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アトランダム私小説「椿ライン伝説1981(仮)」

 「えっ?! 一体何が起きてるんだ!」

  速水がバックミラー越しに見たのはまさに信じられない光景だった。

 3コーナーで勝負をつけるどころか、背後に迫るAE86トレノGT 2ドアハードトップの角形リトラクタブルヘッドライトが放つ眩い光芒が凄まじい勢いでA60セリカXX2800GTの背後に迫りつつあった。

 下り13コーナー、入り口の150R中速左コーナーを抜けるとテクニカなS字コーナー、その先には30Rの右ブラインドタイトコーナー、立ち上がった先に見えるのは一見間口が広そうな右100Rのコーナーだが、クリップにつこうとした瞬間、そこが100R→50R→25RとRが異なる魔の下り複合コーナーだとわかる難易度Dのトリッキーなコーナー。

 的確なスピードコントロールと慎重なライン取りを怠ると、運が良ければガードレールの抱擁、最悪の場合には崖下急降下となる。

 13コーナー直前、猛迫するAE86トレノGT 2ドアハードトップは遂にA60セリカXX2800GTの真後ろについた。

 両車はバンパー•ツー•バンパーの状態で150Rコーナーへと進入した。

 「譲るか〜!」

 速水はアクセルを踏み込み、高いスピードを保ったままギリギリまでブレーキングを遅らせ、クリップ直前でステアリングをインに切り込んだ。

 加速した瞬間、一瞬AE86トレノGT 2ドアハードトップのヘッドライトの光芒が一瞬消えた。

 勝ち誇ったような笑みを浮かべた速水の表情が凍りついた。

 バックミラーから一瞬光芒が消えた刹那、 AE86トレノGT 2ドアハードトップはA60セリカXX2800GTの左サイドにいた。速水がパワーに任せ加速し、クリップ直前に強力なブレーキを活かしフル制動した瞬間、ほん僅かだがイン側空いた。 AE86の車幅ギリギリのその隙間に、まるで放たれた矢の如くAE86が突っ込んできたのだ。

 お互いのサイドミラー間5センチにも満たないタイトなラインを、フルチューンされた4AG-EUエンジンの快音と共に抜けたAE86トレノGT 2ドアハードトップは、続くS字コーナーを直線的なラインで走り抜けると、右30Rのコーナー手前でブレーキングと一瞬のフェイントモーションで一気に姿勢を変えた。

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