かりんの青空 〜研ナオコになった〜
私には、3つ年下の弟がいます。小さな頃に2人で喧嘩をすると母から決まって「2人しかいない姉弟なんだから仲良くしなさい!」と叱られていた。
子どもの我々に、その言葉は、心に刺さらなかった。
一人で構わない、一人っ子ならおやつを一人占めできる・・・と。
卑しさ極まりない。
その弟が先日、結婚をしました。
なんと10歳近く年下の可愛い女性と共になったのです。
姉としては、安心した気持ちとこれから良い家庭を築けるか心配なところ半分です。
弟との想い出は、すべてお笑い番組だった気がします。
北海道は、関西や関東とは違ってお笑いライブや寄席なんてものはなく、しかも私の地元は度がつくほどの田舎でした。
時代的にもネットを使うようになったのは、高校生くらいからなのでそれまで情報はほとんどテレビが主でした。
「ダウンタウンのごっつええ感じ」
「笑う犬の生活」
「生活笑百科」(唯一、家族も大好き)
「ボキャブラ天国」
「めちゃイケ」
「はねるのトびら」
そのほか、ウッチャンナンチャンやとんねるずの番組も必ず二人で見ていました。
(個人的には、NHKの伝説番組「オンエアバトル」が最強です)
コントなどで、ツボにはまったものはその週に何度も二人で真似をする。
ダウンタウンのごっつは、エキセントリックボーイの歌真似が楽しかったなぁ。
笑う犬は、葉っぱ隊の真似ばかりしていました。(見たことのない世代の方は是非YouTubeで)
喧嘩なんかもよくしたけれど、お笑いのツボは、ほぼ同じ。
私が高校生となり、弟が中学生になると遊ぶことはなくなったけど特に仲が悪くなる、ということもなかったです。
弟と私の部屋は2階で、なぜか弟の勉強机だけは最初の頃まで1階のリビングにありました。
ある日から、机の上に何やら弟らしからぬ可愛いノートが置いてあった。
聞くと、クラスの子数人で交換ノートをしているらしい。
その交換グループが、2つあり学校でおきたことやなんでも書いて次の人に渡すというもの。
中学生が、何を書いているんだろう。
書いている横からチラっと見ると、字が汚すぎて何が何だかわからない。
弟が寝室の2階へ行くと、母に「この交換日記知ってる?」
「ああ、A・B君とC・D・Eちゃんとしてるみたいね」
「ちらっと見てみたら怒るかな」
母は、「えええ、どうだろうね」とニヤニヤしている。
気持ちは同じようだった。
私は、興味本位と理性の両方でせめぎ合った。
そう、せめぎ合ったのだということは、ここに書き残しておきたい。
しかし、興味本位に負けてしまった。
母とこっそり見てみた。
弟の内容は、「つぎの体育がだるい」「先生が嫌だ」など、交換する必要のない内容ばかり書いていた。
女の子は、さすがで字も綺麗だった。今日の出来事やお休みの日の出来事を書いていたりと交換する意味をなす内容が書かれていた。
「ねね、CちゃんてB君が好きなんじゃない」
「いやぁ、どうだろうね。うちのはなんか字が汚いね」
夜な夜な、勝手に読み上げる行為は、幾度か続いた。
今思うと、本当にひどい話だ。
その変わりと言ってはなんだが、弟の結婚式で姉は母の代わりに必死に親戚交流を頑張った。
普段、家にいることが大好きで、警戒心の強い私が。
アンミカさんばりのコミュ力で頑張った。
「どうもぉ、姉のかりんですぅ。本当にお綺麗なお嬢さんで」
相手のお兄さん家族の席にも行った。
「初めましてぇ、今後ともどうかよろしくお願い致します。親戚の方々も、皆さんお綺麗な方が多いんですねぇ。え?いやいや、我が家はこんなで申し訳ないですぅ」
手を振り、首を振り。
もう、周りにはアンミカさんに見え始めていたんじゃないだろうか。
「このお着物、綺麗な黄色に見えるやろ?これ、なんと黄色ちゃうねん、白やねん。白って、100種類近くあんねんで!」って、自分の着物について、道民なのに関西弁で語ってもおかしくないくらい。
ホテルに帰ると、鏡に映った自分を見て驚いてしまった。
化粧が落ちて頬もコケたその顔は、アンミカさんではなく、すっぴんの研ナオコだった。
罪なんか犯すものじゃない。
数年後、必ずそのしっぺ返しはくるのだから。
弟よ、本当にあのときはごめんね!
そして、幸せな結婚おめでとう!!