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エッセー 「三菱ギャランGTOが疾走する異色のロードムービー "3000キロの罠"」
1971年に製作・公開された田宮二郎主演作品『 3000キロの罠 』は、全編を三菱ギャランGTOが疾走する異色のサスペンス・ロードムービーである。
大映の専属俳優として活躍していた田宮二郎は、1968年、映画「不信のとき」のポスタークレジットの序列で会社と対立し、一時期映画界から追放されていた。
当時の映画産業はまさに花形であり、作品はすべて自社製作が原則だった。
さらに、5社協定という業界規定により、追放された他社の専属俳優をライバル会社が起用することを厳格に禁じていた。
そのため、一度追放された専属俳優は、事実上、日本の映画業界から抹殺されるも同然だった。
田宮二郎は、自らの製作会社である「田宮企画」を立ち上げることによりその苦境を乗り越え、映画業界にカンバックしたのである。
その第一弾として製作されたのが後に日本版「バニシング・ポイント」と称される『 3000キロの罠 』なのだ。
この作品、名車 "三菱ギャランGTO" が九州から北海道までの日本縦断3000キロを疾駆するサスペンス・ロードムービ。そのキャッチコピーは、
「鉛色の海と空の裏日本に意外な事件が待ちうけていた!美しい自然、クールな音楽、カッコいいカーで語るサスペンス・アクション!」
九州の青年実業家(田宮二郎)が、義理の父に稚内のデパート社長にプレゼントする新車のギャランGTOの陸送を頼まれ、その道中で様々な事件(罠)に巻き込まれるというサスペンス仕立ての内容だが、ストーリーよりも、当時の若者たちに絶大な人気を誇ったギャランGTOのカーアクションが堪能できるだけで眼福である。
もちろん、三菱自動車との完全タイアップで製作された作品であることは言わずもがな。
田宮二郎の意気込みと70年代の熱気を感じさせる快作である。
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