エッセー 「萬屋錦之介礼賛 異端の名作"長崎犯科帳 "を語る」
空に真っ赤な雲の色
玻璃に真っ赤な酒の色
何でこの身が悲しかろ
空に真っ赤な雲の色
江戸末期の長崎は、オランダ貿易に開かれた唯一つの港であり、巨大な利権と暴力の渦巻く暗黒の街であった。
この利権を操る者は一握りの豪商達であり、貧しい町民たちは彼らの搾取に泣きその暴力に怯えるしかなかった
ここに、白日の法の下で裁くことの適わぬ者は闇の法の下に斬ると思い定めた闇の裁き人達が登場する。
人、これを呼んで闇奉行という。
("長崎犯科帳" OPナレーションより)
萬屋錦之助演じる長崎奉行・平松忠四郎は、悪徳商人から賄賂は受け取るわ、遊郭で接待されるわ、酒は大好きだわと、今で言うところのキャリア官僚の典型とも言える人物。
しかし、その正体は、法で裁けぬ悪人を闇に裁いて仕置きする' 闇奉行 ' であった。
「昼行灯(ひるあんどん)」と、たかをくくる悪徳商人どもから、「山吹色の甘~いカステ~ラ」と称する賄賂を受け取り、その金を闇の裁きの資金源にあてている。つまり、悪人は自らの金で自らを滅ぼすのである。まさに「毒をもっとて毒を制す」。悪人は自らの金で自らを滅ぼす。
白頭巾をかぶり、白装束を身に纏った闇奉行が、悪人成敗する直前に「俺の顔を拝ませてやるよ」と言って頭巾をとり、悪人が驚愕して「な、長崎奉行~!」と叫んだ瞬間にたたっ斬る! 賄賂はもらうわ、命はもうらうわ、もうやりたい放題の闇奉行。
そしてシリーズ最終回では、それだけ好き放題しながらも、高級官僚、キャリア組の特権でめでたく幕閣の役職へと出世を果たし江戸に栄転というハッピーエンディング。今も昔も高級官僚、上級国民は同じ。ただ、闇奉行はその特権を悪人成敗という正義に利用している点が現代の腐敗官僚とは大きく異る点。
因みにこの作品のOP映像(アバン)を監修したの円谷作品でお馴染みの奇才実相寺昭男氏。異国情緒溢れる長崎の色彩美を採り入れた独自の映像美は実相寺氏ならではのもの。
そしてEDで流れる"日暮らし"の幻の神曲「坂道」も、ドラマにマッチした極めて印象深い楽曲として記憶に刻まれている。
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