インスタライブトーク公開 with nottuo 鈴木さん
前回のインスタライブで話題にも出た「ウェディングフォト以外の学び」という意味では、今回のゲストであるnottuoの鈴木さんほど最適な人はいないかもしれません。
デザイナーさんから見た写真ってどんな存在なんだろう。そんな素朴な疑問がふつふつと湧いてきて、このたびインスタライブにお誘いしたところ、快く引き受けてくださいました。
- 今回のスピーカーは以下の2名 -
nottuo鈴木さん
Instagram:@kopattchi
久保
Instagram:@kubo.mst
※以下
S:鈴木さん
K:久保
K:今日はありがとうございます。
S:とんでもないです。こんな感じなんですね。すごい、久保さん使いこなしてる。(笑)
K:(笑)よろしくお願いします。一言でいうと鈴木さんはブランディングデザインをされているんですよね。
S:ですね。
K:企業だったり、プロダクトだったり、ブランドだったりのブランディング全般をやられている感じなんですかね。
S:どんどん領域が広がっていて、企業さんのブランディングを中心にやっていたんですけど、今は建築士も入れたので店舗設計やオフィス設計もやりますし、飲食店さんだったら器選びとかオリジナル制服を作ったり。というところでアウトプットは限りなく、最上流から最下流まで、という感じですね。
■質問:デザイナーさんは写真というものをどういうものとして捉えていますか?
K:僕もすごく鈴木さんに興味があって。頭の中がどうなっているのが気になるんですよね。フォトグラファーと同じクリエイティブではあるけど、ちょっと思考とかものの捉え方とか考え方とか・・・頭の使い方が違うんだろうなと思っていて。
フォトグラファーでも、撮った写真を自分は素材だと思っている人もいれば、写真一枚で表現する、という人もいて。
S:いつも質問する側なのでされるのって楽しい、新鮮です。(笑)
デザイナーさんとかアートディレクターさん人それぞれで一般論というより僕の考えなんですけど。
うちはnottuoと言う名前でブランディング活動していて、常に全体を考えながらツールを作るという発想なんですね。
大元にある「誰に何をどう伝えるの?」という部分を常に考えていて。そのためのホームページだったりロゴだったり・・・といったように作っていくんですが。
そのときの写真というのはクライアントさんの魅力を伝えるとか、誰にこういう風にみられたいとか、世界観を伝えるための一つの手段というふうに考えていて。
香盤表も組んで事前にフォトグラファーさんに色々お伝えするんだけど、現場に入ったら・・・けっこう任せちゃう。(笑)
K:え、そーなんですか!(笑)
S:僕がこういう画(え)が欲しいとか、こういう伝え方をしたいからこの世界観がやりたいとかは言っておくんですけど、現場で僕はそれを覆してほしくて。
抑えとして欲しかった写真は撮ってもらうとして、もっとこういう雰囲気とかこういう画の方が伝わるんじゃない?とかってフォトグラファーさんに覆してもらう。
事前打ち合わせもあるんだけど、現場に入って意外と変わることもあったり。むしろそれが面白いなぁっていう。
それで自分の想像を超えたクリエーションって生まれるじゃないですか。フォトグラファーさんもクリエイターなので。
自分の枠を超えたものが出来上がっていくっていうのが一緒にやっていて楽しいなっていつも思いますね。
■質問:フォトグラファーのアサインも鈴木さんがしますか?
S:基本的にはそうですね。でもあまり幅広く色んなフォトグラファーさんとお仕事をしていなくて。昔からの付き合いとか友人が多いんですよね。最近はスタッフも入って色んな方にお願いしてみようと意識的に動いています。
写真を撮るときの姿勢について、被写体との関係性を大事にしていてそれによってどんな瞬間を作れるかが変わる、ということを久保さんがSNSで投稿されてたと思うんですけど。
フォトグラファーさんとのコミュニケーションって、分かり合えるようになるまでめちゃくちゃ大変じゃないですか。そこを僕がめんどくさがっていろんなフォトグラファーさんと仕事を広げるのをさぼってきたのは反省してます。(笑)
K:出会い方とかにもよるかもしれないですよね。相手の作品に惚れて依頼するのか、紹介されて依頼するのか。最初は特に遠慮がちになったり。
S:なりますよね。言っていいのかな?みたいな。(笑)
K:それでお互い探りながら・・・というようになっちゃうんですよね。これの方が良くないですか?みたいに現場で本音を言い合える関係が作れると、お互いが予定していたものを超えるものが見えてくるのかなと。そういうの、良いですよね。
■質問:アルバムレイアウトをデザインする際に、どんな視点を持っていますか?
K:ウェディングのフォトグラファーって個人でやっている人はだいたい自分でアルバムのレイアウトをやったりしているんですよね。時代の流れ的に、あまり装飾をつけるレイアウトというのは最近はなく、基本的にはシンプルに写真で見せるみたいな感じでやってます。
うちのフォトグラファーも、提携式場のアートディレクターさんから「写真をもっと塊で見た方がいいよ」とレイアウトのアドバイスをもらったことがあって。でもフォトグラファー的にはこれが良い写真!というのがあるんですよね。
S:僕の友人のフォトグラファーの話なんですけど。自分でポートフォリオとかブックとか営業用の資料を作ってるんですが、やっぱりフォトグラファーはフォトグラファーだし、デザイナーはデザイナーだなって。
というのも写真はめちゃくちゃ良いのにブックとかのレイアウトデザインがめちゃくちゃダセェ!っていう(笑)。でもそれって当たり前の話だなって思っていて。
微妙に写真が撮れるデザイナーもいるし、デザインがちょっと上手なフォトグラファーもいると思うんですけど、とはいえ餅は餅屋だなと。
なので結論としては、デザイナーにガンガン聞く!ガンガンレビューしてもらう!(笑)
それがとても大事だと思う。
デザイナーってすごい時間をかけてデザインをやってきているんですよね。僕らが5分10分でやる作業って、フォトグラファーが何時間かけても到達できない域のデザインをできたりする。
でもそれは当たり前のことで、僕らデザイナーがシャッターを切っても、写真のクオリティがフォトグラファーと僕らでは全然違うのと同じことなんですよね。
僕らデザイナーは写真の選び方とか順番とかを、写真単体を見せるというよりも、連続した写真のストーリーやユーザーがどういう感情を起こして見ていくかっていうところまで考えてデザインしてるんですよね。だからそもそもレイアウトしていく上でのロジックが違うのかなって思います。
なので、自分たちのこだわりをデザイナーに見せてレビューをしてもらう。そうすることで圧倒的にクオリティが上がると思います。
K:たしかに。それに費やしてる時間が違いますもんね。撮ってる本人だからこそ混じってしまう感情とかあったりとかもして。
自分はこの写真が気に入っている!という理由でアルバムに使ったりすることがフォトグラファーにはあって。なんでそれを使ったのかを聞くと、その場面のストーリーを伝えてくれるんだけど、写真で表現できてなかったりするんですよね。
撮り手側の気持ちも大事なのだけど、デザインする側としての考えや見せ方は切り分けて考えないといけないですね。
S:アートディレクターとかデザイナーの役割って、写真で言えばフォトグラファーとユーザーの間に立って翻訳作業することなのかなと思っていて。
良い写真だけど伝わりづらいとか、あえてそうすることで価値がある場合もあるのかもしれないですけど、そこのバランスをちゃんと見るというのが僕らの仕事ですよね。そういう客観的なフィルターを通すって大事なのかなと。
K:ウェディングフォトって、フォトグラファー1人で完結してしまう部分があるから、1つの撮影が1つのプロジェクトだって考えたら、ちょっと意識が変わりますよね。
■質問:とはいえ、レイアウトってどうしたら上手くなれるのか知りたいです。
S:うちに住み込んで廊下の雑巾掛けから始めたら血となり肉となり・・・(笑)
一番の近道は、代官山蔦谷書店とかにある「これかっこいい!」とか「これおしゃれ!」という雑誌を参考にする。
K:この一冊を丸ごとパクる!というよりは、基礎を磨くために良いものを見まくるというのは、写真もそうだけど何においても一緒ですね。千本ノックみたいな。
S:そう、千本ノックですね!
■質問:物事を作る時の考え方を教えてください。
K:ウェディングフォトグラファーってドキュメンタリー的なスナップを撮るシーンが多い。基本的には目の前で起きたことを撮っていて。狭い範囲でフレーミングとか表情とか影の面積とかくらいは考えていると思うのですが。
それをアウトプットするときに、例えば青はこうだから、赤はこうだから、みたいに人が受け取る印象まで考えながら写真を出している人があまりいなくて。
デザイナーさん、特に鈴木さんは受け手・ユーザーにこう感じてもらうための順序立てとかを戦略的にやってそうなイメージなんですよね。
S:メガネキャラ効いてます?(笑)
K:効いてる効いてる(笑)。セオリーというか、物事を作る時の考え方を聞いてみたいなって。
S:最近思っているテーマが、デザインの究極行き着く先が「時間」なんじゃないかと思っていて。
時間をデザインできるかどうか。もうちょっとわかりやすくマーケティング用語に置き換えると、CX。カスタマーエクスペリエンス、顧客体験ということ。
結局、僕らがブランディングっていってデザインをするときに一番意識するのって〇〇デザイナーじゃないんですよね。
WEBデザイナーでもないし、グラフィックデザイナーでもない。そういうのを全部やるのがブランティングデザイナーという領域だと思ってるんです。
要はクライアントのブランド・企業・サービスがあってそれに対する顧客がいる。そこにファンを作ろうとしたときに「どういう関係を作ろうか」ということを僕たちが考えていることで。
そのためにはどんな雰囲気を伝えるべきなのか、WEBを見て上から下までスクロールしていったときにどんな感情の変化が生まれるのか、通販で注文したときにUXが気持ちよかったか、商品が届けられた時の梱包がどうだったか。
どこまでいってもクライアントのブランド・企業・サービスとユーザーとの関係とか、そこで生まれる感情の遷移を、想像力を働かせてひたすら想像して最終的にデザインでアウトプットする。
じゃあそのための経験や体験や感情を作ろうと思ったら何色なのか、どういうツールなのか、どんなチャネルなのかを使い分ける。そういう順序立てかなと。
K:それって要は・・・めっちゃモテるってことですよね。(笑)
S:(笑)。面白いなぁ。
それをちゃんと男性が女性に、女性が男性に対して意識的にできていたらきっと超モテますよ。(笑)
わかりやすいのが田中みな実さん。戦略・戦術的にも優れているから売れているのかなと。
K:なるほど。とにかく受け手(お客様)の体験ですね。フォトグラファーは「自分」が強く出てしまうことが多いんですよ。自分が現場を体験したからそれをストレートに伝えたい気持ちがあるんだろうけども。
お客様がクロネコヤマトさんからアルバムを受け取った瞬間の感情から想像している人はそんなにいないというか。
どういうシチュエーションでアルバムを開くのかな?二人で見るのかな?このアルバムを前にして彼の帰りを待っているのかな?とか。そういうところまで想像を働かせている人はあまりいないんじゃないかと。そこからの逆算が大事。
S:ウェディングフォトグラファーさんとかって現場の方が大事だったりするんじゃないのかなって部分もあるんですよね。被写体となるカップルとどれだけ関係を作れるかというのはめちゃくちゃ大事なのかなと。
僕はウェディングフォトの分野って、久保さんと出会うまであまり詳しくなかったんですけど。これまでただのイメージとして、結婚式に行ったら正直忙しそうな人っていう。(笑)でも久保さんや、その周りにいるような方たちは全然違ってて。
市場は一緒かもしれないけれど、やっていることは全然違うなぁと。そのシャッターを切るためにどれだけどういう場作りをしたのかなと。
K:現場はみんな色々考えて作ってますね。撮影当日がピークという意識があるのかなと。それは良いことだとは思う。お客様・受け手にとってはアルバムが思い出の一つで、オンリーワンであり、長い人生の中で持ち続けるものとなるから、トータルでもう少しそういう部分も意識できたら良いのかなと思うんですよね。
S:to Cだと、間に僕らみたいな存在を置いておかないと、作業に入れば入るほど視点を広く引いて持てなくなっちゃう。常に一歩引いた視点を持たせる体系作りって大切なのかなと思いますね。
K:インスタなんか見ても、撮影ごとに全然違う色味でレタッチをしている人もいる。
そういうところを俯瞰した目で見てブランドを育てる。他にやっているところはないから、それは強みになりますよね。
■質問:うまくいっていないウェディングフォトの会社から鈴木さんに依頼があった場合、どういう順番でブランディングに当たっていきますか?
S:ウェディングフォトの会社に限らずなんですけど、すごい突っ込んで聞くものは2つあって。
まず、10年後どうなっていたいですか?ということ。個人でも企業でも一緒。10年先を見据えたときに、数値目標というよりもどんな状態でいたいか。
例えば個人のブランドだったら、〇〇のお店に卸していたい、完全受注生産だけで回せるようになりたい、とか。またはどれくらいの生活水準になりたいか。それはつまりライフスタイルということになるので、逆算していく。そのための年収はこれくらい。であれば年間これだけ売らなきゃねっていう考え方。
もう一つ聞いているのが、結局何したいんですか?ということ。(笑)
K:(笑)
S:ホントのホントのところは何をしたいんですか?っていうのはしつこく掘り下げて聞くんですよ。
これ、個人でも企業でも実はけっこう迷っている人が多くて。企業であれば、社歴が長ければ長いほど色んな事業をやっていて、よく分からなくなってることがある。
10年後に紐づくことなんですけど、結局じゃあ何がしたかったんだろうね?ということを一緒に掘り下げていくと、意外とぽろっと出てきたりするんですよね。
個人でも一緒で。戦略とかを練っていくときに、根っこでは何が譲れないか?ということを掘り下げて、ミッションやビジョンを作ったりしていく。
そうやってブレない芯を作らないと、デザインを作ったときに後からずれてくるということが往々にしてあって。
デザインって木の葉っぱの部分を考えがちなんですけど。ブランディングデザインってそうではなくて、木の芽が出る前の・・・根っこまで見つめ直しておかないとうまくいかない。愛してもらえないんですよ、デザインが。
じゃあ仮にウェディングフォトの方と話したときに、もしかしてそれってウェディングフォトじゃないんじゃないんですか?っていうことってあるだろうなって。
たまたまキャリアとしてカメラを触っていたからなのか。幸せにすることが目的なのか。それならば写真じゃなくてもいい。
でも、それを掘り下げていくとその手段が写真なんだよって再確認できる場合もあるだろうし。
結局、戦略・戦術を話す前に、何のためにやっているのかがめちゃくちゃ大事で、そういう方とはそこを話していくかなって思います。
K:たまたま先日考えていたことがあって。他の撮影会社なんですけど、結婚式の予定がない方向けの「ソロウェディング」っていうのがあって、一つの需要としてはあるんですけど。
自分はそういうのを撮っていきたいのかな?って考えたときに、それって写真ではあるけれど、写真が絶対やりたいわけではないんだなと気がついたんです。
自分は、家族やカップルのコミュニケーションだったり、関係性だったりというところに興味があるんだなと。
例えば次のビジネスを考えたときに、写真に固執する必要はなくて、カップルなり家族なりがずっと大切にしていけるプロダクトであれば、自分は打ち込めるなと思ったんですよね。
S:久保さんはまさにそういう方ですよね。一番の目的のためにいろんな手段を持つことって大事で、それをうまくバランスをとることができる。
掘り下げた結果が写真だけをやるという選択でもいいと思う。とにかく大事なのはなんのためにやっているかをはっきりさせておくことなんですよね。経営者にとって、その視点は忘れずにいた方がいいんです。
■質問:フリーのフォトグラファーがブランディングをする上で一番大事なことはなんですか?
K:概念としては先ほどおっしゃっていた、10年後どうなっていたいかということと、何がしたいのか。
S:そうですね。外部に頼むにしてもセルフブランディングだったとしても、結局は自分がどう見られたいかを、どれだけ自分自身で意識できるかどうか。大事なのは、「こう見られたい自分」をある意味演じていくということなんです。
だから個人のキャラクターをしっかり作るべきだと思う。
どんな写真を撮るのかというのも同じこと。あとはインスタだったらどんな言葉を添えるのか、顔を出すのか出さないのか。出すのであればどんなファッションにするのか。全てひっくるめていろんな角度で見られるので。
K:自分も一人でやることに限界を感じたことがありますけど、行き詰まった時は外部の人にお願いするというのは、フリーの人には持ってもらいたい発想ですね。
■質問:二拠点生活って、いかがですか?
S:一言で言うと、めっちゃ楽しいです。今コロナの影響で岡山に帰れなくなってしまいましたが・・・。
岡山県西粟倉村(にしあわくらそん)という超ど田舎の村に住んでいて、全然環境の違う場所に身を置くことって、精神衛生上すごく良いなと思ってます。日本でもいろんな環境があるんだなってのを肌感覚で知れるってすごく良いなと。
■質問:岡山と東京2拠点で客層の違いに苦労したことはありますか?
S:うちの場合だとお客様が中小企業や個人が多いので、日本中同じような悩みを抱えているなぁと感じています。
ただ、わかりやすく言うと単価の違いはあるかなぁ。
_________________
K:繰り返しになるけれど、フォトグラファーって「自分が」という自分発信になりがち。
S:自分はこれを世に出したい。でもそれをどう見られたいかをセットで考えないといけない。
これをやりたい!だけで成功する人はまれにいるけれど、精度を上げるために、誰に伝わって誰に使われたいかをセットで考えるのは、セルフブランディングの技だと思います。
K:だからアートディレクターやブランディングデザイナーがいるんですね。(笑)
S:結局ね。(笑)
違う分野の人と話すと、思考回路が全く違うから参考になるなと強く感じたnottuo鈴木さんとのインスタライブでした。
フォトグラファーやフリーランスの方々には、すごく参考になったのではないでしょうか。
さて、次回は4/9(木)21時から、映像の分野で活躍しているkazuki君とのトークです。
ぜひ楽しみにしていてください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?