GIGN(フランス国家憲兵隊治安介入部隊)が敢行した奇跡の人質救出作戦をモチーフに映画化された作品"15 MINUTES OF WAR"
2019年公開のフランス映画「15 MINUTES OF WAR」は、1976年、アフリカ ジブチ共和国で発生した"ジブチ共和国バス乗っ取り事件"をモチーフとして製作された。
「ジブチ共和国バス乗っ取り事件」
1976年2月3日早朝 アフリカ・ジブチ共和国。
フランス空軍将兵の子息30名を乗せ学校に向かっていたスクールバスが、4名のソマリア沿軍解放戦線(FLCS)のテロリストに乗っ取られるという事件が発生した。
テロリストはソマリア国境までバスを移動させ、政治犯の即時解放を要求。それに応じない場合には人質の子供たちの喉を切り裂くと脅迫した。
この事態を受け、現地駐留のフランス外人部隊は緊急体制に入り、フランス本国からはプルート中尉率いるGIGN(Groupment D’Intervention De La Gendarmerie Nationale:フランス国家憲兵隊治安介入部隊)の精鋭9名が現地へと飛んだ。
現地到着後、即座にバスの周囲を偵察したプルートー中尉は、バスの停止している場所が平地のうえ遮蔽物が殆どない状態から、突入のために極秘裏に接近するのは困難と判断。点在する大岩とバスから200メートル離れた土手に9名の部下を待機させ、遠距離から敵を同時排除する作戦をとった。
狙撃手は射撃を受け持つ範囲を指定され、各テロリストは番号で割り振られた。
FR-F1狙撃銃を両手で自由に扱えるように喉式通信装置を装着した狙撃手たちは、スコープでターゲットを捕捉し狙撃可能な状況となった段階で与えられた番号を伝達するよう指示された。
すべてのターゲットの番号が伝達されるまで待機して揃った時点で一斉射撃を命じるのがプルート中尉の計画だった。
しかし、休息のためにソマリア国境の警備拠点に移動するテロリストとバス内残ったテロリストを同時に捕捉することは不可能であることが判明する。
ソマリアは明らかにテロリスト擁護の姿勢を見せていたため、非常事態に備え現地駐留の第2外人落下傘部隊も派遣された。
事態が緊迫するなか、GIGNの狙撃手達は灼熱の太陽のもと、鋼のような忍耐力でいつ下されるをも知れぬ狙撃命令を待ち続けた。
GIGNの狙撃手が配置について10時間後の15時47分、遂にその時が訪れた。
プルート中尉は即座に一斉射撃の命令を下した。
バスに搭乗していたテロリスト4名は即座に頭を撃ち抜かれ、バスの外にいた5人目もすぐに排除された。
テロリストグループを支援するソマリア国境警備隊はGIGNへ銃火を浴びせバスへの接近を阻止しようとしたが、GIGNの狙撃手は即座に応戦。第2外人落下傘部隊連隊も攻撃に加わりソマリア兵10名を無力化した。
6番目のテロリストが、ソマリア兵の援護を受け、再びバスに乗り込んだのを見たプルート中尉は、子供達を救出すべく部下2名とともに200メートルの距離を全力疾走しバス内に突入、即座に3名のテロリストを排除したが、その直前に一人の少女が殺害された。
もし、ソマリア兵がテロリストを支援しなければGIGNは一人の人命も失うこと無く救出作戦を実施できただろう。それほど完璧な作戦だった。
プルート中尉の迅速且つ的確な判断は29名の幼い人質の命を無事に救ったのである。