映画「ソナチネ」ラストシーン
また気付いたことがあったので、そのことについて触れておきたい。
エンドロール前のラストシーン。
村川が車内で銃口をこめかみに当て亡くなる場面を箇条書きのように列挙していきたい。
ケンを見つめた村川、村川を見つめた幸
隠れ家でうつ伏せ状態で寝ている幸。(*1)
・・・
村川の車、ゆっくり浜辺方向に向かう。
海を背にして、丘方向を見つめる幸。軽トラがその横を通り過ぎ丘方向へ向かう。
幸。
軽トラ、村川の車の横を通り過ぎる。
村川、銃口をこめかみに当て、発砲する。
バーンという発砲音。直後、BGMも消え、無音状態。
後方から映した車。その先に見える海。静かに戻る波、風の音。
幸。時々瞬きをする。後ろには動きを伴う草。(*2)
車の右斜め前方から映す、血塗れのフロントガラス越しに動かない村川。
幸。瞬きなし。まっすぐ遠い方を見つめる。波、風の音。(*3)
再び後方から映した車。その先に見えるくすんだ海。重く厚い雲で覆われている空。波、風の音。
暗くなっていく画面。
(*1)
このとき、村川の温もりを思い出しているかのような幸。(その右手が村川の肌に添えられているようで画面全体が色っぽい。村川がいないのに、そこにいるように感じる)
(*2)(*3)
これは、ケンが殺されたときの村川と同じ。
ケンが撃たれた直後はケンのことを見ている。
ケンがもう生き返らない(死んだ)と分かると、その目は遠い方をまっすぐ見ている。
村川と幸の距離はおそらく数百メートルくらい。
もしかしたら、車が近づいてくる音も聞こえていたかもしれない。
幸は銃声を聞いていて、悟った。
撃ったのだ、と。そして、見えないけれど、村川を見ていた。
そして、その目が遠くを見つめ瞬きがなくなったとき、分かったのだ。
もう村川は死んだ、ということが。
エンドロール後のラストシーン
浜辺に咲いた黄色いひまわり。(これはよくよく見返していてわかったが、ケンが殺された日に幸はひまわりの種が入った袋を持っていたので、皆で植えたのだろう。)
ヒットマンが携えていて置いていったクーラーボックス付近にやどかり(?)が動く。
荒れ朽ちた手漕ぎ舟。海に出ることはないまま役目を終えた。村川とケン。長く行動を共にしたであろう二人が時を編んだ最後の場所でもある。
ケンに裏切って欲しかった場所でもある。
裏切ってでもいいから、ケンに生き抜いて欲しかった村川。
先に子分に漢(おとこ)を見せられてしまった村川。
知ってか知らずか、風と波がすべてをさらっていく。
ロシアンルーレット、もう一つの意味
過去記事で父から子への愛を表しているシーンではないか、と書いたが、もう一つあるかもしれない。
ロシアンルーレットについてウィキペディアを読んでいたら、ロシア革命で窮地に陥った人々が行った、といった由来もささやかれているようだ。
ここの場面で、ケン、良二、村川が来ていた服の色が、赤、青、白だったのでこれははじめはフランスの国旗の色かな、と思ったが、よくよく考えればロシアの色でもあり、アメリカやイギリスなど大国の国旗の色でもある。
もしかしたら、戦争自体への皮肉の意味もこのシーンには込められているのかもしれない。
また、村川とケンの関係だけ見ると、白、赤なので、日本の国旗の色でもあるし、門出を祝福する紅白カラーにもなる。
見る度に発見がある映画。