日本のスポーツカーの夜明け
自動車大国ニッポン。
日本の歴史に輝くスポーツカーといえば、初代フェアレディZかトヨタ2000GTということになろう。
トヨタ2000GT
フェアレディZ(初代)
日本の自動車を世界に広めるために産まれた
ともに、1960年代の終わりに登場しているが、これは当時の日本の自動車を世界に展開するにあたり、イメージリーダーとして重要なものであった。
トヨタ2000GTは、1967年デビューで、その2年後の1969年にダットサン・フェアレディZはデビューしている。
ともに、2000CCの直列6気筒エンジンを搭載したFR車ということで、ボディーサイズも同等である。
だが、中身はというと、月とスッポンぐらい違うものであった。
Zはライバルのポルシェやジャガーより安く、速くてかっこいいを具現化し、アメリカ市場でライバルを蹴散らし、ダットサンブランドを一流にした。
Zの成功は、MGを代表格とする英国のスポーツカーを大西洋に追いやったといわれるほどである。
トヨタはというと、ライバルよりもよりよい性能を求めるがあまり、スポーツカーというよりも、もはや2000GTはスーパーカーのレベルであり、日本の工業技術の粋を集めたものであった。
だから、2000GTは、ボンドカーにも採用されたのだろう。
ただ残念なことに、ジェームスボンド役のショーンコネリーが、余りの狭さに乗り込むことがむつかしく、急遽オープンモデルにしたという逸話もあるぐらい本格的(レースカー同等)過ぎたらしい。
しかしながら、アメリカのレースでは、シボレーの6LはあろうかというV8エンジンにはなかなか勝てない、というジレンマもあったようだ。
一方Zのほうは、アメリカ人の大きな体形を徹底的に考慮した。それは、米国日産の社長だった片山豊(のちにZの父と言われる)のおかげである。
それに関する逸話として、当時米国で細々と販売していたブルーバード(ダットサン410)の運転席に座った米国男性が、フロントシートの狭さから「リアの窓から顔を出す」写真を、片山氏が本社のキーマンたちに示したのだという。
<ダットサン410>
ちなみに、この410の次の510は、ソニックデザインもかっこよかったが、室内の広さをアメリカ人向けにしたことで、世界的にも売れまくった日本車である。(今のカムリ・アコード・レガシィのようなイメージ)
<ダットサン510>
資金力で世界のダットサンへ
令和の時代からは信じられないが、もともと芙蓉グループの主要企業である日産自動車と三河のローカル企業であったトヨタ自動車との間には、資金調達能力に大きな差があった。
三河の田舎企業であるトヨタは、重工が身内にある三菱銀行には、まったく相手にされない。
そして、今のみずほ銀行の母体である、興銀や富士銀行は、当然身内の日産を優遇し、ライバルには貸し渋りである。
カネはないが、知恵を出し合ったトヨタと、潤沢に資金調達して海外に投資を行うことができた日産の力の差が、まさにフェアレディZとトヨタ2000GTに表現されているのである。
アメリカで売れる車を作る!のZと、自動車の玄人に「日本の自動車技術おそるべし」と一矢を射ることに専念したトヨタ2000GTの差である。
トヨタは自力で!
日本の購買力が上がって、やがて1960年代後半に日本にもマイカー時代が到来して、1970年代なかばにトヨタカローラが国内販売No.1を常連とする頃まで、トヨタはアメリカ市場でダットサンの活躍を恨めしそうに見ていた。
カローラのヒットにより、一気に『トヨタ銀行』と揶揄されるほどのファイナンスをもつに至った、1970年代に一気呵成にアメリカ市場を攻めこんだ。
この時、トヨタが作ったスポーツカーはセリカであった。
そして、その上級版であるスープラ(邦名セリカXX)で、Zを追い詰めるのである。
日産は、当時の石原社長の馬鹿な決断で、北米でダットサンのもつブランドイメージを無視し、NISSANブランドに統一してしまった。
NISSAN-Zになる頃には、イメージ低下で北米販売台数が伸び悩み、破竹の勢いで急成長を遂げるライバルのトヨタ・ホンダが横に並ぶほどになってしまった。
結果的に、ブランド名称の世界統一が、『敵に塩をおくる』ことになったのだから、悲しいものである。
近年ゴーン体制末期になって、ダットサンブランドを復活させたりと、まさに「迷走」し続けている。
新しいフェアレディZの行方は?
先日、フェアレディZが、数年内に新型に変わることが、発表された。
初代のS30を意識したデザインに変わるんだという。
温故知新と言えば聞こえがいいが、うまくいかないから戻してみようか?という発想ではそう上手くいくこともあるまい、と思うのである。
最新のスープラに勝てるか? Zはどうなるか?
次期Zが、日産の最後のスポーツカーにならないといいのだが。
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