漫文駅伝『三浦マイルドの田舎暮らし』 第18回 三浦マイルド
第18回「これからの事」
どうも、三浦マイルドです。
よく「広島で芸人として食えてるんか?」と聞かれます。
色んな方達の協力のおかげで、母親の面倒を見る位は稼げています。
かなり生活は楽になりました。
東京にいた頃は、スーパーで値引き品を買い漁り、1円でも安く買う事を心がけ、コンビニに行く事は皆無でした。
外食など、めったにしませんでした。
仕事から疲れて帰ってきても、ご飯を炊いて、おかずも作っていました。
今は、値引き品を買う事もないし、コンビニで卵も買うし、外食もするし、何ならカフェでティーブレイクします。
東京では、毎月12万円〜15万円前後でやりくりしていました。
東京都から送られてきた、低所得者世帯に配られる米を、都庁に向かって一礼し、正座して食べておりました。
そんな生活でも、東京で野垂れ死にをせず、かろうじて生きれていたのは、居島さんや、快楽亭ブラック師匠、ファイヤーヨーコさんが寄席やライブに呼んでくれてたおかげです。
地元に帰ると決めた時に
「広島で極貧生活はしたくない!しっかり稼ぐ!」
と心に決めました。
そこで先ず、広島よしもとに
「二度と関わらない」と絶縁宣言しました。
色んな方から
「そんな事して、何になんねん!」
「何のプラスがあんねん!」
「ヤクザ映画見すぎておかしなっとんのか!」
と総ツッコミをくらいました。
ですが、私には私なりの考えがありました。
「自分の生活や仕事の量を、会社に委ねるのは怖い」と心底、思ったからです。
東京に進出して、しばらくは、ほぼ真っ白のスケジュールでした。
手元に150万ほどあった貯金は、あっと言う間に底をつきました。
どんどん減っていく残高を見て、気が狂いそうになったのを鮮明に覚えています。
その後、居島さんに出会い
「テメエの食いぶちは、テメエで作る」
というイズムを学びました。
生殺与奪の権を会社に握らせては駄目だというのも東京で身をもって知った事です。
会社に金玉握られたら、言いたいことも言えず、納得できない事も納得せざるを得なくなりますからね。
生活すらできない様な給料や、月に10回もない劇場出番の本数で首輪をつけられる位なら、
野良犬の方が自由で良いです。
「自分のエサは自分で見つける」
この方が性に合ってますしね。
東京よしもとから、広島よしもとに移籍しないかとも、提案されましたが、丁重にお断りしました。
東京に行ったばかりの頃も「東南アジア住みます芸人にならないか」とか「北関東で農業やらないか」とか「もう大阪に帰りませんか」とか幾度となく打診されました。
まるで処理地を決めあぐねている、放射性廃棄物の様な扱いです。
「お前なんかいらないよ」という扱いをされてきたので、これからは1円でも多く、東京よしもとにお金を入れたいと思っています。
東京事務所にお金を納めたいし、貢献したいんです。
だってこのままだと、悔しいじゃないですか。
だから東京に籍を置いてもらっています。
ですが、社員さんには、
「もう一切、仕事を入れてくれなくて良い。何の協力もしていらんから、僕がやる事の邪魔だけはしないでください」と伝えました。
我ながら複雑な心理です。
社員さんも
「こんな狂人のマネージャーなんかしたくねえよ!」と思ったかもしれません。
この話をしたら、芸人以外の方には
「吉本いる意味ある?
もう辞めてフリーになったら?
多分、収入、倍になるよ」
と言われます。
芸人には
「絶対辞めたらアカンで!吉本辞めたらしんどいで!」と言われます。
正直、気持ちの中は複雑です。
許せん事もあるし、この会社、理不尽なトップダウンがちょいちょいあったりで、
どうしようもないなと思う事もある。
ですが、子供の頃から憧れてた場所で、憧れてた人もいて、お世話になった先輩もいるし、仲間や後輩もいます。
少なからず好きな社員さんだっています。
何より、意地があります。
「お前もうおいとけんわ」と言われたら、
「はい、分かりました」てなもんですが会社を見返してやりたいというのが、自分の中でかなり大きなモチベーションなんで。
それを、吉本の中にいながら出来たらなと思います。
そして、これからどうするかです。
来年は今年以上に精力的に動くつもりです。
今は広島の小規模なライブバーや、カフェで単独ライブを企画し、集客をお店に協力してもらいながら開催しております。
今月末は、福岡県博多で催します。
念願の東京、大阪、広島以外での単独ライブ、初開催です。
来年1月は愛知県名古屋市今池で、
3月には東北6県を回るツアーを予定してます。
場所もこだわらず、どこででもやります。
12月には、広島のガールズバーで、
来年は、パン屋さんや、古着屋さん、格闘技のジム内や、お寺でやらないかとの話もあります。
「面白いネタを持っていたら、身一つで稼げる」これを実証したいんです。
あと、これからは地域貢献にも取り組みたいです。
自分が故郷、江田島市に何が出来るのか、知恵を絞ります。
起業する事も密かに考えています。
会社の利益と社会貢献の両立を目指す、ゼブラ企業の様な会社を起こせたらなと思います。
今は色々と、やらなきゃいけない事、
やりたい事が山積みです。
「マイルド軍団ライブをまたやってほしい」との声に応えられず申し訳ないです。
正直、広島に拠点を移すと決めた時に、もう軍団は潰しても良いと思ったし、誰かがライブを引き継いで、やってくれるなら、自分はノータッチでも良いと思ってました。
もう、ほとんどのメンバーが一国一城の主と言って良いほどの存在になってますし、自分がしてあげられる事は皆無かなと。
近年は逆に、後輩達の人気にあやかって、自分がルミネtheよしもとや祇園花月の舞台に出させてもらっていた様な形でした。
それに対し、恥ずかしいなという気持ちが自分の中に少なからずありました。
芸人が他人のふんどしで相撲を取るのは、この上なくみっともないですから。
でも軍団内で、まだまだ蠢いてるやつはいるし、ライブをやってほしいという声が、内からも外からもあります。
今後、軍団をどうするかは後輩達としっかり話したいと思います。
「R-1に出ないんですか?」
とも聞かれたりもします。
出ません。
私は、優勝した後の物語を見せられなかった事に、凄く罪の意識があるんです。
誰に対する罪の意識か?
R-1で戦った人や、R-1に歯を食いしばって挑んでるピン芸人達に対してです。
今ようやく、自分が描きたい物語の下書きが出来そうな状況なんです。
優勝する力があれば、形はどうあれ、
しっかり稼げる、良い暮らしが出来るというのを、最低限、同業者には見せたいです。
それ位の事をしないと、夢がないと言われても、何も言い返せないですからね。
現在、やる気は相当みなぎっております。
来年は新ネタ単独もやりますんで。
ライブに足を運んでくださいませ。
先ずはこちらに。
10月26日(土)
『三浦マイルド諸国漫遊〜福岡博多編〜』
[会場]博多らくごカフェ笑庵
福岡県福岡市博多区中呉服町3−10 地下1階
開場18時半 開演19時
料金2500円+ドリンク1オーダー
どうぞよろしくお願いします。
〈続く〉
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