【#一日一題 木曜更新】ゆうて1マン
山陽新聞の「一日一題」が大好きな岡山在住の人間が、勝手に自分の「一日一題」を新聞と同様800字程度で書き、週に1度木曜日に更新します。
2年間サボっていた脱毛サロンを再開した。
「契約チケットが無効になります」というメールが届き、無効はいやですと、久々にサロンのアプリを立ち上げた。
あら、拍子抜けするほど予約が簡単。最新機器導入とのことで、2年前より1回の施術時間が短くなっているらしい。以前より予約枠が豊富で、行きたい日時に難なく予約完了。
思い出した。
そもそも、困るほど多毛でもない、水着になる機会もない、殿方との突然のランデブーもありえない、体にうすらぼんやりとムダ毛のある状態が何かに支障をきたす可能性などないないづくしの生活で、だから通うのが億劫になったのだ。
まあいいや。たまには美容のために時間を割くのも悪くない。確か施術後は肌がすべすべになる。そんなことを考えながらサロンに向かい、明るく清潔な受付へチェックインした。
個室に案内され着替えを促される。また来てくださってうれしいです、お肌にトラブルはありませんでしたかと、さりげない雑談をしてくれる。2年ぶりですよね。ガウンの形が少し変わったんですよ。紙のショーツが廃止になったので、ガウンの中には何も身に付けないでくださいね。ロッカーの使い方はわかりますか?はいではのちほど、お着替えが終わった頃にまたお声がけしますね。
はーい。ありがとうございます。
…ん?
まって?
彼女、何か気になることを言っていたような。
紙ショーツの廃止???
ロッカーを開ける。ほんとうだ紙パンツがない。わたしは白々しいほど明るい個室で素っ裸になって施術ガウンを身に付けた。下半身が心もとない。
ベッドに横たわり、機械の強い光が目に触らないようアイマスクを着用。失礼しますと前身ごろを開かれるとダイレクトに出てくる下半身。いやほんとすみませんこんなものをさらして!!!!
……と思ったけど、スタッフの彼女にとっては数マンのうちの1マン。そう考えるようにしたら、とスンっと羞恥心がおさまった。あれ、この感じは何かに似ている。そうだ産婦人科の診察だ。初めて自動昇降付の診察台に乗ったときも、わたしのマンは数マンのうちの1マンと心の中で何度も何度も唱えたっけ。
アイマスクで視覚が遮られた効果も手伝い、どうにか羞恥心を抑えたまま施術終了。しかし施術中の自分の姿を具体的に想像するとやはり滑稽。美しくなりたいがために、全く美しくない過程を通過しなければならないなんて、美容ってなんて大変なんだろう。