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絶対相手を分かった気になってはならない

はじめに

仕事や家族、子育ての悩みなど、人生の悩みの大半は人間関係と言っても過言ではありません。

今日は認知科学の観点から、人間関係を難しくする原因と対処法についてお伝えします。

「あらゆる人間関係をより良いものにするために、絶対相手をわかった気になってはならない」

これが一番お伝えしたいことです。これだけではよくわからないと思うので、以下で詳しく説明します。

人はいつでも先回りしたい


人間はシミュレーションする生き物です。何をするにしても先回りしてどんなことがあるかを自然と予測します。

このシミュレーション機能のお陰で、人類は色々なリスクをうまく回避することで生き延びることができたと言っても過言ではないので、この機能は非常に重要なわけですが、他者とのコミュニケーションをするときにおいては、このシミュレーション機能が悪さをすることがあるので注意が必要です。

人は他者とコミュニケーションをするとき、ほぼ間違いなく色々な想像をします。要は先回りして相手が何を考えているか、それにどう対応するかをあれこれ想定するわけです。

ここで大事なのな人間は決めつけたい生き物だということです。これは脳がわからない曖昧な状態を嫌うため、白黒はっきりつけたがるのです。


具体例


職場の上司がイライラしているように見えます。これ自体はただ自分が感じたことなので問題ないわけですが、ここから負のサイクルが加速していきます。

上司の様子を見て「何か自分が悪いことしたかな。。?」と自分に原因があるかもしれないと思います。

一度自分に原因があるかもしれないと思うと、脳はその考えを決めつけたくなるので、「自分に原因がある」ことを裏付けるための情報をどんどん集めます。

「そういえば、今月目標達成できていない」
「先月の1on1で目標達成できない理由を深堀りされた」
「昨日目標が順調に達成できてるメンバーとは笑顔で話をしていた」
「自分はおそらく他のメンバーよりも信頼されていないし、嫌われてるかもしれない。イライラもきっと自分に対するイライラだ。」

のように、どんどん妄想を膨らませていきます。

さらに「上司は自分を嫌っている」という妄想に対処すべく、色々なシミュレーションを繰り出します。

「先月の1on1では僕の言い分をあまり聞いてくれなかった」
「おそらく上司とはわかり合えないし、また来週の1on1でもしかしたら叱責されるかもしれない」
「上司がわかろうとしてくれないのだから、目標達成できていないんだ。」
「なんかムカついてきた。なるべく上司と会話するのは避けよう。次回の1on1も適当な理由をつけて都合が悪くなったことにしよう」

のように

「上司がイライラしてるように見えた」ということから最終的には「上司を避けて次回の1on1を取りやめる」という判断に至るまで、勝手に妄想を膨らませて突き進んでいってしまいました。

これはあくまで一例ですが、オンオフ問わずこういった先回りして悪い妄想を膨らまし、人間関係の悩みを勝手に難しくしていくということを、人は無自覚にやってしまうのです。

先回り思考への向き合い方


シミュレーションするのは人間の本能的な部分もあるので、完全にやめることは難しいと思います。

何よりも大事なのはシミュレーションしたとしても、「本当のことは絶対わかりようがないし、自分はそう思ったが間違っている可能性が高い」ということを頭に刻んでおくことが重要です。

このような話をすると、こんなことは難しすぎてできない、と感じる方もいるかもしれません。仰るとおり非常にこれは難しいことなので、おそらく完璧にできる人もそうそういません。
いきなり完璧にできることを目指すのでなく、コツコツトレーニングを積み重ねていくイメージです。

最初は意識をしてやる必要がありますが、他者について先回りの妄想が始まったときに、「こう思ったけど、間違ってるかもしれない」と最後に頭の中で一言付け加えるだけで大丈夫です。

例えば、子供がダダをこねているときに「私を困らせようとわざとやってるに違いない」と思ってしまったとしたら、「そう思ったけど間違ってるかもしれない」と頭の中で一言付け加えてみる。

またパートナーが最近そっけないと感じたときに、「こんなに自分は疲れて仕事や家事を頑張ってるのに自分のことを見下してるのではないか。」という妄想が始まったら、「そう思ったけど間違ってるかもしれない」と頭の中で一言付け加えてみる。

このことだけを意識できれば、思い込みに囚われ、無駄に悩み続けることは大分軽減されるはずです。

これはさらに応用編ですが、先程の上司の例で例えると、「そう思ったけど、間違っているかもしれない」の後に。

「もしかしたら、上司は体調が悪くてイライラしてるのかもしれない」
「プライベートで何か悩みがあるのかもしれない」
「マネジャーの重圧があるのかもしれない。何か自分が少しでも役に立てることはないだろうか」

のように自分がした妄想とは、全然違う可能性を想定できると素晴らしいですね。

このように自分の考えに固執せず、色々な可能性を想定できているときというのは、心理的柔軟性が非常に高い状態と言えます。

人生生きてると本当に予期せぬことが沢山起こります。

いちいち先回りして予期せぬことに対処しようというやり方は、そもそも無理がありますし非常に疲れます。

シミュレーションするのではなく、思い込みや決めつけの思考を手放し、いつでも柔軟に対応することができれば、多くの悩みは軽減されるのではないでしょうか。

是非参考にしていただければ幸いです。

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