Back to the late 90’s 終章 さらばMy 90’s ~あと書き~
きっかけは、些細な事だった。
私が、たまたま何気に90年代後半の大阪HIPHOPシーンについてネットで検索してみたところ、これが驚くほど情報が出てこなかった。
「やはり大阪なんて、東京から見れば地方都市やし、当時の細かな情報なんて、残ってないよなあ」と諦めていた。東京の90年代HIPHOPシーンを振り返る情報はネットを検索すれば出てくるし、それ以外にも『Front(Blast)』誌をはじめ当時の媒体が取り上げて数多く存在している。それに映像にも『MTV JAMS』をはじめとして、様々な番組で盛り上げられて、残っていおりYouTube等で確認できる。また『私たちが熱狂した90年代ジャパニーズヒップホップ』(辰巳出版)と言った90年代の東京HIPHOPについて記した本までもが発売され、順おって振り返る事は可能だ。
そんな中、ふとお隣のジャンルとも言えるREGGAEを見てみると、関西のREGGAEシーンを黎明期から振り返っているYouTubeをやっているではないか!
「わあ、これすごい番組やなあ、これのHIPHOPバージョンて誰かやってくれないかなあ?誰かがやってくれたら、ゲストで俺を呼んでくれへんかなあ?」なんて思いながら静観すれども、待てど暮らせど、一向に誰もやりそうな気配がしない。
「よし!ならば俺がせめて自分の記憶が未だ残っているうちに、90年代の関西HIPHOPシーンを、自分の思い出やエピソードを絡めながら、書き残してやろうではないか!」と意を決した。幸い自分がこれまでに出演したフライヤーは殆ど残している。それに『Front(Blast)』誌も処分せずに手元にあるし、記憶力も年齢の割には、しっかり覚えている方だ(笑)。おまけに若い頃から下戸でお酒が飲めないから、アルコールで記憶をとばして覚えてないと言う概念が、そもそも私には無かったのも功を制した。
ただ書き出すと、これがなかなか難航を極めた。文章は下手くそなりになんとか書けたが、それを裏付ける資料や写真が手元に殆どなくて、他人が私の文章を読んだ時、説得力に欠けてしまうのではないか?そんな不安が頭を余儀った。
執筆更新は週に一度、基本的に土曜日と言うルーティーンを自分で決めて、2023年1月から休まず毎週更新し続けた。そして執筆と同時に、上記の懸念を払拭すべく、私が所有している『Front(Blast)』誌以外に、当時の関西ローカル誌『カジカジ』やHIPHOPファッション誌『WOOFIN'』を収集しながら、HIPHOP業界の先輩や後輩にも根掘り葉掘り話を聞いて、それを自分なりに文章で表してみた。そして自分が可能な限り、当時イベント会場やレコード店があった場所にも足を運んで、現在の風景を眺めながら瞼を閉じて、私の記憶にある当時の光景を照らし合わせる作業をしてみた。
毎週書くにつれて、気づけば至る所から「楽しみに読んでいるよ」や「執筆頑張ってや」などと言ったコメントや、さらに当時私よりも重要な立ち位置で、HIPHOPシーンやREGGAEシーンで活動されていたアーティストからコメントをもらい、私が知らなかったエピソードを話して頂いたりと、自分が思っていた以上の賑わいとなった。本当に有難い限りだ。
奇しくも執筆を始めた2023年はHIPHOP生誕50周年だったので、それに肖って、2023年のうちに50の話を書き上げて締め括ろうと内心は決めていたのだが、気づけば2024年になりHIPHOP生誕51年目になっていた。ではもうひとつ話を書いて全部で51の話で完結しようと決め直し、その完結が今回の執筆分だ。
序章、本編36話、番外編12話、独白、そして今回執筆した終章を全て足すとトータル51話。HIPHOP生誕51周年に肖って51話(笑)。50周年だった2023年の間に50話で完結させたらピシッと決めてカッコいいのに、完結しきれなかったのが、いかにも私らしい(苦笑)。こう言った所が、私が今までに関西HIPHOPシーンで人気実力の面で“一流アーティスト”として認知されなかった理由だと思う。
それに『Back to the late 90’s』と題名にしながら、途中で2000年代に突入し、結果2001年3月に至るまでズルズルと書いてしまったのも“一流アーティスト”であれば、あるまじき行為だ。だがしかし、私の中での90年代の終わりは第36話で執筆したように『OSAKA ROCK THE HOUSE』だったと解釈している。
これまで『Back to the late 90’s』を執筆するにあたり、お粗末ながら90年代後半の関西HIPHOPシーンを私と言うフィルターを通して語らせてもらったが、ここに書かれている事が100%ではないし、記憶違いなどもあるかと思うので、その点はまた改めて、ご指摘頂ければと思う。
序章で書かせてもらったように、「50年後、100年後に90年代後半の関西HIPHOPシーンを伝え残す」と言う目標は、それなりに出来たかと思う。あまり自分の性分ではないが、少しは自画自賛してもよいかな!?(笑)。
今回の執筆を継続するにあたり、プロの作家が、毎週小説や、コラムを連載するの事は本当に大変だと痛感した。毎週新たに更新を怠らず継続していく事の難しさを、この歳になって味わう事ができ、とても貴重な体験をさせてもらった。また違った形で何か自分にできそうなトピックがあれば連続でも単発でも挑戦し、是非とも発表したいと思う。
最後に『Back to the late 90’s』を今まで応援し読んで下さった皆様、本当にありがとうございました。この場をお借りしまして、深く御礼申し上げます。
『Back to the late 90’s』(完)
2024.1.13
DJ KUO