山小屋で一人ごはん
年に4回くらいは南阿蘇の山小屋に滞在する。
周囲に何もない山の中の一軒家...一人で滞在すると、全くの一人きり...山の風景の移ろいを眺めながら、孤独を楽しむ...なかなかの心地良さだ。
今回も家内と入れ替わり、久々の一人滞在となった。
さて、山小屋には小さなキッチンがある...
10年前この山小屋を建てる時、不便は覚悟の上で水回り部分を相当倹約したので、中古のシンクや貰い物のレンジなどを寄せ集めた、本当に最低限の小さな小さなキッチン...
滞在はせいぜい長くても2、3週間なので、冷蔵庫も必要最小限のもの。もちろん夏場以外は必要ない。
狭いスペースなので、調理器具も必要最小限のものしか揃えていないので、何を使ってどこで下ごしらえをしようか、食材をどこに用意しようか、段取りをどうしようか...やたら頭を使う。それがまた楽しいのだ。
買い出しは2キロ山を下りて、さらに数キロ離れた町まで行かなければならない。面倒臭いので、調達した食材は大事に大事に使う。 一人だと消費量も限られる...お米を炊いても余ってしまう...でも、せっかくのリフレッシュ環境...毎食美味しく食べたい。 特に南阿蘇の食材は肉も卵も野菜も驚くほど安く、驚くほど新鮮で美味い。 一人でも自炊のし甲斐があるのだ。
ということで、今回は山小屋での一人ごはんの紹介です。
朝の山の風景は本当に美しいので、基本山では用がなくても早起き...
で、まずこれは一人の時の定番朝ごはん... ハムエッグとチーズとキャベツのオープントーストサンド...バナナ+ヨーグルト+蜂蜜付き。 午前中は庭仕事もあるので、なかなかのパワーブレックファーストですな...
地元の胚芽丸パンのキャベツサンド+ハムエッグ+同じくバナナヨーグルト
昼ごはんは前日の残りや買い出した食材と相談する。
割とよくやるのが『おじや』。
残りご飯や美味しい残りだし汁が無駄なく使える。
添えてあるのは地元の豆腐の味噌漬けと葉唐辛子の佃煮(ちょっと甘い..)。
これもおじや... 南阿蘇は伏流水の豊富な場所。阿蘇豆腐の旨さは豆腐好きの私としては格別の楽しみだ。 もちろんここの揚げも豆腐同様立派で味も濃い。立派にメインのおかずとなる。
これもよくやる... 野菜中心のパスタ。 地元のベーコンは絶品だ。
一人昼ごはんの定番...たっぷり野菜の日清焼きそば。
この即席焼きそばにはもうすっかり慣れたので、いつでも美味しく手早く作れる。
さて、昼ごはんはこのくらいにして、いよいよ一人夕ごはんを紹介していこう。
一人の時の主食としてかなり便利なのがこれ、お餅。 九州の餅は丸餅が主流である。阿蘇のお餅は一つが大きめ。根菜を中心とした具材で作った味噌雑煮。 竹輪をさらにカリッと焼くと美味しさ倍増なのをご存知だろうか。
一人、地元のスーパーに行った時には、このどでかいおにぎりを買ってくる。これでたっぷりごはん一膳分を超える。残った豚肉とキャベツを炒め...あとはビールで...満足感は間違いない。
これは家内が持ち込んだコストコのフランクフルターの残り...さらに残った野菜を軽く炒めて巣篭もり卵。丸パンにチーズ... やはり夕食は見た目のゴージャス感も大事だ。
米を炊いた時は、おかずは絶対に阿蘇豆腐だ! あとは生野菜と納豆と漬物が少しあれば、もう充分。 ベジタリアン的気分もたまにはいい。
米を一人分炊くのは難しい... そんな時にはこれを使う。ご存知『峠の釜飯』の益子焼の器。 1回に1合の6分目くらいの米、だし汁と具材を入れ、蓋を置き、ガスの弱火で沸騰し始めたら10分炊いて、10分蒸らす... 美味しい美味しい炊きたて釜飯が食べられる。阿蘇の豆腐か揚げがあれば他には何もいらない。
面倒な時は迷わずパックごはん...生野菜と炒め物、アマノの味噌汁があったら完璧だ。
たまに、知り合いが訪ねて来ると、まあ大抵お土産を持ってきてくれる。 地元の高級赤牛のサーロインとかも貰う事だってある。 そんな時は、夜の染み入るような静けさの中、『ムフムフ』思いながら、東京から持ち込んだ赤ワインの栓を抜いて... 注意深く焼き上げ、都会的晩餐を一人楽しむ...(あ、この写真、ナイフ・フォークが逆だった!)
要するに、山の一人ごはんは、物質的にも精神的にもミニマリズムの体現を楽しむのだ。
そして、いよいよ明日は帰京という時に『ああ...これでちょうど食材を使い切ったな』と...その満足感に一人酔いしれる...
山小屋の一人ごはん... それは社会と自分の最低限の接点を感じ取る事のできる楽しみなのであります。
おいしいエッセイにはイラストレーターのTAIZO Condovic氏のイラストを使用させて頂いています。
Profile 作品紹介は...
https://i.fileweb.jp/taizodelasmith/