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漫文駅伝『三浦マイルドの田舎暮らし』 第7回 三浦マイルド

第7回
「介護との両立」

三浦マイルドです。

早いもので、東京の家を引き払い、広島県江田島市の実家に戻り半年になります。

おかげさまで、何とか広島で精力的に芸人活動が出来ております。

母親の体調が急激に悪くなったのが、昨年の夏頃からで、当初は遠距離介護をするつもりでした。

東京での活動をする傍ら、月に一度、帰省して母を看ようと。

しかし、それは難しい事だと、すぐに思い知らされました。

先ず、お金がもちませんでした。

格安航空会社の、成田空港発広島空港行きの便で、早期で安いのを見つけられたとしても、片道大体6000円はします。
日によっては、1万円から1万2000円します。

帰る期間は毎月、1週間から10日で、この間は仕事をする事が出来ないので、収入も減ります。

私が吉本と良好な関係を築けてたら、事情を汲んで、広島の劇場出番を入れてもらえたかもしれません。

ですが「いまだに籍がある事が奇跡」と言われるくらい、会社に後ろ足で砂をかけてきましたので。

頼る事なんざできやしません。

あと、私が東京に戻る時、母が切なそうにするので、毎度、後ろ髪を引かれる思いになりました。

帰京する前日の晩に
「お母さん、明日、東京に戻るけんね。」
と伝えてるのに、次の日の朝、出発する直前に
「今晩は何を作ってくれるの?」
とか言うのです。

「お母さん、わし、もう行かんといけんのんよ。
また、来月、戻ってくるけんね」

と、手を握ると、その手を離さないんです。

嗚呼、これはもう実家に帰らなきゃダメだと思いました。

三浦マイルドの芸人人生の新章の幕開けだと。

大阪のNSCに入り、紆余曲折してR-1優勝するまでが第1章、

優勝後に東京に進出するも、吉本からほぼ相手にされず、苦肉祭や安藤道場で漫談をひたすら磨いたのが第2章、

広島で親を介護しながら芸人するのが第3章、

そんな風に考えています。

正直、広島で活動するにあたり、不安は凄くありました。

そもそも、芸人としての活動と介護を両立できるのかと。

今のところは、親戚や、友達になったお坊さん、ケアマネージャーさんやヘルパーさんにサポートしていただいて、お仕事できる状況にあります。

SNSを通じて、介護サービスや介護用品について教えてもらえる事もあり、とても助かっております。

これからは、社会全体で子供を育てる時代だと言われておりますが、介護もそうあるべきだと感じております。

私も一人だと絶対に無理です。
経験者の方の助言や、グチや悩みを聞いてくれる人がいるからやれております。

舞台の方も、不定期ですが、立たせていただいてます。

こちらに拠点を移した事を機に、
広島各所を単独公演をして回る「広島漫遊」というライブもスタートさせました。
(他の都道府県を訪れる諸国漫遊も同時に始めております)

企画も宣伝も全て自分がやらなきゃいけません。

格安、もしくは無料で場所を貸してくれるお店を探し、約60分の公演をやります。

広島市内や呉、江田島では盛況だったのですが、つい先日、縁もゆかりもない、東広島市での公演は集客面で中々手こずりました。

ほぼ売り上げなしでしたが、とりあえず今は一人でも多くの広島県民の方に、見てもらいたいと思っています。

「そんなしんどい事せんでも、吉本の劇場に出れてりゃ、もっと楽に稼げるのに。」
とか、言われたりもするんですが、私はしんどくても、一向に構わないと思っています。

私は芸人が、身一つで稼げるビジネスモデルをきちんと確立したいんです。

他にも、カフェやバーや居酒屋の座敷を借りて、単独公演をしてる芸人さんはいます。

芸人て、大きく立派な劇場で単独が出来るのがステータスみたいなところが、あるのですが、飲食店を格安で借りてライブをするというやり方を、もっと普及させたいのです。

きちんと集客できれば、1日に5万円前後、売り上げる事が可能ですから。

それを月に1〜2回、催すだけでも、かなり生活の足しになります。

生々しい話で恐縮ですが、介護してる身としては、少ない稼働で大きく稼げるのが理想なんです。

2025年に、介護需要が大爆発すると言われており、介護離職も社会問題になりつつあります。

若手芸人でも後々、介護と向かい合わなきゃいけない人は大勢いるでしょう。

そういう人達の為に、何か開拓できたらなと思います。

面白いのに、家庭の事情で辞めた人をたくさん見てきましたから。

面白い人には辞めてほしくないんです。

面白くないのに、「俺は死ぬまでやるよ」て顔して芸人してる人もいますが、そんな人達にもやめてほしくないです。

何なら、そんな人がやめる方がショックです。

30年近く芸人してて、舞台で悲惨なくらい滑ってるのに、辞める気配が1ミリもない芸人に、我々はヒクソン・グレイシーと同じくらいの幻想を抱いてますから。

夢は壊さないでほしいですね。

話が逸れましたが、

介護しながらでも芸人は出来る!
地方でも充分稼げる!

これを確立したいですね。
その為に、知恵を絞ります。

グッズで、スピリチュアルなパワーを注入した水を1本、3万円くらいで売ろうかなとか、色々と考え中です。

皆さん、広島漫遊、諸国漫遊にお越しください。
次は貴方の住む街に行くかもしれません。

〈続く〉

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