【書評】ディスコミュニケーション(植芝理一)を読まなかったら妻との出会いもなくいまここにもいないという不思議というお話
※この文章はFacebookに投稿したものを加筆編集したものです
今朝方、「ボクの彼女は発達障害」の漫画パート担当であり、noteで毎週連載している「くらげ×寺島ヒロ 発達障害あるある対談」の相手でもある寺島ヒロさんより「Facebookで流行ってる7日間チャレンジの「自分を形成した本7冊」チャレンジのバトンをもらっていただけませんか?」というお題を頂いた。ルールは以下の通りであるらしい。
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・好きな本を1日1冊、7日間投稿する。
・ルール:表紙画像だけアップでも良いし内容説明付きでも良い。その都度1人のFB友達を招待しこのチャレンジへの参加をお願いするもよし、しなくてもOK。
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わりと忙しい日々なのでそんな暇はあんまりないんだけども、ちょっとコラムを書く余裕もなくなっていたので気晴らしも兼ねて7日間、自分を形成した本(あるいは著者)についてさらっと書きたいと思う。
一冊目として外せないのは月刊青年漫画誌「アフタヌーン」で1992年~2000年まで連載してた「ディスコミュニケーション」(植芝理一)だ。高校時代にうっかりこの漫画を友人から借りて読んでしまい、サブカルチャー分野にどっぷり堕ちてしまった。
ディスコミは「戸川安里香(地味メガネ系女子高生) が不思議系同級生の松笛たか臣を好きになり告白し付き合うことになったけど松笛が変態すぎて困っている。なぜこの人を私は好きになったのだろう」という導入部分から始まる。
その変態っぷりは尋常でなく、涙を舐めたがるとか、しばって足をくすぐるとか、襟首を剃るとか、失禁するまで目隠しをして監禁するとか、作者の性癖が大きく歪んでいるであろうことが容易に察せられる描写ばかりだ。
そして、私の性癖もこの漫画のせいで変な方向に捻じ曲げられてしまった。(いや、この漫画のせいだけでもないのだけど)
ディスコミは大きく分けて、冥界に落ちた戸川を松笛が救いにいく「冥界編」、一話完結で学園ギャグ風味の強い「学園編」、シリアスで哲学的な内容が多い「内宇宙編」があって、それぞれが全く別なテイストを持つ。
どの話も(超)心理学・オカルト・哲学・神話などのトピックスが随所に織り込まれていて、当時からムーを愛読するようなオカルト少年だった私には突き刺さらないわけがなく、本当に貪るように読んだし、ますますオカルトや哲学などを物知り顔で語る痛い青年期へ突入する羽目になった黒歴史生産マシンでもあった。
しかし、一番影響を受けたのは人間観というか世界観というか、恥ずかしながら「恋愛観」であった。この漫画の大きなキーワードは「ワカラナイカラ好キニナル」で「人はなぜ人を好きになるのか」という問いが何度も繰り返される。
その壮大な問いをめぐる物語に高校生の私は心を踊らせ、同時に「彼女がほしい!」という悶々とした気持ちを抱くことになった。
正直に告白するが、私が初めて恋をした相手と言えるのはこの本のヒロインである戸川だ。そして、このディスコミを読んだ8年後に初めて彼女(今の妻)と付き合い始めるのだけど、妻はこの戸川に結構似ていたりする。
そういう意味ではディスコミがなかったら妻に興味を持ったか怪しいし、もし付き合ってなかったら自著「ボクの彼女は発達障害」を出すこともなかった。そして、今の物書きとしての私もいないわけで、この文章が世の中に出ることもなかったわけだ。世の中の因果関係とは本当に複雑である。
ディスコミは「人をどうして好きになるんだろう」と悶々と考えてしまうような健全な青少年にぜひ読んでいただきたいのだけど、今から買うなら「新装版 ディスコミュニケーション」(1~7巻)がおすすめだ。
最初は取っ付くにくいし読みやすい絵柄でもないのだけど、精巧極める宗教画めいた書き込み具合や複雑な物語構造、オタク的古典教養ネタなどの気づくと一気にディスコミの世界に堕ちて性癖が歪んだ変態になるはずだ。
あとYMOが無性に聞きたくなる。
さぁ、おいでよ!ディスコミュニケーションワールドへ!
※このコラムは7日間連続企画の予定です