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『チ。』にハマった人は『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』を読んでみてほしい。

10月から、TVアニメ『チ。ー地球の運動について』が始まりました。
今日は、それについて考えたことを書きます。

結論については、タイトルの通りです。読んで。

著者は哲学者の谷川嘉浩さん。モチベーションという言葉では言い表せない「衝動」について、様々な書籍や作品を紹介しながら言葉にしていく一冊です。

本書の導入では、さっそく『チ。』について触れながら、本書の狙いを提示します。人はときに、合理的ではない選択をする。どうしてそっちを選んでしまうのか、ちょっと説明できない。でも、それをせずにはいられない。

本書が照準を合わせるテーマは、要領のよさや世の中の理屈とは関係なく動き出していく私たちの「衝動」です。

『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』p16

『チ。』の主人公、ラファウは要領がいい人間です。とても賢く、世の中が見えている。合理的な選択をすれば、それなりに豊かに、楽しく暮らしていけるタイプ。

でも、あることがきっかけで、地動説の研究に没頭するようになる。それが、命を落とすリスクがあると知っていながら、やめられないんですね。まさに「衝動」に突き動かされた結果だと言えます。

著者の谷川先生は、ここを出発点として、「衝動」の正体を探りながら論を進めます。この、ストーリーの作り方が面白い一冊となっています。

「衝動」を扱った作品は他にもある

先日映画化された『ブルーピリオド』も「衝動」によって人生が変わってしまう物語です。

主人公の矢口八虎は、友人関係も良好で、勉強もある程度できる、いろんなことをそつなくこなすタイプ。でも、絵を描くことにも特に興味がなかったのに、あることがきっかけで、美術の世界に入り込んでいきます。

最終的に、入学が狭き門である東京藝術大学への合格に向けて、驚異的な努力を見せることになります。果たして彼は、さまざまな困難を乗り越え、無事に合格を勝ち取ることができるのか。

この辺りが、『ヒカルの碁』のプロ試験編を見ているようで、とても面白い漫画です。

こちらも映画化されて、多くの人を魅了しました。

小学生の女の子が、自分は絵が得意だと思っていたのに、ある日、自分よりも絵が上手い子が、同じ学校にいると気づきます。その後、「絵が上手くなりたい」という強烈な気持ちが芽生え、ひたすら机に向かい、何回も練習を始めます。

あとは、漫画や映画でみてほしい。こちらも「衝動」に突き動かされた例だと思います。

承認欲求では説明がつかないのではないか

これまで紹介してきた作品に共通しているのは、主人公の「衝動」を駆動したのは、他者なんです。他者から何かを受け取ってしまい、そこで物語が動き出す。

僕たちは殻に閉じこもるのではなく、いろんな他者から影響を受けている。そして、影響を及ぼしている。

自分が憧れを抱いているあの人は、実は自分の絵をすごいと思ってくれていた。そのことを知ったとき、雨の中でも傘を刺さずに踊り出したくなる。

ただ、「衝動」に突き動かされた人たちは、承認欲求で動いているのか。

誰かに認められたい、褒められたいで動いているのか。それは似ているけど、どこか違うんじゃないか。

ラファウは他者からのいいねが欲しくて地動説を研究するわけじゃないし、矢口八虎もそう。だけど、矢口はある先輩の作品に、とても心を動かされるシーンがある。

著者の谷川先生は承認欲求という言葉を、とても警戒しています。それを使ってしまうと、何かを説明できたような気持ちになるけど、果たしてそれでいいのだろうかと。

僕は素人ですが、哲学者は言葉をとても大切にして、言葉の使い方や定義に細心の注意を払います。

僕のふんわりとした論はここまでにして、谷川先生が物事を深く掘り下げた一冊を読んでみませんか。

哲学者の頭の中をお借りしながら、『チ。』『ブルーピリオド』『葬送のフリーレン』などに触れながら「衝動」について考えてみませんか。

僕にとってはそれがとてもいい体験だったので、みなさんにもおすすめしたいなと思います。

読んでいただき、ありがとうございました。『チ。』楽しみですね。

以前書いた感想noteも置いておきますので、気になった方はぜひ。


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