わたしという誰かの演劇_002
わたしのいるところで、演劇がはじまる。
わたし なるほど勉強になりました、って、勉強する気ないですよね、うるせえ黙れ、って意味ですよねたぶん、彼にそう言われたとき、わたし思ったんです、ああこれは「なる勉」かまされたな、って、わたしもなんか説教じみたこと話しちゃったのかな、そうだったらごめんなさいなんだけど、「なる勉」かまされたら話は別で、もう喧嘩ですよね、喧嘩、ってまあ実際はしないですけどね、なんとなく流してその場は別の話題なんですけど、帰り道になんか引っかかることあるなぁって考えてみたら「なる勉」ですよ、すぐに気づいて喧嘩しとけばよかったかな、いきなり愚痴っぽくなってごめんなさいね、でもこれがわたしの演劇なんですね、演劇って言ったらなんでも許してもらえるとはもちろん思ってないですけど、だったら別の話しますか、そのほうがいいですね、普段行かない遠くのスーパーで買い物するところを想像してみてください、普段行かない遠くのスーパー、いつも行ってる近くのスーパーと、だいたいの構成は同じですよね、野菜のコーナー、肉のコーナー、魚のコーナー、ドリンクにお菓子にほかにもいろいろ、でも違いますよね、だいたいこうぐるーっと外側を一周するじゃないですか、そうするとだいたい必要なものが買えるようになってる、そんなに毎日必要じゃないものは内側に並んでる棚に細々と、だいたい同じなんだけど違う、それが普段行かない遠くのスーパー、並んでる商品もよく見たらけっこう違うし、値段もいつも行ってるスーパーより高い、安かったら悔しいですけど、わたし、よく想像するんです、布団に入ったけどまだそんなに眠れそうもないなって夜に、行ったことない普段行かない遠くのスーパーを、目を閉じて、そのスーパーで買い物してる自分を、そこで働いてるパートのおばちゃんがいるんですね、釣り銭を渡す手がやたらあったかいんですよ、いや熱いくらいかもしれない、冷え性の逆ですよね、あっつあつの手でレシートの上に小銭をのっけて渡してくれる、わたしは小銭をレシートで包み込むようにして受け取って、いったんレジを離れる、買ったものを袋につめる台まで行って、そこでレシートの中の小銭を財布に入れるんです、お客さんが並んでるから、そこで思うんです、おばちゃんの手、熱かったな、って、で、布団の中の自分の手、手を意識してみると、おばちゃんの手の熱が残ってる、感じがする、行ったことない普段行かない遠くのスーパーの、会ったことないいないパートのおばちゃんの、体温、ぎゅっと手を握る、こんな話することないじゃないですか、でもここだったらできる、別にどこでもない場所だから、行ったことない普段行かない遠くのスーパーみたいに、
また明日。
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