小さく、人数も多くないのであれば、頭がいなかったり、杜氏自身が製造作業をこなすプレイングマネージャーになる必要もでてきます。

また、最近では杜氏を雇わず、蔵元自らが杜氏を務める「蔵元杜氏」も数多くいらっしゃいます。

ワイン

ワインの場合、ブリュワーや蔵人のように、製造現場の人間を指し示す言葉がありません。大抵はみなさん「醸造家」を名乗っているように思います。

会社の規模が大きくなると、ぶどうの栽培担当と醸造担当が分かれていることも。栽培しかやらない人は、醸造家とは名乗らないでしょう。

また、「エノログ」という呼称があります。認定を受けた人のみが名乗れる呼称で、栽培・醸造含めたワイン製造のスペシャリストという位置付け。

製造責任者はエノログがつとめる事が多く、清酒で言うところの杜氏と同等のものかと思います。

資格もあるよ

先にもチラッと書きましたが、醸造の世界にも資格があります。「醸造家」などは自称できますが、自称できない呼称もいくつかあります。いくつか例示します。

・杜氏
・一級酒造技能士
・二級酒造技能士
・ブラウマスター
・エノログ

いずれの資格も一定の学歴や実務経験を要件にしていたり、専門の教育機関を卒業する必要があったりします。資格がなくても酒造りをすることはできますが、あるとないとでは大きく変わると思います。

仕舞い

改めて並べてみると、「醸造家」って便利な言葉だなぁと感じます。色んな役回りを全部ひっくるめて、しかもどの醸造分野でも使えて便利!

でも、もし今後、醸造家とお話する機会があれば、役職や担当を聞いてみては。担当業務について、色々話してくれるかもしれませんよ。

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